あの日
お疲れ様
長距離トラックの運転席で、シノブは一人、深夜の高速道路を走っていた。遠くに見える街の灯りが、ぼんやりと霞んで見える。ふと、シノブの脳裏に、あの夏の記憶が蘇った。
(俺たちは、あの夏を、もう二度と生きられない)
あれは、アオイと出会って、初めて互いの身体を重ねた夜のことだった。アオイは、シノブの優しい手つきに、微かに震えていた。シノブは、そんなアオイの戸惑いを察しながら、そっとその髪に触れた。アオイの瞳に映る、揺れるキャンドルの光。その光が、二人の心をそっと照らしているようだった。
「…怖い?」
シノブが優しく尋ねると、アオイは静かに首を振った。
「ううん。怖くない。ただ、すごく……嬉しい」
アオイの言葉に、シノブは安堵し、優しく唇を重ねた。それは、互いの存在を深く確かめ合う、愛の行為だった。
互いの肌が触れ合うたび、アオイは、シノブとの間に流れる穏やかで純粋な愛情を再確認した。それは、背徳的な欲望や、歪んだ支配欲とは無縁の、ただ二人の愛だけで満たされた、幸せな時間だった。
やがて、その熱が頂点に達し、二人の魂は、一つになった。快楽の奔流は、すべての不安を洗い流し、後に残ったのは、満たされた安らぎと、互いを深く愛し合う幸福感だけだった。
あの頃の俺たちは、まだ、裏切りや憎しみとは無縁だった。
毎日、アオイの隣にいることが、何よりも幸せだった。他愛もない会話の中に、二人の愛が満ちていた。この幸せな時間が永遠に続くようにと、心から願っていた。
しかし、その幸福な日々は、ヒカルという存在が現れることで、少しずつ、音を立てて崩れていくことになる。
シノブは、ハンドルを握る手に、ぎゅっと力を込めた。あの夏は、もう、永遠に戻らない。それでも、シノブの心には、あの頃の純粋な愛の記憶だけが、深く、深く刻まれていた。
そろそろ終わるよ




