禁忌の書
3人は電車を待ちつつ本を持ってきた鞄に入れて周囲に追ってきている人物がいないか確認をした。3人はこの先のことを考えていなかったが、とりあえずこの本はヒーターが持ち帰ることになった。デーランドはあまりにも図書館の人間が追って来ないことに違和感を覚えつつも今後の経路を入念に確認した。もしつけられているとしたらこのまま直接家に帰るのは危険なので、出来るだけ複雑な遠回りをする方法で帰ることにした。さらに同じ方向にではなく途中で分かれ上手いこと巻く作戦にすることにした。デーランドはヒーターに気を付けるよう忠告し列車には乗らずにその場を去った。アリスとヒーターは途中まで同じ列車に乗り何気ない会話を楽しんだ後アリスを残して列車から降りた。とりあえずヒーターは町中をゆったりと歩きつつ人混みや路地裏をわざと沢山通り見えない追っ手を巻きつつ最近新たに出来た地下鉄というものに乗り込み家の近くの駅まで移動することにした。薄々気が付いていたがベージュのトレンチコートを着て深く帽子を被った男にずっと付きまとわれている。恐らくだが追っ手だろう。とりあえずあの男から逃げることがまず第一にしなければならないことなので地下鉄の中で考えていた。とりあえず家の近くで降りるのは危険だと判断して本来降りるべき駅の3駅前で降りることにした。そんなことをしても無駄だとわかっているが今はとにかくそうするしかないので3駅前で下車するとそこからさらに複雑な経路を歩き出した。15分ほど歩いていると男が見えなくなり巻く事に成功したと思いそのまま帰路についた。そこから2日後再び3人は合流し逃げていた時のことをそれぞれ話し合った。アリスは何とも無かったがデーランドとヒーターは同じ格好の男に追跡されていたらしく、この本を持ち出したことがバレていることが判明した。デーランドはこの本をすぐに戻すことを提案したが、ここで戻したところで追跡が終わることがあるのだろうかとヒーターは言った。アリスもヒーターと同意見でここで戻すと負けたみたいで悔しいと言った。デーランドはそういうことではないと怒ったが、自分もここで返したら負けたみたいな感じになるのは嫌だと言いこのまま逃げ切るという考えに変わった。ヒーターもこの本を持っている間は追われるが、本当にまずくなったら燃やすと覚悟を決め逃亡生活を始めることを宣言した。とりあえずヒーターはこの本の内容を全て書き写すことにし、他の2人もそれぞれの事に専念することにした。さらに5日が経った頃夏休みが終了し3人は高校で再会した。デーランドはチェスをとにかく極めたらしく今国際大会に出れば確実に優勝圏内だと自負していた。アリスは幻の401個目の物語を探していたらしく401個目の物語は存在していたが、エッセル姉が401は締まりが悪いので400にしたという記述を見つけそれを写真に撮り記録したという。ヒーターもノートを5冊も使う長さの内容を全て書き写し手にはタコが3つ出来ていた。その日は通常通り授業があるため、かったるい気分ではあったものの今日一日を何とか頑張ることにした。そのころ国際■■■■協会は書物が盗難されたことを発表し、盗難したとされている3人の高校生に向けて、多数の能力者達を派遣することを決定したが中にはやりすぎという意見も何人か言っていた。しかし書物の隠された使い道のことを踏まえると妥当という判断に至った。まずは彼らに近づく為に転校生として一人の高校生を送り込むことにした。ヒーターは朝礼を外を見ながら聞いていると、何と転校生がこの学校に一名きたという。転校生はかなり珍しいのでヒーターは少し前を向き入ってきた転校生に目を向けた。その転校生はきちっとした身なりで如何にも優等生という雰囲気だった。名前はキングス・一・中目といいどうやら遠い東の国のから来たという。キングスは自分の隣に座り気さくに挨拶をしてきた。その挨拶をそつなく返し一時間目が始まった。キングスは真面目にノートを取っておりずっと前を向きながら集中して授業を聞いていた。そんな彼の態度に自分とは相容れないと思いながらノートに関係のないことをずっと書いていた。4時間目が終わるとキングスが話しかけてきた。どうやら購買の場所がわからないらしくキングスを連れて購買へと向かった。キングスは自分の事について話し始めた。キングスは昔から環境に恵まれず転校を繰り返してはその度に友達を失ってきたという。ヒーターは少し興味は無かったがキングスにはこの学校の事を話し購買へと着いた。今日は珍しく購買に人がおらず多くの食品が大量に残っていた。キングスはパンと紅茶を買いヒーターは日替わり弁当を買った。今日はやけに校内が静かだが、夏休み明けならこういう空気にもなるだろと思いながら外のベンチで食べることにした。キングスはパンを食べながら唐突に■■■■の話題を話し始めた。ヒーターは不思議に思いながらも■■■■のことを話した。キングスの■■■■についての知識はかなり偏ったものではあったが自分の知らないことも一部あったためかなりの■■■■ファンなんだと思い、自分も負けじと■■■■についての知識を語った。その中にはあの本のこともあったがどうせ知らないだろうと思いキングスに話し始めると、途端に顔色を変えて目を大きく開きその知識はどこから手に入れたと問いかけた。ヒーターは咄嗟に昔の本だと言ったがキングスはその知識はとある書物にしか書かれていないといい、右手を強くつかむと目から超圧縮した血の光線のようなものを放射した。