お題その2 馬について
こんにちは、名前からあふれ出る底辺臭を隠す努力すら惜しんでしまう永遠のミジンコことブービーです。
今回は中世ファンタジーでおなじみの移動手段である馬とその周辺機器について、壁にぶち当たった内容を無造作にメモしてみたいと思います。
当然ながらミジンコが考えることなので殆どの方にとっては今更感溢れる内容となっていると思います。
あと色々と出てくる数字が怪しい辺りは仕様となっておりますので宜しくお願い致します。
「移動手段しての馬の地位」
中世ファンタジーにおいて馬とはどういう存在なのか。
まずは馬の地位を固めるところから始めたいと思います。
ゲームなんかではもっぱら序盤のほうで手に入り、徒歩よりはマシ程度の性能で
次の移動手段が出るまでの繋ぎ的な扱いを受ける事の多い存在ですが、現実世界ではどうでしょう。
馬は紀元前5000年頃から紀元前3000年頃にかけて、人間の家畜としての地位が固まってきたようです。
人間と馬は有史以前からの付き合いだったのですね。
そして、いつまで人々の足であり続けたのかというと、19世紀なり、蒸気機関が発明されるまでは
馬に勝てる陸上の移動手段はありませんでした。
つまり、中世だけに限らず、遥か昔からつい最近まで、馬は人間にとって最強の移動手段であり続けてきたのですね。
「旅に使う馬の性能」
それでは馬の能力とはどの程度のものなのでしょうか。
馬と言っても色々な馬がいますので、全て網羅していると間違いなくぼくが飽きて
もう時速60kmくらいで走って、たまに道端の草食ってれば問題ない感じでいいやとなってしまいます。
なのでここでは最も出番が多いであろう、旅人の足代わりとなった馬について考えてみたいと思います。
では旅人たちが使用していた馬は、どの程度の性能を持っていたのでしょうか。
馬の性能を表すうえで重要な項目は、移動速度、持久力、積載量などがまず挙がると思いますので、それぞれ見てみましょう。
「移動速度」
これに関しては、時代ごとの道の整備状況や、天候、季節などにより大きく違ってくるようですが
馬が快適に活動できる状態で、時速7km~14kmくらいの速度が出ていたようです。
全力稼働状態で、時速20km~30km程度らしいので、旅で使用する馬は思ったほど速くないという印象を受けます。
それではそんな馬たちは1日にどのくらいの距離を移動できたのでしょうか。
時速10kmで6時間歩いたら60kmくらいは最低移動できるんじゃないの? と思いますね。
ですがどうやらそんなにうまくはいかないようです。
ある記述を見ると、10日間で馬が移動できる距離は300km程度だったとか。
そうすると1日当たり30kmとなり、これだと徒歩で旅をしても十分達成できてしまう移動距離です。
最低でも人間の倍近い速さで移動できるはずなのに、なぜこんな事が起きるのでしょうか。
それは、馬も生き物であるという事と、中世の道路事情が大きく関わってくるのです。
「馬の運用」
馬も生き物なので、飯も食えば水も飲み、疲れもします、故障や体調不良といった不慮の事故も当然存在します。
ちょいとネットを漁ったところ、普通の競走馬(体重500kg程度)は1日に飼料を12kg~15kg食べ、水は20リットルから40リットル飲むそうです。
ポニーなどの小型馬(体重200kg程度)は、1日に飼料4~5kg程度でもよいらしいですが、青草だと20kg程度食べさせなければいけないというような話もあります、食べさせる食料の種類によっても、必要な量が変わってくるのですね。
ロバについては、なかなかこれだという数字が見つからなかったので(真剣に探してない)
力が強く粗食にも耐えるらしいので、小型馬よりもちょっとだけ燃費がいい程度として考えてみましょう。
そしてあまり関係ないかもしれませんが、馬は甘いものが好物らしいです。
さらに視野角が350度あり、ほぼ全方位が見渡せるのと、夜目が利くというのはよく知られている事かと思います。
次に馬の継続運動能力です。
馬は生き物なので、永遠に動き続けられるわけではないです。
では馬はどのくらい体力があるのでしょうか。
これもズバリ書かれている記述がなかなか見当たらないのですが(無能)
質問系の掲示板の回答としてこんな記述を見つけたので参考にしたいと思います。
