高市総裁がもしアベノミクスを継承するのなら、支持者達に注意しておいて欲しい事
1990年代、世界の先進諸国では規制改革・緩和が進められていました。これは簡単に言ってしまえば、規制をなくす事で、企業を自由に活動できるようにし、生産性の向上や新産業の育成を実現するというもので、実際に規制改革・緩和に成功した国々では経済成長が観られました。
ところが、ほとんど規制改革・緩和が進まなかった先進国が存在します。
日本です。
一応断っておくと、規制改革・緩和を進めようとした人達はたくさんいました。しかし、規制改革・緩和を進めると、利権を奪われてしまう為に利権団体によって抵抗され、ほとんど進まなかったのです。
一番分かり易く有名なのは、タクシー業界でしょうか。
日本のタクシーは、物価が高いアメリカよりも料金が高いのですが、それはタクシー業界が規制で守られているからです。そして、その規制の見返りを一部の官僚や政治家達が受け取っているが為に、もし規制を緩和しライドシェアリングを本格的に導入しようとしたりすれば激しい反発を受けるのです。そんな事が日本では様々な分野ではびこっているのですね。
生産性が上がらないのも、新産業が育成されないのも無理はありません。
その結果として、他の先進諸国が経済成長に成功する中、日本は失われた20年、30年と経済停滞が続き、国の借金は莫大に膨らみ続け、円安が起こったり増税をしなくてはならない事態にまで追い込まれてしまっているのです。
その間、なんとか規制改革・緩和をせずに経済成長をさせようとする努力は観られました。観光業に力を入れたり、移民を受け入れてみたり(移民を受け入れれば労働力が増えるので、生産性が上がらなくても、産業を回せるようになるのです)。
しかし、それほど芳しい結果は残せていません。
恐らくですが、利権に固執し続けている人達も、今のままでは日本経済が衰退し続けてしまう事を分かっているのじゃないかと思います。虫歯に罹ってしまった子供は、怖がって歯医者に行きたがらない場合が多いですが、きっとそんな感じなのでしょう。虫歯を放置し続ければ、下手すれば命にかかわるのですがね。
利権団体の大人達は、子供以上に聞き分けがない上に、権力も持っているので非常に厄介です。対抗できる人達は限られています。
さて。
先ほど、規制改革・緩和を進めようとした人達が日本にもいると述べましたが、その中には安倍政権もあります。あの有名なアベノミクスの三本の矢の内の一つが、実は規制改革・緩和だったのです。
規制改革・緩和を行えば、企業が自由に活動できるようになる為、資金需要が生まれます。その資金需要を金融緩和政策で満たすというのは合理的であると言えますが、これは実現しませんでした。先ほど述べたように、規制改革・緩和が利権団体によって妨害されてしまったからです。
資金需要が増えていないのだから、金融緩和を行ってもあまり効果はありません。がしかし、それにもかかわらず、安倍政権は金融緩和政策を強行してしまいました。多くの批判があったのですがね。
時折、経済関連の動画や記事などで、アベノミクスが批判される事がありますが、多くはこの後半部分のみを切り取った形になっています。何故か妨害されてしまった規制改革・緩和には触れないのです。これはフェアではありません。確かに安倍政権にも責任はありますが、最も責任が重いのは、規制改革・緩和を妨害した利権団体でしょう。
これには安倍政権に責任を押し付けたいという意図の他にも、「規制改革・緩和という政策が存在した事を、できる限り隠しておきたい」という意図があるのかもしれません。規制改革・緩和をさせない為には、その存在すら国民に伝えないのが一番ですから。
実際、途中から、安倍政権は規制改革・緩和という言葉をあまり使わなくなっていました。その後に誕生した菅政権では再び声高に主張しましたが、短命で終わっています。まるで潰されてしまったかのように。
それ以外でも、アベノミクスを説明する際に規制改革・緩和という言葉を避ける事例は数多く観られます。例えば、高市さんが自民党総裁に決まった事を受けて作成されただろう日本経済新聞の記事ですが、タイトルが
『アベノミクスとは 金融緩和・積極財政が柱、高市氏も路線継承』
となっています。
アベノミクスは“三本の矢”であるにもかかわらず二つしか載せていません。“規制改革・緩和”が省かれてしまっているのです。記事の詳細を見ると、流石に“民間投資を喚起する成長戦略”として紹介されてありますが、やはり規制改革・緩和の文字はなく、これでは経済に詳しい人以外は何の事だか分かりません。辛うじて「国家戦略特区の創設」という説明の意味をよく考えれば予想できるていどです。
そして、このような状態なので無理もないのかもしれませんが、安倍政権の支持者達でさえ、アベノミクスという経済政策を理解していない人が多いのかもしれないのです。
安倍政権が進めようとした規制改革・緩和が妨害されてしまったと先に述べましたが、この時に安倍政権を応援するコメントを少なくとも僕は見た事がありません。安倍政権が無理のある金融緩和政策を強行していた際に、それを批判する意見に対して嫌がらせのようなコメントならしていましたが。一応断っておきますが、適切な批判はアドバイスであって“攻撃”ではありません。
これでは“安倍政権の助け”にはまったくなっていません。本来ならば、安倍政権の支持者達は、規制改革・緩和を応援するべきだったのです。
2025年10月4日に、自民党総裁が高市さんに決まりました。
公明党の連立離脱などの不安材料はありますが、このまま高市政権が誕生すれば、彼女はアベノミクスを継承するだろうと一般的に言われています。
しかし、彼女がアベノミクスの何を継承するかで、評価は随分と変わって来るでしょう。新聞が報道するように、“金融緩和・積極財政”だったなら、警鐘が必要です。更なる円安を招いてしまいかねませんから。そして、規制改革・緩和を無視するようであれば、彼女を説得する必要があります。それこそが、アベノミクスで最も重要な政策だったのですから。
高市総裁を支持している方は、どうか見誤らないでください。
前述しましたが、日本は30年以上経済が停滞をし続けており、それに莫大な国の借金も加わって、既に通貨価値の下落や増税が行われています。
このままでは、本当に衰退してしまいます。
財務省解体運動など、政治参加に積極的な良い兆候も見られますが、正しい要望をしなくては経済は回復しません。
今度こそ、本来のアベノミクスを進めるようなアプローチをするべきなのです。
因みに、多重派遣や中間流通の削減でも、実質的に生産性は向上します。これも重要なので忘れないでください。