表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

100万回生まれ変わった猫

作者: 新月 望

様々な生物の一生を過ごしてきた猫の話です。


 吾輩は猫である。名前はまだ決めていない。


 前世はベルという犬であったし、その前は健吾という人間であった。それにその前はカマキリだったな。


 吾輩は100万回死んで100万回生まれ変わった猫である。猫として生まれたのは200回を超える。生物として、吾輩ほどのベテランがいるのだろうか。


 100万回もの一生をおくってきた吾輩は、100万回もの恋をしてきた。


 でも、やっぱり、カマキリとしての最後はきつかったな。50回ほど、カマキリとして生きたことがあるが、最後に妻に食われるというのには、いっこうに慣れない。


 あとは、マンボウのメスとして生まれ時も悲しかったなぁ。自分が産んだ3億個もの卵がほとんど他の魚のエサになったのだ。あんな悲しみは、他の生物では味わえない。


 そんな吾輩が一番生きづらい生物と感じたのは人間だ。人にはしがらみが多すぎるのだ。自由などどこにもない。それに比べて猫はいい。好きなだけの自由がある。


 吾輩は猫である。150年ほど前に人間として生まれた吾輩の子孫の家に暮らしている。


 吾輩達が命を賭して守った日本というこの国は、物資的な豊かさを手に入れ、それ以外の大事な何かを失っていた。猫には関係のない話だが。


 その平和の上で猫として生きているわけだ。


 全てのことがらは全てのおかげであり、全ての所為なのだ。


 まわりまわってかえってくる。


 宛名も送り主も、全て自分なのだ。


読んでいただきありがとうございます。

短い文章でしたが、好きなことは書けました。



『世界で唯一のフィロソファー』という連載もやっていますので、よろしければどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://ncode.syosetu.com/n8657ed/
― 新着の感想 ―
[良い点] 千字にも満たないとても短い作品ながらも、100万回の生涯の断片がサラッと描かれていました。 そしてそれを受けてのあの終わり方というのがまた重みを感じさせて、もしかしたら覚えていないだけで自…
[良い点] マンボウかなしいですね。
2019/10/03 01:17 退会済み
管理
[一言] 短い文章の中に作者さんの思想のようなものが伝わってくる素敵な作品でした。深いですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