常歩=6km/h、2時間歩いて30分休憩で1日行動可能
速歩=15km/h、連続1時間が限度
駈歩=20~30km/h、20~30分が限度
襲歩=60km/h、5分が限度
郵便馬車が14km/h程度で移動し、20km程度で馬を交換していた事などからも、それなりに根拠のありそうな数字に見えます。
馬の休憩時間は食事と手入れを含む本休憩で3時間以上、旅の途中に行う水分と栄養補給を兼ねた小休憩で30分以上を要したようだという事から
馬の状態を見ながら小休憩を繰り返し、人間の宿泊準備と併せて本休憩を行うというサイクルで移動して行くというパターンが考えられます。
これを中世ヨーロッパ風の世界の旅で使うとなった場合どういう事になるでしょうか。
使うのは立派な馬ではなく、ロバなどの小型馬を想定しましょう。
何故かといいますと、大抵の場合、通常の移動で立派な馬を使ったりはしないようだからです。かの有名なナポレオンのアルプス越えの際も、使っていたのはロバ(ラバ?)だったとか。
通常の運用では、とにかく安くて燃費の良い馬が重宝されたのですね。
また、人間の言う事を聞くように調教された馬はただでさえ高級品であり、いい馬になるほど値段も高く、良い馬になると一般人には到底手の出せるものではなかったという点も、安い馬を中心に使われていた理由のようです。
高級車で外回りしている営業なんていませんよねという事ですね。
それではまず何も考えずに進んだ場合のシミュレートを行ってみます。
朝の7時に町を出発し、時速6kmで歩きつつ、2時間ごとに30分の休憩を取ります。
9時(2h経過) 12km地点
11時半(4.5h経過) 24km地点
14時(7h経過) 36km地点
16時半(9.5h経過) 48km地点
19時(12h経過) 60km地点
何の障害もなくただひたすら理想通りに歩き続けた場合、この程度の距離を移動できるという事になります。
実際はここに、人間、馬の体調や、不慮の事故、天候、道の状態などの要素が入り
1日の移動距離が変化してく事になります。
ちなみにこの内容はロバ単体に人が乗った場合を想定していますので、馬に馬車を引かせた場合の移動距離はまた違って来ます。
さらに馬車には様々なタイプがあり、1頭で引く場合や、複数の馬(多くは2頭もしくは4頭)で引くものなどがあります。
基本的には馬車が大型化するほど、複数体制で引くようになるようです。
馬車に関してはまたの機会によく考えてみたいと思います。
さて1日に移動できる距離の目安はつきましたが、1日で次の補給地点に到達できない場合、新たな問題が発生します。
それが馬の食料問題です。
人間の食料なんてたかが知れてますね、リュック一つに保存食でも詰めておけば、1週間程度なら問題なく食べていけるでしょう。
しかし馬は違います、燃費のいい小型馬でも、毎日最低(かどうかは分かりませんが)4kgは干し草などを食べないといけません。
生草だとさらに食べる量が多くなります。
ということは、仮に5日間かかる行程を走破しようとすると、馬用の食料は最低でも20kg必要という事になります。
人間は、食べるものにもよりますが、成人男性で1日約1.5kgの食料が必要なようです。5日間で7.5kgですね。
ロバ単体の積載量は150kg程度という事ですので、食料だけで27.5kg、ロバの積載量の約20%が旅の食料で埋まります。
とは言え、まだ積載量には100kg以上の余裕がありますね、全体の2割程度がデッドウェイトとなる程度なら許容範囲内ではないでしょうか。
重量問題恐るるに足らずですね。
そう思っていた時期が僕にもありました……
必要なのは食べ物だけではないのです、水、生命の維持に絶対に必要な水も持ち歩く必要があるのです。
水は成人男性で1日に2.5リットル必要だと言われています。
しかし馬の場合は体重500kg程度の中型馬で1日に20~40リットルもの水を消費します。
小型馬の水の消費量に関する記述はこれだというものが見当たらなかったのですが(まじ無能)
体重ベースで考えた場合、最低でも1日10リットルは消費するのではないかと考えられます。
では先ほどの食料の積載量に、人間と馬の消費する水の量、1日12.5リットルを足してみましょう。
