3-1 施錠
3-1 施錠
研修を終えた一同は使節管理部へ向かう。
エキナ館内はエレベーター他、地下4階へのルートが工事を装い閉鎖されていた。普段三弥栄が携わるよりも厳重なセキュリティの中、地下3階から迂回して使節管理部へ進むと、管理部前は観測に使うのか数名の白衣を着た作業者が様々な機材の設置作業をしていた。アルファベットで3PAと書かれた腕章をしている。
12時50分 地下4階 使節管理部前
「天国への階段へようこそ。42回目の使節、ここから担当させて頂きます。私、SS研究所の高坂と申します。ゼロケイと連携してこのミッションに当たっております。三弥栄さん、よろしくお願いします」
このチームの技術責任者である、高坂さんからの挨拶を受け、三弥栄は用意された衣服に着替える。あらゆるウェアラブルデバイスを身体中に付けられる。それぞれバイタル他、三弥栄の状態計測センサーが働いて通信しているようだ。身体状況の計測を終え、身体精神に問題が無いことを確認。まあ、問題があっても放り込まれるのだろう。通話マイクの電源を入れて入室を待つ。
高坂からの説明がある。
「まずは室内へ入って下さい。入室して時間になると天国への階段のガイダンスが起動します。このガイダンスは既にこちらの世界のシステムではありません。内側から鍵をかけるよう指示されるのでその通り鍵をかけると、天国への階段と呼ばれる階段が現れます。登って出口を目指して下さい。」
続けてH2Bが、
「戻って来る場合は施錠から2分かからん。階段が現れて以降は向こうの時間。向こうでどんなに時間が経過してもこちらの時間には加味されん。直後の時間に連続して戻ってくる。施錠後2分経過してバイタルが確認できなくなった場合、扉を開けて身体を取り出し心肺蘇生を行う。ただ、蘇生に成功したものはいない。三弥栄の幸運を祈る」直前でエグい話しをしてきた。
「三弥栄、死ぬ前に死ぬなよ!!」
最後に久慈が哲学的な言葉で三弥栄を送り出す。
恐らく、途中で自殺したらいかんと言うことだろう。
13時00分 地下4階 使節管理室
「特務零号、ケース42 三弥栄文楽、実施します!」
三弥栄は使節管理室に入り内側から鍵を回し扉を施錠した。
三弥栄が使節管理室に入って2分が経過。
各種のバイタルが途絶え、通話呼びかけに応答がない。
ゼロケイ現場責任者である久慈が判断を下す。
「13時02分 任務継続不能確認。身体を保護する」
鍵を使って扉を開錠。室内を確認したが衣類装備を含め三弥栄の身体はそこに無かった。
三弥栄文楽、消息不明。