外伝『アーリーデイズ』(17)
ソープから帰り……こう言うとなんか大人みたいだ……。いや、風俗帰りの男が偉いわけではないが……まあ、童貞高校生としては憧れの生活だな。
将来俺は風俗に通い……男の独り暮らしを謳歌したいという俺の夢は叶うのだろうか……。
まあ、今はそんなことはどうでもいい。今大事なのは……。
「昼飯を何するか……」
ソープ店の一幕から一晩明けた昼時。今日もアヤメと美奈は家で楽しそうに昼飯のことを悩んでいる。
理由は昨日キャッチマンが持たせてくれた特定のスーパーやレストランで使える株主招待券だ。最近は食費を切り詰めていたので助かる。
まあ、あまり知らないおっちゃんに貰うのはちょっと気が引けたけど……「アヤメに美味いもん食わせろや」と言われると断りにくかった……。
アヤメの飯の7割がチャーハンだしな……。
(……ソープさんの件は少し時間がかかるらしいし……こういうまったりした時間も悪くないだろう)
「あやめ! あやめはお兄ちゃんのちゃーはんがいいでござる! 卵いっぱいで!」
「チャーハンまみれの生活でもお前はまだ俺のチャーハンを求めるか……お兄ちゃんちょっと嬉しい」
本当に嬉しいのでアヤメの頭をなでなで……。
「あやめお兄ちゃんのちゃーはん大好きだもん。えへへ、お兄ちゃんの手あったかいでござる……」
「あっ! ずるい! 私もなでてよ! おっぱいを!」
「マジで!!!!????」
男らしく立ち上がる俺。そんな魅惑的ななでなでがこの世に存在していたなんて……おっぱいのなでなでだと? 真ん中をクリックするのはありだろうか!
「はいはい、えっちな義孝君や。冗談だから落ち着きたまえよ」
美奈はジェントルメンな老人のような余裕を見せて首を横に振る。
「お前が言い出したことだろうが……大人のなでなではお預けか……はぁ」
俺はテンションをめっちゃ下げながらその場に座りなおす。
たくっ、童貞の純情をもて遊びやがって……。
「お兄ちゃん元気出して! アヤメがおっぱい大きくなったらいっぱいなでなでしていいからねっ!」
「ありがとうアヤメ……でもそれは犯罪臭がやばいからやめよう」
「ん? そうなの?」
この話題を続けると俺の精神が摩耗しそうだ……話題を切り替えよう。
「それで? 美奈は何が食べたいんだよ?」
「うーん、さっぱりした物が食べたいかな……あっ! 大きいスイカ買って食べようよ! 1人1個!」
「なんで、お前はギャグに走りたがるんだよ……」
「? 美奈ちゃんスイカはご飯じゃないよ? いっぱい食べたら怒られちゃうよ?」
「ちっちっち。その背徳感を味わいながら食べるスイカが最高なんだよ。くすっ、大きいスイカを半分に切ってスプーンですくって食べるんだ~」
「わああああああ、それやってみたい!」
「お前ら勝手なこと言ってんじゃねぇ。暑さで頭やられてるのか?」
いや……スイカの大食いとか絶対にやりたくないわ。
なんでそんなチャラチャラした物で腹いっぱいにしなくちゃいけないんだよ。
貧相な発想がまったく嘆かわしい……だが……美奈の面白ければいいという考えは意外といいんじゃないか……?
どうせキャッチマンの財布から出た資金なんだし……ここは遊びも大事だろう。
「よし。ケーキを死ぬほど買って食おうぜ! 俺ホールケーキをひとりで食ってみたかったんだ」
「ケーキ!!! アヤメもケーキ食べたい!!」
目をキラキラさせて俺に抱きつくアヤメ。うむ。子供はいつだってケーキを腹いっぱい食べることに憧れている。
その夢を叶えてやることも年長者の義務だろう。
しかし、1人空気の読めないやつがジト目でこちらを見てくる。
「えええーー。ケーキは太るじゃん!!!」
「スイカを丸1個食おうとしてる奴の言い分じゃねぇ! そもそもお前は少し太った方がいいからな」
美奈は身体の線がびっくりするぐらい細い……まあ、一部は極端に肉付きがよかったりするんだけど。
「えっ……そう? 義孝君が言うなら……やぶさかでもないんだけど……うーーん、義孝君はデブ専と……もりもりマシマシむちむちが大好きっと」
いや限度がるわ。メモるんじゃねぇよ
「でも糖分はなぁ……うーーーーーーん。どうしよう。そんなに接種するのは限りなく駄目な気がするだけどなぁ……うーーーーん。でも塩分よりはマシかなぁ」
美奈は頭を抱えて思いっきり悩む。いや、そこまでの苦渋の決断じゃないと思うんだけど……でもそういえば美奈はいつも食事のバランスに気を使ってるからな……。
野菜が食卓に並ばない時はきゅうりかじってることがあるし。
「やっぱり私はスイカにするよ。途中で分けてって言っても絶対に分けてあげないんだからっ!!! いーーーだ!」
今度は子供っぽくいじけた……お前芸風多すぎだろ。
「あっ!!! お兄ちゃん!!! 美奈ちゃんいじめたらめっでござる!!」
ああ! 収拾がつかねぇ! とにかくスーパーに出かけよう。買うものは行ってから決めればいいだろう。
俺は美奈とアヤメの引き連れて近くのスーパーに向かった。