ヒーターは間一髪避けてキングスから距離を取った。キングスは再び血の光線を放つと創設者像に当たった。すると創設者像はズルっと音を立てて切断されこの血の光線に当たるとまずいと悟り全速力で逃げることにした。しかし背中を見せるのはまずいと感じキングスを見ながら背後に下がると、もう一発血の光線を放つと明らかに先ほどとは精度が落ちていることに気が付いた。そして同時に血の光線を放つときに目を閉じることもわかり、放った直後に隠れれば逃げ切ることができるのではないかと考え一歩一歩冷静に後ずさりをした。キングスはヒーターに書物を返すように言いヒーターはそれを断った。キングスは胸ポケットから針を出すと左手の人差し指に針を刺すとそこから血がじわっと染み出てきた。そして子供がごっこ遊びでするような銃を撃つモーションをするとそこから血の銃弾が放たれはじめた。ヒーターは避けることに必死で後ずさりするスピードも徐々に下がり始め、キングスとの距離も次第に近付き始めた。ヒーターはもうダメだと思ったその時頭の中から声が聞こえた。その声は男のような声だがどこか母のように安らぐような声でもあった。声はヒーターにあの本を開くように指示をした。しかし本は教室にある鞄の中にあるのでそこまでどうにかして行かないといけない。この血の弾幕を防ぐには血をどうにかして抑えるか目を欺く何かをしなければいけない。少し考えていると足元に水の張ったバケツが置かれておりそれを思い切り投げつけるとキングスに大量の水がかかりびしょ濡れになった。するとキングスは何故か血を出せなくなりその隙を狙って教室の方向へ走っていった。そのころ国際■■■■協会ではキングスについて少し議論が交わされていた。キングスはピュン国が初めて成功した実験体の一人で能力としては自らの中に流れる血液を肉体で圧縮することによって出口から一気に放出するというものなのだが、決定的な弱点が2つあり一つ目は血液量は一般的な人間と変わらないので使いすぎると貧血になり大量出血で死亡するリスクがあること、二つ目は出口部分が濡れると血が上手く圧縮出来ず乾かす必要があることだった。それらを見破られなければ一般人程度に苦戦することはないだろうとピュン国代表は自慢げに話した。その態度に他国の代表はイラついた。ヒーターは教室へ走ると教室内にあった鞄を漁り本を取り出すと、再び声が頭の中で鳴り響いた。その声は本の一ページを破り食べろと言っていた。にわかには信じられなかったが今はその声を信じる以外に選択肢は無く本の一ページを破ると丁度キングスも教室に着き、人目を気にせずに血の弾丸を乱射した。教室内は大パニックになり生徒達の阿鼻叫喚が響き渡った。ヒーターは覚悟を決めて破った一ページを飲み込むと不思議と口の中で溶け身体が熱くなり蹲ってしまった。キングスは蹲ったヒーターに指を向けて弾丸を放とうとしたその時、ヒーターの右手のひらが光りキングスは後ろに下がるとヒーターは力を右手に力を貯めた。すると右手に外骨格のようなものが現れ次第に右手全てを覆いプロテクターのようになった。拳には五角形のこぶが4つ並んでおりこれで殴れば倒せると思いキングスに向かって走り出した。キングスはすかさず血の弾丸を放ったが右手の外骨格で薙ぎ払うと全て壁に飛び散り、キングスのがら空きになった懐に潜り込むように入ると顎に思い切りアッパーを叩き込んだ。キングスは勢い良く飛び上がると顔が天井に突き刺さり身体がぶらぶらと宙吊りになっていた。ヒーターはキングスを引っこ抜き情報を聞き出そうとしたが失神していたためとりあえず医務室に運ぶことにした。12分後キングスは目を覚ましベッドから飛び起きると雑誌を読んでいたヒーターに左手を構えたが、既に指先の傷は塞がってしまっており撃つことが出来なかった。ヒーターは雑誌を置きコーヒーを飲みながらキングスに水の入ったコップを渡した。その行動が意外だったらしく水に疑いを持ったが毒は入れていないと言いキングスは水を飲んだ。キングスは落ち着くと何故助けたかと聞いた。ヒーターはため息をつくと助けたというよりかはあそこはお前の死ぬ場所じゃないと思っただけだと言いキングスに本のことと自分の事を聞き始めた。キングスは本の奪還のために送り込まれた刺客で自分の転校エピソードも全てうそだと話し、本についてはヒーターに起こったことが全ての答えだと言った。ヒーターは本を能力を付与するものなのだと解釈したがキングスはその本は能力を与えるが誰しも与えられる訳ではなく本が認めなければ毒になると忠告を付け加えた。これからどうするのかと聞くと任務に失敗したから殺されるという。ヒーターはそれはあまり気分のいい事ではなかったのでキングスにはこの学校に居続けるようにいった。しかし先ほどの騒ぎを起こしておきながら普通の学生生活は送ることは出来ないといい医務室を後にした。ヒーターは本を持って教室に行き5時間目を受けた。先ほどの騒ぎは無かったことになっており不審に思ったが気にしないようにしていた。キングスはこれからどうなるのだろうか。確かにキングスは任務に失敗した。しかしたった一度の失敗で命を奪うのは割に合わないような気がしてならない。どっちみち大人や巨大な組織が考えていることはわからないと思いながら退屈な数学の吐き気のする数式を解いているふりをしていた。




