母への想い(5)
『パパって幼女大好きだよね!?!?!?!?!?』
時は少し遡り、それは実花が義孝へ『1回目』の電話した後――。
「うむ……すべてを理解したのだよ」
実花は義孝からの罵声を受けて、電話を切られると、ドヤ顔でそう呟きながら、つい先ほど眠ってしまった絆の頭をなでた。
今の電話で義孝が置かれている状態が少しつかめた。
「すぅーすぅー」
絆は母親と喧嘩したり、迷子になったり、精神的に疲れたのか、公園のベンチに座る実花の膝の上ですやすやと寝息を立てていた。実花の先程の雄叫びでも起きなかったのだから相当深い眠りだ。
そんな絆を微笑ましく思いながら、実花は先ほどの電話でわかったことを頭の中でまとめた。
(パパは高確率で由衣ちゃんと一緒にいるねぇ……だってパパがあそこまで余裕がないのは珍し……くもないけど、今の状況であそこまで焦ってるのは由衣ちゃんに事情を聞いたからだよね……そうなると警察にも連絡してるよね……)
普通ならあの短時間のやり取りでそこまでのことがわかるはずがないが、実花は父親と妹の感情をよむことには自信があった。
「絆ちゃん……さっきはママのことばっかり喋ってたな……」
そんな分析をしつつ、実花は再び絆を見る……。
実花は自分にできることが少ないのは理解していた。
絆と話した感じ、絆の父親への想いは強い……それは絆と似たような状況で育った実花には何となくわかった。
そのせいか、仮に今から由衣の元に絆を連れて行ってもふたりの仲が好転するとは思えない。いや、むしろ互いに意地を張って悪化する可能性すらあると考えていた。
……それはあまりにも悲しい……そんな気がした。
(ふたりともパパのハーレム候補だしね~)
なら実花がすることは決まっている……他人の自分がそこまでするのは余計のお世話どころが、迷惑行為であることは理解している。だが――。
◇◇◇
『あんたなんて大っ嫌い!! 私はパパと暮らすの!!! それでセックスもいっぱいして楽しく暮らすの!!』
◇◇◇
昔の記憶が行動しないことを拒否していた。
(ちょっと、怒られるようなことをするけど……母親と娘が仲たがいするよりは数倍いいよね。だから私は『悪者』になろう。ダークヒーローみたいでかっこいいって感じ)
◇◇◇
ぽつぽつ。雨が降り出してきた時、俺は実花の言葉を不可解な気持ちで聞いていた。
それはそうだ。家出をしたと思っていた娘がまさか他の家出した子供と一緒にいるとは思わないだろう。
『あちゃー、雨降ってきちゃったなぁ~』
確かに雨は気になるんだが……ぶっちゃけ俺はそんなことよりも気になることがあった。
「お前……今なんて言った?」
『えっ? パパとセックスしたいって言った』
「おい、今真面目な話をしてる。次ボケたら、俺は1週間風俗店で暮らしてやる」
もうどっちも子供だ。
でも、半分は本心だ。実花の言うことが本当ならば、最悪のケース『絆ちゃんの身が危険にさらされる』が現実にはならなかったということだ。
『うぅ、我が家を破産させるわけにはいかないので、真面目な話をしますか……絆ちゃんは今私の膝枕で寝てるよ』
「それは本当か……?」
『うぅ、信用ないなぁ~。でも状況が重めだから仕方ないかぁ。ほら証拠に未来ちゃんに写メ送ったから』
俺は、俺と実花が何を話してるか興味津々と言う感じで見ていた未来に視線を送った。
すると、不思議そうに首をかしげる未来のスマホが鳴り、画面を見た未来の隣にいた音無さんの目が見開いた。
実花が送ってきたと思われる写真にはピースサインをする実花と、実花の膝の上で気持ちよさそうに寝ている絆ちゃんだった。
写真の角度的に実花が自分で撮ったものだろう。
「絆!!!! ……よ、よかった……」
よほど安心したためか、その場で膝からくずれる音無さん。その目の端には涙がたまっているように見えた。
そんな音無さんに未来が近づき甲斐甲斐しく身体を支える。
(本当に良かった……実花と絆ちゃんがどういう経緯で一緒にいるのか? とかは気になるけど、とりあえずは一安心だな……)
「由衣さん……大丈夫ですか?」
「え、ええ。未来さんありがとう……。ちょっと安心してしまって……そうだ。警察の方に連絡しないと」
音無さんは慌てた様子でスマホを操作し始めた。その顔にさっきまでの悲壮感はなく、あれだけ真っ青だった顔色は少し戻っていた。
よし、それなら俺は雨が酷くならないうちに実花と絆ちゃんを連れてくるか。
「実花、よくやった! さすがは俺の娘だ! 帰ったらいっぱい、なでなでしてやる」
『うっ、そう言われると……次の言葉が言いにくいって感じ。なんならパパのなでなでが魅力的過ぎて心変わりしそう……』
「えっ……? 何のことだ?」
『おほん。――絆ちゃんは実花ちゃんが預かったああああ!!! 返すとは一言も言ってないのだあああああああ! ……あっ、でも警察ごとにはしないでね? 前科持ちにはなりたくない。てへ』
「……………………は?」
本日3回目。娘の言ってることが本当に理解できなかった。
それはもう、本格的に意味がわからない。こいつは日本語を話しているのだろうか……。
キャラインタビュー
『罪が一つ許されるとしたら?』
三沢麻衣「ダチを呼んで、ハロウィンで騒いでる連中をかったっぱしからぶっ飛ばしてやる」(高笑い)




