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俺はJKの子持ちだったのか!  作者: シマアザラシ
第1章『実りあるもの』
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竜胆美奈の願い(1)

 実花の家出騒動から1週間後の8月後半。

 台風も過ぎ去り、また無駄に太陽がはしゃぎ始めて、また暑い日がやってきた。


 さらに仕事場である学食のオープンが近いこともあり、俺はプチ社畜という感じの仕事量に追われていた。


 まあ、元ガチ社畜社員の俺としては心地よいそよ風のような仕事量だけどな。


「よし、これでオープンは何とかなりそうだな……」


 夜の10時。

 俺は事務所とずっとパソコンとにらめっこをしていたので、さすがに疲れたが……やっとオープンまでの準備が殆ど終わった。


 オープンは週明けの月曜だ。今日が金曜だからギリギリになっちまったな。まあ、これで休日出勤はしなくて済んだ。奇跡か。


 前の会社だったら、絶対にまだ終わってなかった。そう考えると効率の悪い仕事の仕方をしていた……と、思ったが、冷静に考えたら、仕事量が全然違うか……。


 俺明らかに人間5人分の仕事はしてたし……俺よく生きてたな……それで給料は1人分以下だったんだから、社畜と言うのは現代の奴隷と一緒なんだろう……。


(はぁ早く帰るか……未来と実花も家で待ってるだろうし。でも少しゆっくりと休憩したいな……)


「はい。お疲れ様です。アイスコーヒーです」


 気伸びをしていると、女性の声と共にテーブルにアイスコーヒーが置かれる。

 おっ……ありがい。エアコンを全開でかけているとはいえ……というかそのせいか、乾燥しているので、無駄にのどが渇いていたから……おい、待て。前も同じことなかったか?


「……音無さん、なんでここにいるんだ?」


 今は夜の10時だ……とてもじゃないがアルバイトの音無さんが居ていい時間ではない。

 音無さんの勤務10時から19時だし……。


「生名さんからオープンするまでは残業は社員の指示で好きにしていいと聞きました。ちなみに食器の漂白と、オープン来週末のイベントのポスターの製作はしました」


「おい、残業って俺は許可して……はぁ、三沢のやつも残ってるのか……」


「はい。麻衣さんは厨房の食品の管理表を作ってました。麻衣さんってあんな見た目なのに仕事はすごく細かいんですよね」


 音無さんはあきれたように笑う。その笑顔には嫌味っぽさはなく、三沢への信頼が垣間見えた気がした。


 仲いいことはいいことなんだけどな……でもふたりとも働き過ぎだ。


「お前早く帰れよ。絆ちゃんも待ってるだろ?」


「今日は両親に面倒を見てもらっているので大丈夫です」


 音無さんは絆ちゃんが家出した件から、少し……柔らかくなった気がする。

 全部自分でしようとする考えだったようだったが……、今では育児も親に相談し、殆ど絶縁状態だったらしいが……今では絆ちゃん面倒を見てもらえるほどに関係は修復しているらしい。


 まったく、この短期間に大したやつだよ……これがまだ18のガキだっていうんだから、頼もしいというか……末恐ろしいというか……。


「仕事は助かるけどな……それ俺が明日残ってやろうとしてた仕事だし」


「それはよかったです」


 音無さんは嬉しそうに胸の前で手をあわせる。最初に比べて随分明るくなったよな……特に俺に対しての態度はかなり優しくなっている……最初はゴミを見る目で見られていたのにな……。

 あれもあれで美人にさげすまされていたと思えば悪くはなかったんだけどな……ふっ、歳をとると変な耐性がついてかっこいい……ごめんなさい、ただの変態です。


「……? 私の顔を見てどうしたんですか? えっと……ちょっと照れるんですけど」


「あ、ああ……」


 音無さんは頬を染めて、視線を俺からそらす。何とも可愛い……だが、この状況で「わっ、音無さんは俺のこと好きなんだ! やふーー!」っと、思いこむほど俺は若くない。現実を知っている。


 むしろ「誰かに金を貰ってるから俺と仲良くしてくれんじゃないか……」と、思ってしまう。社会の荒波にもまれてるな……俺は。


「えっと、て、店長……?」


「いや、おっぱいが大きければ、完璧な美少女だと思って――」


「ぶっ飛ばしますよ?」


 うむ。いい笑顔だ。さっきとは違って殺意しかないけど。


「はぁ、さすが店長です……せっかくいい雰囲気だったのに……」


 ん? 最後の方が声が小さくて聞こえなかったけど……なんて言ったんだ。


「むぅ……」


 なんかいじけた子供にらまれてるみたいだ……。


 その時――。


トントン。


 控えめなノックが事務所に鳴り響いた。

 ん? 誰だ? 三沢ならわざわざノックなんてしないだろうしな…。


トントン。


「あっ、店長私出ますよ。今開けま~す」


 音無さんは席を立とうした俺にそう言うと、扉に向かって足を進める。

 そして音無さんが扉を開けると――。


「ほっほっほっ、すまんのぅ。こんな夜分に」


 事務所にやって来たのは黒のスーツをびしっと着たスリムな初老の男性だった。白髪をワックスで固め、清潔感がある。

 見覚えはないけど……誰だろう……身なりはかなりよさそうだけど……あのスーツ、素人目で見ても高いのがわかるぞ。


 すげぇー材質よさそうだし。それに……している時計がギャグだ。時計の周りにダイヤが散りばめられている。


 ……とりあえず無下には扱わない方がよさそうだな……偉い人にはとりあえず敬意を払う。社畜の心得パート3だ。


「えっと……どちら様ですか?」


「ああ、申し遅れたな。お主の『義父ちち』じゃ」


「「……は、はいっ?」」


 悪戯っぽい笑顔で答える爺さん……を前にして俺と音無さんは間抜けな声を出した。


「お主らこれから暇か? 一杯付き合ってくれんか? なんなら友人もたくさん呼んでも良いぞ。大勢で飲んだ方が楽しいからのぅ」


 爺さんの表情はどこまでも友好的で優しい……いや優しそうな人でよかったけど……心の準備ぐらいさせてくれよ……心臓に悪い。

社畜あるあるばーじょんつー

「貯金が貯まっていくとなんか絶望する」

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