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6.死の舞踏会と見える嘘②いざ、出陣よ

アレックス・ブライト→アレク、端正な顔立ちに完璧なエスコートを見せる色男。

フィンバート・グレンドール→フィン、好青年、警察、アレクの知り合い。

セルジュ・ノクス→フィンの相棒、鑑定官、アレクの知り合い。柴犬みたいな男。

エマ・コールマン→ブリジットの一番の友達


 行く前に母に見送られた。その際、母は兄からの贈り物を見て苦虫を噛み潰したような顔をして首を振った。


「あの子はブリジットを目立たせたくないのか目立たせたいのかわからないわ…」


「似合ってませんか?」


 ブリジットは母に見せるように一周まわる。


「すごく似合ってるわ。あなたは肌が白いからニュアンスカラーのドレスがよく似合うのよ。

さらにあの子が特注したアクセサリーが素晴らしい。気品もありながら最高級の魔石も入ってて上品さと力を感じる。ほんと最高よ!!」


「あ、ありがとうございます」


先ほどまでの渋い顔とは打って変わって、大絶賛だった。ブリジットは戸惑う。


「いい?大人しくしなさいよ。誘いに軽々しく応じたり淑女にあるまじき行為はしてはなりませんよ」


母は真剣な顔でブリジットに詰め寄る。



 おお、とんだ問題児あつかい。大丈夫。おとなしくしているから。



 ブリジットは胸を張って自信満々に答えた。


「大丈夫です!目立たずひっそりをモットーにしてます!!」


「かえって心配だわ。もうダメなフラグが立った気がする」


母は残念な子を見る目でブリジットを送り出したのだった。

  


 舞踏会に着いたのは夕方だった。

 会場は大きな屋敷で宮殿のようだった。ブリジットが会場に入った瞬間、エマから声をかけられると同時に抱きつかれた。


「ブリジット、会いたかったわ」


「く、くるし。エマはなして」


「嫌よ。だってブリジット逃げるもの」


「エマ、はなしなさい」


エマのおじが息を弾ませながら忠告した。


「エマ、ブリジット様を見たからと言って走っちゃダメだよ。抱きしめられてブリジット様が迷惑してるのだから」


エマが心外そうに肩をすくめる。


「私とブリジットの仲なんだからいいじゃない?」


「よくない」


 ブリジットがすかさず突っ込みエマのホールドから逃れる。


「よくないね」


 エマのおじがエマにすかさず注意する。


「へ?」

 惚けるエマ。


「淑女ではない行動はダメよ」


「そうだよ。せっかくのセットした髪がくずれちゃうよ」


 エマのおじがうんうんと頷きながらブリジットに同意を示す。


「あっ。そうだ。 ブリジットに見せたくてどう?」


 エマが嬉しそうにブリジットの前でまわって見せる。高く結い上げたクリンクリンの盛り髪に、大きな羽が飾られている。


エマらしいパステルピンクにレースのリボンと刺繍が散らばっていて可愛らしいドレスで、エマによく似合っている。


「ドレスもかわいいしセットした髪もよく似合ってるわ。ふふふ」


 ブリジットはいたずらっ子のように笑う。


「な、なに」


 エマがブリジットに警戒する。


「雨降らなかったわね。少し降ってもよかったのにね」


「もう、ブリジットったらいじわる!」


エマが膨れっ面をするが、すぐにブリジットの姿を見て目を輝かす。


「ブリジット素敵!わたしのような盛り髪じゃなくて結い上げだけどすごくいい。すごく素敵なアクセサリーがアクセントになってる。このアクセサリーはブリジットにピッタリ!!」


「ありがとう」


ブリジットが照れたように、はにかみながら素直にお礼をする。


「ほんと可愛すぎて死にそう…」


エマが胸を抑える。


「大げさよ。あちらにいるのは有名な理髪師の方じゃない?」


 照れたブリジットがエマの注意を他に向けさせる。


「あっ!あれは超有名なアドリアン様だ。ブリジット行こう」


 エマがブリジットの腕を取る。


「私はいいわ」


「いくよー」


 エマがブリジットを引きずって引っ張っていった。


「エマのおじさん、たすけてー」


 ブリジットがエマのおじに助けを求めたが、彼は他の男性と挨拶をしていた。

 ブリジットの目とは絶対合わせなかった。



ちょっとエマが暴走し始めてるわよ。保護者は責任とってよ!!