水は1リットルでおよそ1kgの重量があります、つまり12.5kgが5日分で、62.5kgの水が5日間で必要となり
食料と合わせると27.5kgと62.5kgで90kg! なんとロバの積載量の60%が、道中の食事で埋められる訳です。
もうやっとの思いでロバを買った駆け出しの行商人とか泣くしかありませんね、中世の商売は厳しいです。
でもまあ、残り60kgで何とか利益率の高い商品を運用すれば……
しかし話はそれだけでは終わらなかったのです。
なぜなら、そこにさらに人が乗らなくてはならないからです。
行商人ならそれでもいいんですが、一般人は馬に乗ってなんぼです、乗らないなら馬連れていく意味がありません。
残りの積載量は60kg、人が乗ったらぎりぎり、もしくは重量オーバーです、いくら頑丈なロバと言えどひとたまりもありません。
そもそも、そもそもですよ、90kgの食料、水と干し草とか一体どれだけの体積があるのかと……
干し草は頑張って紐で縛ればいいのかもしれませんが、水はどうするのですか、ポリタンクなんて便利なものは無いのです。
ロバにそんなもの積んだらもう人の乗る場所なんて無いというものです。
つまり、ロバ単体で5日間補給なしの旅は厳しいという結論になるのです。
2日分でも食料11kgと水25kg……2日分でさえ厳しい、とにかく水が厳しい。
1日のうちに次の休憩所、町や村や宿場に到達できるようなルート以外で、馬単体での旅は難しいという事ですね。
日をまたぐ移動になると、どうしても水の確保がネックになってきます。
長距離を移動するには馬車に食料と水を満載するしかないのでしょうか。
中世の人々はどうやって長距離を移動したのでしょうか。
交通手段が貧弱だった大昔。
人々は村と村をつなぐ道だけを作って、ごく小さな交通網を形成していました。
1日2日で到達可能な範囲とのみ、交易を行いました。
それ以上は途中で飢え死んでしまう危険を孕んだ旅になりました。
ある時えらい人が気付きました。
川を下れば、歩くより早いし、水も食料も人間の分だけで済むじゃないか。
船を使った河川交易が始まりました。
さらにある時偉い人は気づきました。
水が持ち運べないなら、川の近くに道を作ればいいじゃないか。
川沿いに道ができ、陸上でもより遠くまで旅を続けることができるようになりました。
そうして道ができると、あるえらい人は思いました。
道の途中で食料を売ったら儲かるんじゃね?
道の途中に宿場町が形成され、人々は宿場町を経由することによりより遠くに、より多くのものを運ぶことが可能となりました。
こうして文明は川とともに発展して行きました。
つまり、水を何とかして持とうとした訳ではなく、水のある場所に沿って旅をしたのですね。
なので、水の補給が期待できないような場所に行かざるを得ないような場合は、それはそれは大変だったと思います。
補給車が何台も必要だったのでしょうね。
しかしそうした先で水場を見つけ、道を繋ぎ、それを繰り返しながら世界は広がって行ったのです。そんな彼らはまさに冒険者だったのでしょう。浪漫ですね。
少し脱線しましたが、こうして考えてみると、馬の運用というのは思った以上に大変だったのだろうという事が分かります。
決して、序盤で手に入る、使っても使わなくても関係ない程度の乗り物ではないのです。
では最後に、この馬という生き物はどの程度の価値があったのかを少し調べてみたいと思います。
「馬の価値」
現代の馬を販売しているサイトなどを確認すると、馬の種類はもとより、年齢や状態によってその価格は様々です。
以下にざっと見た馬種と価格帯についてまとめてみます。
小型馬(軽種) 20万円~150万円
中型馬(中間種) 100万円~600万円
大型馬(重種) 数十万円~数百万円
馬の種類としては、軽種、中間種、重種という区分があるようですが、競馬などで有名なサラブレッドは軽種に所属するようです。
サラブレッドは元々狩猟用の馬だったようですが、現在では完全に競争専用の馬で
値段がピンキリな上に、中世には馴染まなさそうな馬種だと思いますのでここではあまり考えないことにします。
そして区分けをしすぎても面倒になりそうなので、ここでいう小型馬の中にはポニーやロバのような馬も含まれるという事にしてください。
