プロローグ:化物
ある所に、破壊の力と六つの翼を持つ赤と黒の竜がいました。
化物は人に恐れられ、誰も近づきません。
化物は寂しくてたまりません。
化物は呟きます。
“前は皆、怖がらないで来てくれたのに”
その化物の正体は、人間好きの妖怪でした。
呪いによって、化物になってしまったのです。
ある日、化物は人になることが出来るようになりました。
化物は喜び、人になりました。
そして、化物は人に交じって暮らし始めました。
化物は力があったので、冒険者になりました。
強い獣、時には戦いを望む冒険者、全員に勝ちました。
“どう?強い?”
化物は嬉しくてたまりません。
化物は言いました。
“やっぱり皆と一緒は楽しい”
それから何年か経ちました。
化物は冒険者から勇者になりました。
けれども化物の周りは誰もいませんでした。
化物が強すぎて、誰も着いていけないのです。
“人がいないのは寂しい”
化物はそう思い、あることを思いつきました。
“自分が弱くなればいい”
化物はその日から誰にも勝ちませんでした。
それから何年か経ちました。
化物は小さな静かな村で、村の人と静かに暮らしていました。
化物は呪いのせいで歳をとりませんでしたが、村の人は気にしませんでした。
しかし、その静かな暮らしは続きませんでした。
ある日のことです。
化物はいつも通り、村の人達と一緒に畑仕事をしていると、ある一人の男が来ました。
“ここに勇者だった者がいるのを聞いた。もしいるなら、手を貸して欲しい”
化物が冒険者を止めた後、獣達は凶暴化していたのです。
化物は自分を必要としてくれたことに喜びを感じました。
けれども、化物は自分が強すぎて誰もいなくなることを恐れていました。
“大丈夫。誰も君からいなくならないよ”
村の人達は言います。
“私達は君がとても強い人だと知っているよ”
“けど、君は強いと自慢せず、心優しく接しくれた。大丈夫。安心して行きなさい”
村の人達は化物の背中を優しく押してくれました。
化物は男と一緒に獣を退治することを決意しました。
化物は男が言っていた獣を倒しに行きました。
けれども、化物は驚きました。
獣達は皆、そこから一歩も動かないのです。
“なぜ、人間を襲ったの?”
“私達の子どもを殺したから”
獣達の後ろには動かない小さな獣がいました。
“この子達は何もしていない。ただ獣というだけで殺された”
化物は悲しみました。
命在るものを、ただ人ではないだけで殺したということは化物にとって残酷なことでした。
化物は悲しく思い、獣達の子どもを生き返らせました。
“自分が出来る事はした。だからもう、人間に会わないで。殺したくないから”
化物は獣達にそう言って、男のところに戻りました。
男は化物が帰って来た途端に怒鳴りました。
“何故、獣を殺さなかった!奴らは化物なんだぞ!”
化物は驚き、衝撃を受けました。化物の行動が全て筒抜けだったのです。
“もし、お前が獣を殺さないなら、お前がいた村を焼く。されたくなければ、早く殺しに行くことだな”
化物は悲しみました。
“どうすれば、いいのだろうか。自分の行動は全て知られてる。もう、殺すしか方法はないの?”
化物は獣達を殺したくはありませんでした。
けれど、殺さなければ村の人達が殺されます。
化物はあることに気がつきました。
“自分の行動を全て知っている奴を見つけて、その力を破壊してしまえばいい”
化物はすぐ行動に移しました。
しかし、大変なことになってしまいました。
化物の行動を探っていたのは、その男自身でした。もし、男にこのことがばれてしまえば、村の人達が危険にさらされます。
“記憶と力を破壊しよう”
化物は男から自分に関する記憶と力を静かに破壊しました。
これでもう、一安心です。
化物は村に帰りました。
男は残酷なことをしました。
化物が仕事をする前から村に火を付け、焼いてしまっていたのです。
化物は悲しみのあまり、涙を流し、その場に崩れ落ちました。
化物は怒りのあまり叫び、理性を失いました。
その後、化物が目を覚ますとそこには動かくなった物がありました。
化物は怒りのあまり理性を失い、人々を殺してしまいました。
化物は悲しみ、元の化物の姿に戻り、何処かに行ってしまいました。
その後、化物が一体何処に行ってしまったのか、知る人はいませんでした。