100万回生まれ変わった猫
様々な生物の一生を過ごしてきた猫の話です。
吾輩は猫である。名前はまだ決めていない。
前世はベルという犬であったし、その前は健吾という人間であった。それにその前はカマキリだったな。
吾輩は100万回死んで100万回生まれ変わった猫である。猫として生まれたのは200回を超える。生物として、吾輩ほどのベテランがいるのだろうか。
100万回もの一生をおくってきた吾輩は、100万回もの恋をしてきた。
でも、やっぱり、カマキリとしての最後はきつかったな。50回ほど、カマキリとして生きたことがあるが、最後に妻に食われるというのには、いっこうに慣れない。
あとは、マンボウのメスとして生まれ時も悲しかったなぁ。自分が産んだ3億個もの卵がほとんど他の魚のエサになったのだ。あんな悲しみは、他の生物では味わえない。
そんな吾輩が一番生きづらい生物と感じたのは人間だ。人にはしがらみが多すぎるのだ。自由などどこにもない。それに比べて猫はいい。好きなだけの自由がある。
吾輩は猫である。150年ほど前に人間として生まれた吾輩の子孫の家に暮らしている。
吾輩達が命を賭して守った日本というこの国は、物資的な豊かさを手に入れ、それ以外の大事な何かを失っていた。猫には関係のない話だが。
その平和の上で猫として生きているわけだ。
全てのことがらは全てのおかげであり、全ての所為なのだ。
まわりまわってかえってくる。
宛名も送り主も、全て自分なのだ。
読んでいただきありがとうございます。
短い文章でしたが、好きなことは書けました。
『世界で唯一のフィロソファー』という連載もやっていますので、よろしければどうぞ。