日常 月曜日と友人と主夫男子
「おはよう、トム。」
「おー、おはよう、タキ。今日のテストの予習はバッチリか?」
「もちろん、ガリ勉メガネと馬鹿にされて来たオレを甘く見るなよ?」
「キャー、タキサンカックイー!」
「照れるだろ、やめろよ。」
オレのあだ名はトム。出席番号16からつけられたあだ名で、オレの学校は3年間クラス替えというものがないのでずっとオレは出席番号16。
オレの友人であるタキこと滝川遥はオレより身長が高く、ひょろりとしているメガネくんだ。本人曰く筋肉が付きにくい体質らしく、これでも柔道の黒帯というのだから驚きだ。
「でも、タキってコンタクトしてるとスカウトされるくらい美形なんだろ?モテたいとかないのか?」
「キャーキャー騒がれるのは子役の時に懲りた。普通に過ごして、普通に人を好きになりたい。」
「ふーん。誰か好きな人いるのか?」
「鈍感なやつだから、少しずつ外堀埋めてくつもり。気が付いたらオレの隣が当たり前くらいまで持ってくさ。」
彼はこちらを見ながらふんわり笑う。コンタクトでなくともそこらの女の子は落とせそうだが、その子はかなりの曲者らしい。
「そうか。応援するよ。」
「ん、そう言えばトムは?いないの?気になる子。」
「残念ながら。好きになったら男でも女でも一途になるとは思うが、どうにもこうにもオレと関わるのは少数だからなぁ。相手のことを良く知らないのに好きになるのは難しいかも。」
「…好みとかは?」
「んー…好きになった人が好みなのかも。曖昧でごめんよ。」
「いや、参考になった。で、トムはテスト勉強したのか?」
「ほどほどに。バッチリとはいいきれないけど、まぁまぁ点は取れると思う。」
そんな話をして教室に入って席に着く。オレは窓際で後ろから3番目の席、タキは右隣。席替えでいい席を引き当てたと思っている。
「よっす、おはようお二人さん。」
「「おはっす、リンダ」」
ドカっとオレの前の席に座るのはリンダこと林田隆彦。テニス部所属のナイスガイ。オレと身長はどっこいどっこいで、髪はサラサラ、爽やかなスポーツマンの顔立ちで何故かモテない。何故だ。理由は大体わかってるけど。
「リンダー、リンダはモテたいか?」
「もちろん、モテたい!…と、言いたいところだが、あの様子を見てると平和な毎日が有り難く思えるよ。」
「「わかるわかる。」」
何故モテないのか、それはこのクラスのある男子高校生が原因である。彼はいつも周りに女の子の壁を作ってしまう、いわゆるハーレムギャルゲー主人公なのだ。彼の名前は山中航輝。義理の妹に毎朝起こしに来る幼なじみ、昔に会ったお嬢様、道端で助けたクールな後輩、階段を踏み外したヤンデレ先輩を助けた等々、小耳にはさむ噂だけでお腹いっぱいである。
「顔だけじゃないとか言ってるが、ただ助けただけとかの男に落ちるのはどうかと。」
「普通はお礼して終わりだよな。ブサイクなら助けたのにも関わらず罵られて終わりだしな。」
「ブサイクってどこがアンダーライン何だろうな。」
「「臭い、汚い、生理的に無理な性格」」
「…タキ、リンダ、誰かそういう人がいるのか?口を揃えて言わなくても…」
オレが苦笑していると、予鈴が鳴る。リンダとタキは前を向き、オレも先生を待っていると、乱暴にガラッと教室のドアが開く。
「ったく、お前のせいで遅刻ギリギリ!」
「だってー。」
話の主役として描かれることの多いハーレムギャルゲー主人公くんと幼なじみちゃんのご登場だ。彼らは毎度毎度ギリギリに登校して来るので慣れた光景である。ちなみにお嬢様は違う学校で、再会したのは中学生の頃だそうな。一応、主人公くんと幼なじみちゃんの容姿を説明しようか。地毛である茶髪を手入れせずにサラサラながし、目はキリリとしているが大きく、細マッチョなイケメンが主人公くん。黒髪をポニーテールに纏め、まつ毛が長く、優しい顔立ちな美少女が幼なじみちゃん。
ギャルゲーをやったことがないから、わからないが、リンダ情報だと女の子のラインナップがもろギャルゲーらしい。なのでこれからもずっとハーレムギャルゲー主人公くんとオレは呼ぶことにする。
(まぁ、オレは平和に過ごせれば彼らがどうなろうと知ったこっちゃないのだけど。)
先生が来て、わちゃわちゃとしていた教室は静かになり、今日の連絡事項や、先生の話を適当にメモをしながらオレは考える。今日も変わらない日常を過ごせるように、と。