母への想い(3)
「みかおねえちゃん、これおいしいいい!」
「うむ。そうであろう。そうであろう。落とさずに食べるのだぞ」
「うん……!」
公園で仲睦まじくアイスクリームバーを食べる実花と絆。
このアイスは絆を慰めるために実花が近くのコンビニで買ってきたものだ。
絆は先ほどまでの泣いていた顔はもうなく、今は機嫌よさそうにアイスを食べていた。
実花はその元気な様子を見て内心ほっとする。
(さて、泣き止んでくれたから事情を聞こうかな……)
実花は絆のことを妹の様に想っていた。
先月会ったばかりで、付き合いは短くて、まだ互いを知っている状態ではないのかもしれない。だがそれでも――。
(だって、由衣ちゃんは私のお義母さん候補だし、それならきずなんは妹になるかもしれないもん! ……夢ちゃんには悪いけど……)
そんな不純のようなそうではないような……微妙な理由だった。
「それで? きずなんはなんで家出したの? 家出はいけないんだよ?」
現在の家出中の実花が言えた義理ではない……だが、実花はあえてそれをスルーして、優しく絆に語り掛ける。
そんな実花に絆は心を開いているのか、大げさに不満そうな顔を見せた。
「いいんだもんん! まあまがきずなにひどいことをいうの! ぱあぱがもうかえってこないって!!!」
「……えっ? パパ……?」
「うん、きずな、ようちえんの『えりちゃん』にいわれたの! きずなの「ぱあぱはなにしてるの?」って、それでまあまにきいたら、おこられたの!!!」
「…………」
絆の言葉はたどたどしく、内容が明確になっていない。でも……未来にはなんとなく絆の言いたいことがわかった……。
絆の父親のことだ。実花は数年前に絆の実の両親は亡くなったと、義孝と由衣から聞いていた。それで絆を親戚であった由衣が引き取ったと……。
それを絆は知らないらしい……。
実花は絆の言葉にどんな顔をしたらいいのかわからない……。
いつもならふざけて楽しむのが心情だが……今は心に黒い靄の様なものがあらわれている気がした。
なぜなら――。
「だから、きずな、まあまのことなんて、だいっきらい!!! ぱあぱのところにいくの!!」
「…………」
同じだった……かつての自分と……。
◇◇◇
『あんたなんて大っ嫌い!! 私はパパと暮らすの!!! それでセックスもいっぱいして楽しく暮らすの!!』
◇◇◇
嫌な記憶が頭の中を埋め尽くす……それは実花が母親とした『最期の会話』だ。後悔して後悔して後悔しつくした記憶だ。
何故あの時、自分はあんなことを言ってしまったのだろう? と、何千回も後悔した。
だけどいくら後悔しても人間は過去には戻れない……。
「? みかちゃん、どうしたの? こわいかおしてるよー?」
「えっ……? あ、ああ……ごめん、ごめん、きずなんはパパに会いたいのに酷いよね~」
「うん! だから、きずなはぱあぱのところにいくの!」
(だめだ……この子に私と同じ思いはさせたくない……)
実花はある種の強迫概念ような意志で口を開こうとする。この感情が絆にとって正解かどうかなんてわからない。
だが……絆と由衣を仲違いなどさせたくない。それは確かな実花の念いだ。
そして頑張って頑張って、天才の才能をフル活用して考えた結果…………………………実花はとある答えを出した。
「そうだ! 全員パパのハーレムに入れればいいんだ! 由衣ちゃんもきずなんも夢ちゃんも! これで全員幸せだぁぁぁぁぁ!」
実花は真理にたどりついた。
「はーれむ? それたのしーいの?」
「うん、とっても楽しいし、きもちいい……これは子供にいうことじゃないか……とにかく楽しいよ!」
「そうなんだ! それじゃあ、きずなもはーれむはいる!!!」
「よきかな。よきかな」
……天才と馬鹿はえてして紙一重である。
そんな言葉がこれほど実感させられる状況はなかった。
◇◇◇
音無さんから電話を貰って20分後、俺と未来は駅前で音無さんと合流した。
絆ちゃんとはこの辺りではぐれたらしい……ここは駅前ということもあり、人が多く、探すのはかなり骨が折れそうだった。
さらには台風が近づいていて人の逃れが早い。まだ雨は降っていないものの、風は段々と強くなってきている……もし大雨でもふったら最悪のケースが現実味をおびてくる……時間がない。
「絆……どこに……」
会った時、音無さんはいつものすました表情はなく、不安、後悔、恐怖などの感情で顔色は真っ青だった。
見ていて気の毒だが……まずは話を聞くのが先だな。
「警察には行ったのか?」
「行きました……警察の方も探してくれるそうです。て、店長私どうしたら……」
「安心しろ。俺と未来も全力で探す」
「はい。絆さんは必ず見つけます」
「ありがとう……ございます」
音無さんはかなり疲弊していて今にも泣き崩れそうだ……ここは俺がしっかりしないと。
絆ちゃんと別れた状況、行きそうな場所、それを聞いて効率的に――。
『ピピピピピ』
その時、俺のスマホが鳴る。着信者は実花……ちょうどいい。あいつにも探させよう。今は馬鹿の手でも欲しい。
「おい、実花――」
『パパって幼女大好きだよね!?!?!?!?!?』
「この馬鹿娘!!! 反省するまで一生帰ってくるんじゃねぇ!!!!」
俺は思わず叫んで電話を切った。
あっちの事情は知らんが無性に腹がたった……こっちはその幼女を捜索中だっていうのにあの馬鹿は!
いい、あいつは後回しだ。まずは音無さんに事情を聞いて、その後に無理やりにでも捜索を手伝わせよう。
キャラインタビュー
『罪が一つ許されるとしたら?』
竜胆未来「お父さんとの親子関係のまま結婚を強硬します。他に何かありますか?」(キリッ)




