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サンタ・カムバック

作者: バクガワ

  そりに大きい荷物を積んだ、サンタ1が少し途方にくれたようにたたずんでいる。

  サンタ2が登場し、荷物を押そうとするも、びくとも動かない。

  二人ではかったように、そりを動かす。


サンタ1  あなたもですか?

サンタ2  ええ、トナカイに逃げられましてなぁ

サンタ1  私の場合は愛想をつかされたというか、何年も前からなんです

サンタ2  そうですかこの大きさだと随分、遠くまで、でしょう

サンタ1  いや、私は今年まで足を洗っておったもんで、たまってしまいましてねぇ

サンタ2  そうですか


  そりを、ふんっと、動かして


サンタ1  いやー助かりました、ありがとう。次はそちらのそりを

サンタ2  ええ、でも、少し休みましょう、やっぱり年をとると、この峠はきつい。サンタもトナカイがいないとカーネルサンダースとかわらないですな

サンタ1  ええ、クリスマスの登録商品です

サンタ2  ・・・はぁ、聞いてもいいですか?どうして何年も足を洗ってたのに今年からやろうと?

サンタ1  ああ、娘に見つかってしまいましてねぇ、そう、あれは今年の夏も近づく八十八夜の頃です


  茶摘の歌が聞こえてくる。

  サンタ2→娘に

  サンタ1は帽子を変える。

  

       私は東京からずっと西の田舎でバスの運転手をやっていました


娘  三田拾字みたじゅうじ村って、このバスに乗ってけばつきますか?

サンタ1  いや、あそこはバス通ってないから

娘  そうですか(写真をみて)

サンタ1  つれてってやろうかい?

娘  え、いいんですか?

サンタ1  どうせ茶摘終わるまで暇だから

娘  ありがとうございます


  (パー!プシュー・・というバスの音)

  (そりがそのままバスになり、乗り込む娘)


   ここから遠いですか?わっ


  (よろめく)


サンタ1  気をつけて、ちゃんとつかまってないと、この辺道が凸凹だから。そうだなぁ、そんなにかからないと思うよ、おじさん運転うまいから、お譲ちゃん東京から?

娘  ええ、出身はずっと北のほうなんですけど

サンタ1  へぇー、じゃ実家は牧場かなんか?

娘  そうです、え?私そんなに田舎くさい顔してます?よく友達から言われるんです

サンタ1  いやーめんこいよ、好きだなぁ、北の人は色白で

娘  そうですか(照れる)それほどなんですけどねぇ

サンタ1  そうそう、そうだ!認めてこ!本当のことは認めてかな、な

娘  はい

サンタ1  牛乳飲んで、うまいもん食ってりゃ、そりゃ別嬪にもならぁな

娘  でも、うち牛じゃなくてトナカイ飼ってたんです

サンタ1  トナカイ?へぇ、そりゃ珍しい

娘  でも、最近じゃ、ダチョウ飼ってる農家もいるし、農家もいろいろなんです

サンタ1  はぁ、それで三田拾字村に、サンタクロスっていって、クリスマスなんか盛り上がるんだ、村長がサンタやって村の若い衆がトナカイやって、子供たちから菓子なげつけられて、んーあれ豆まきとごっちゃになってんだなぁ

娘  へ~(半笑い)

サンタ1  でも、今は何にもないぞ、畑もこの時期、皆茶摘に行ってるから

娘  いえ、実は父を探してて

サンタ1  あら~お父さんサンタかなんか?

娘  さあ?なにをしてたのかはよくわからないんです、よく電話をして、トナカイの世話してただけだった気もします、あんまり覚えてないんです、小さい頃に離れて暮らすようになったから

サンタ1  へぇそうかいそうかい  

娘  運転手さん、トナカイって飛ぶって知ってました?

サンタ1  あれ?トナカイに羽でもはえてたかな

娘  違うんです、すごいジャンプするときがあるんですって、ほら(写真を見せる)

サンタ1  なんだ、この豆粒みたいなのが、おっと(ゆれる)

娘  これ、トナカイなんです、合成とかじゃないんですよ、昔から鹿の仲間は、こう、ものすごいジャンプをする姿を目撃されてて(手帳にびっしり書いてある様子)100メートルぐらいジャンプしちゃうんだって

サンタ1  そりゃすごいや、でもトナカイは三田拾字にはいないよ

娘  でも昔誰かが飼ってたって聞きました、もしかしたら

サンタ1  おっ、ついた。ま、誰かに聞いたらわかるかもな。親父さん見つかるといいな

娘  ええ


  娘、降りる。

  

   運転手さんも生まれは北のほうですか?

サンタ1  え?

娘  いや、さっきめんこいって

サンタ1  あぁ、うちの親父が北の出身でね


   サンタ1、帽子を変える。


       そのままバスで成田に向かってこっちに飛んできたんだ


   娘→サンタ2に

 

       {本当は言いたかった、自分が父親だってこと、サンタだってこと・・・でもいえませんやねぇ、サンタは  

        生涯、サンタですからねぇ}


サンタ2  そうですかぁ、それじゃいろいろばれてますかね?

サンタ1  さぁ、わからん、子供の頃から勘のいい子だったからねぇ・・・まぁ僕の話はこのくらいにして、冷え込んできた、そちらのそりも運ばなくちゃ

サンタ2  (立ち上がって)ええ、話聞いてる間にふもとまでくだっちゃいましたねぇ


  暗転

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