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あら、間違えましたわ

 


 キキキキキー。グチャ。おい、こっちで誰か死んでるぞっ! キャーーー。


 それが俺の最後だった。ダルイと嘆きながらコンビニの夜勤バイトに向かう道すがら、信号無視して突っ込んできたトラックと衝突。あまりにもあっけない末路。誰にも見られず、悲しまれる事もなく、ただただ死んだ。


『あら、殺す人間を間違えましたわ』


「は? どういうことですか」


 肉体は現世においてきたので、魂だけの俺が見させられたもの。それが俺が死んだ瞬間の映像であった。それを見て、俺から気まずそうに視線をはずす幼女が一人。


 喋り方からして、年相応ではないのだろう。青い髪、前髪ぱっつんで、きれいに整えてある。白いワンピースに麦わら帽子をかぶった姿はまるで、避暑地のお嬢様である。体格をのぞけばだが。


 まぁ、目の前にいる幼女の正体などどうでもいい。問題なのは、間違いで死んだってことだ。死ぬのってめちゃくちゃ痛いんだからな! 某アニメの鉄骨渡りがあるが、あんなの俺には一生無理だわ。怖すぎるっての。


「まあまあ、どうしましょう。困りましたことよ」


「まあまあ、じゃねえよ! 早く地球に返さんかいっ!」


「ああ、それは無理ですことよ、ごめんあそばせ」


 テヘッと可愛らしく舌をだす幼女、俺は間髪いれずパンチを決め込んだ。しかし、霊体の攻撃があたるはずもない。スカッと体を通り抜けるさまを見て、幼女がケラケラと笑った。くそう、こんな幼女嫌だ。


「ああ、そうですわ。異世界にご招待しましょう」



「異世界?」


「ええ、ファンタジーの剣の世界。それが異世界ですわ! ちょうど余ってる……ゴホンゴホン、貴重な職業が残っていましてよ」


「おい、今余ってるっていわなかったか?」


「フンフーン」


 口笛吹いてそっぽむく幼女。異世界か、俺は想像する……うーむ中々いいんじゃないか。今のこの生活よりましだろうし、さすがに何か特典くれるだろ。俺、間違って死んだわけだし。


「それでは転生と転移。どちらを選びますか、なーんて決まっている事でしたわね。だって、貴方の顔、ひっどいですわぁっ!」


「おいっ! 霊体なんだから表情はぼやけているだろう! それに、地球でも俺は中の上はあったと――」


「ブーーーーー! お笑いですわ、アハハハハハっ! 貴方が中の上って、プフフフ……!」


 腹を抱えて、笑う幼女。相手が美幼女だけあって様になっているのがなお許せない。


「あぁ、おっかしい。それで、チートの内容はどうしますの? なーんでも一つ叶えさせてあげますわよ。どんな魔物でも倒せる伝説の剣、ドラゴンの火でできた無敵不老の薬。その他なんでもいいですわ」



 ええどうっすかな、うーん悩むなぁ。


「ねえ、早く決めてくださらない。私、早く変えてお姉さまとティータイムがあるんですの。無能のダメニート寸前男にはわからない高尚なひと時ですのよ」


 さっきからこいつ幼女だからって、言っていいことと悪いことくらいあんだろうが。俺も幼女に生まれてれば幸せな人生があったのかな。うん? 待てよ……


「ようし決まったぞ!」


「ではどうぞ、旅経つ冒険者よっ!」


「お前の体と、交換っ!」


「はいっ、私の体とお貴方の体を交換ですね……ってえ、え、え?」


 ポワワワーン。おお白い光に包まれる。体が温かいぜ。これが生きるって事なのか。


「ちょっと、何この体。イヤーーーわたくしの体返してーーー!」


「バイバーイ」



 にこっと殺人スマイルを決めて、それが俺の顔との最後になった。こうしてみると、ブッサイクな顔してんな。ビバ幼女、異世界。幸せな第二の人生が俺を待ってるぜっ!
















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