大型馬についての価格はそれっぽいものを見つけることができませんでした(略
しかし、大型馬は調教が非常に手間がかかり、難しいとの記述がありましたのでその分価格は上がるのではないかと思います。
また、食用として人気なのも大型馬のようです。食用馬の場合は本体価格はかなり低くなると予想できます。
また、現代では競馬などで人気のある馬は数千万~数億などで取引されたりもするようです。
アイドル価格というやつですね。
それを踏まえて、中世の馬の価格はどうだったのでしょうか。
これに関しては16世紀頃の書物などを基に物価を調べたサイトがあったので何となく予想することはできそうです。
モノの価値が現代とは全く違う上に、地域が少し変われば相場も大きく変動する時代ですので、正確に今の価値に変換するのは難しいのですが
それなりに分かりやすい基準を探したところ、馬(恐らく旅に使える性能の馬)は連隊長の月給の3倍ほどの値段のようです。
連隊長ってなんぞというと、軍隊のいわゆる大佐クラスの役職です。めっちゃ偉い。
現代の自衛官の一佐(大佐)の給料は40万~56万円くらいだそうです。
中世の給与体系が今の自衛官と同じとは思えませんが、他に参考になりそうなものも無いのでこの辺を基準にしてみましょう。
すると、16世紀頃の馬の値段は120万~168万円相当という事になります。
即戦力の馬がこのお値段……何となく現代の馬価格から考えても、そこまでの違和感は無いように感じますね。
余談ですが、中世では家畜の泥棒というのはわりとありふれていたようです。
牛や馬、羊など、ある程度自走できる盗品なので、盗みやすかったのでしょうか。
値段もそれなりにしますし……
対する窃盗に関する刑罰は、時代によって多々ありますが、基本的には盗んだものの価値によって刑罰が変化したようです。
羊1匹以上くらいのものを盗んだ場合、発覚すると普通に死罪だったとか。馬泥棒も大変ですね。
対して公然と行われる銀行強盗のような犯罪は、堂々として男らしいという理由でコソコソ行う窃盗よりも罪が軽かったそうです。
とはいえ、恥ずかしいとされる絞首刑か、潔い斬首かというくらいの違いで、死罪には変わりありませんでした。
この辺の感覚が現代人には分かりにくいですね。
ここまで馬に関してのあれこれを思いつくままに適当な数字をいじって考えてきました。
数字はこじ付け的な部分が多いので何とも言いにくいところではありますが
馬を持つという事は大変なんだなという事は、何となくわかってきたような気がしますね。
高いお金を出して買ったかと思えば、毎日の手入れやケガ、病気といった故障に気を使いながら大切に扱わなければいけません。
そしてどんなに大切に扱っても、生き物である以上、体力は衰え、やがて寿命が訪れます。
馬の寿命は大体25~30年くらいだそうです。その間生まれてから調教を受け、仕事に耐えられる時間は10~15年くらいはないでしょうか。
物語に出す馬、特に主人公が扱う馬は、特別仕様になる事が多いのではないかと思います。
特別仕様自体はその物語の設定なので問題はないのですが、そういった馬が一般の馬に比べ
どれだけありえないものなのかという驚きを表す指標などを考える際に、普通の馬のスペックを知っておくというのは役に立つと思います。
時速60kmで一昼夜走り続ける馬を見ても周りはフーン程度では悲しいものです。
また、馬に代わる移動手段を出す際にも、その価値の対比やコスト設定の基準などに利用できるのではないでしょうか。
完全に個人の趣味になりますが、ぼくの場合は瞬間移動系の移動手段などは、特殊イベント以外ではあまり使いたくない性質ですので
そうなってくるとどうしても、物語全体を見た時の移動手段の配置というものを気にする必要が出てきます。
同じような事で四苦八苦している方がおりましたら、そういった方の作品などをぜひ読んでみたいものです。
「俺は移動手段にはちょっとうるさいぜ」とか「移動の苦労を書かせたら俺の右に出るヤツはあんまりいないぜ」的な方がおりましたら是非こっそり教えてくださいおねがいします。
ところで、ぼくは思うんですよ。
こんな不確かでクソの役にも立たないミジンコ考察を打ち込んでる暇があったら
女の子と行くイチャコラ水着回でも突っ込んだほうが、ぼくもみんなも幸せになれるんじゃないかと……