エマに連れられてブリジットはアドリアンと挨拶を交わす。

「こんにちわ、ブリジット・エブァンスです。高名は聞いております」


「こんにちわ、エマ・コールマンです。素晴らしい理髪師ときいてます。今日はヘルガ様の頭をセットされたんですよね


「ありがとう、アドリアンといいます。お嬢様方に知られているなんて光栄です」


 アドリアンはスラリとした体躯に中性的な顔立ちをしていた。

 髪型は白い髪が耳の上にカールを作り、余った髪を後ろで一つに束ねるスタイルをしていた。

 男性はこのスタイルか自然な地毛を活かしたスタイルが現在は流行っている。


 女性は盛り上げる髪はかつらと地毛をつかいどこまでも盛り上げるのが流行っている。


「おや、ブリジット様は盛り上げてないのですね。今の流行りは盛り上げですよ。結い上げなど無粋です」


アドリアンがブリジットの髪型を見て眉をひそめる。



 でしょうね。理髪師には結い上げなんて許さないものね。私はあんまり盛り髪したくないのよね、重いから。


「アドリアンのような素晴らしい理髪師と出会えるなら盛り髪も考えられるのですがなかなか出会えないので。今日のヘルガ様の髪型は素晴らしいわ」


ブリジットが大げさにアドリアンを褒める。



 実際まだ見てないけどね。多分すごいんだろう。


 アドリアンが気をよくしたのか誇らしげに胸を張る。


「ええ、傑作です」


「ほんと素晴らしいわ。高く盛られた髪に戦艦の模型を載せるなんて勇ましさが現れているわ。それだけでなく各所に羽も入れられてエレガンスだわ」


エマがヘルガの髪型を褒める。ブリジットは内心驚きながらおくびにも出さず頷く。



 えっ!すご。それ本当ならすごいわ。戦艦のるとかほんと!?



「大変でした。

あの髪型を結い上げるのに五時間くらいかかりました。ヘルガ奥様には昼から盛り上げ、ご家族の方は朝から昼で結い上げましたから」


「まあ、バウマン一家のすべてをアドリアンがやられているのね。バウマン家がうらやましいわ。腕のいい理髪師を捕まえておけるなんて」


「ありがとうございます。ご婦人方のファッションの最先端はこのアドリアンが作ってますからね」


「まあ、さすがだわ。私も作ってほしいわ」


「ああ、美しいお嬢様に指名されるのは光栄なんですが、私はバウマン家しかもれないんです」


アドリアンが手を頭にやり大袈裟に嘆く。


「まあ、どうして?」


 エマが口元に扇子を近づけこっそり聞く。


「ヘルガ様が気に入って下さり独占されているんです。理髪師冥利に尽きます。ヘルガ様は素晴らしい方なので」


『理髪師冥利に尽きます』『ヘルガ様は素晴らしい方』

 浮かぶ言葉。



 嘘。


 ブリジットは内心嘆息する。



 やっぱり嘘。彼は今の現状を満足していない。これは、今の立場から逃げたいのかしら。



「まあ、なんてこと。あなたみたいなかたを独占するなんて」


 エマは扇子を使って大袈裟に嘆く。


「仕方ないんです。一刻もはなしたがらなくて。今日もセットした後、舞踏会に私を伴ってくださいましたし。

同じ馬車に乗る名誉までいただきました。ご主人のオットー様とヘルガ様と同席でした」


「まあ、ご主人もアドリアンを気に入っているのね」


「ええ、とても」


アドリアンが微笑む。


「でもあなたを独占するのはいただけないわ。どうにかこっそり私たちの髪をしてくれない?ねえ、ブリジット」


エマが ブリジットに目配せする。


「そうですね」


 ブリジットは曖昧な笑顔で返した。



 えっ。やだ。見るのはいいけど五時間とか無理。それに衣装も合わせるのよ。むりむりむり。


 エマのおじが合流して会話に加わった。


「エマ。わがままを言ってはいけないよ。ただ誰にも分からずこっそり出来ることはあるんじゃないのかな」



 エマのおじさんもそっち派だった!むりむり。髪にそんな時間かけれないわ


「そうですね。私もやって欲しいですが、知り合いを先ほど見かけたので挨拶をしてこないと。

また、お話しましょう。一旦失礼させていただきます」


 ブリジットは輪から外れるのに失礼がないよう カーテシーをしてその場を辞す。その場からそっと離れた。



 危ない危ない。知り合いなんか見かけてないけど離れるに限る!

 これ以上いると五時間拘束される未来が見えるわ。頭に軍艦とか難易度高すぎるオシャレです!!私にはレベルが高すぎるー!!



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