10-3 スキップ機能
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ハリー堀田はヘビーメタる。
3歳児に生前記憶を聞くように優しく問いかけた。
「ここへ来る前には何していたの?」
「おいらはずっと一人で遊んでいたよ。とても長い間。リセマラするのには、時間が必要なんだ。そこまで行くのには色々やらなきゃだめでさ、それを待ってる間、おいらはひとりぼっちで遊んでなきゃいけないんだ」
「あなたがリセマラをするの?」
「それをするのは、いつも寝ているサトルさ、その時がきたらおいらが起こすんだ。せっかく三弥栄の兄貴が引けたのに、そっから上手く起きれないみたいなんだ」
「そうなんだ…。サトルはあなたと、いつも寝ているサトルがいて、寝ているサトルは上手く起きれなくなっているのね」
「そうだよ、三弥栄の兄貴はさ、おいらの兄貴でさ、とても嬉しかったんだ。ずっとひとりぼっちで遊んでたからさ」
ハリー堀田の尋問が本質を浮かび上がらせつつある。
ハリー堀田はここまでのサトルのポンコツ面とサトルの博士面の証言を統合して答えを導き出す。
ここまで42回の使節はサトルの博士面が深淵から脱出するために行っていた、宇宙リセットマラソンであり、138億年×42回=5796億年を費やして三弥栄でリセマラの終了を迎えた。
そして5796億年を過ごす強い苦痛と孤独で精神が壊れないよう、サトルは自分を無意識のうちに切り離した結果、サトルのポンコツ面を残して、サトルの博士面はその大半を眠って過ごしていた。
と言うことは、サトルの深淵脱出は観測による真空消滅の発生が込みとなる。そして、実際に1つの世界の可能性は真空崩壊して、それを取り繕う可能性を残した世界でも真空消滅が発生してしまっている。
「全部こいつのせいだ」
ハリー堀田は尋問の結果、真実に辿り着いた。
サトルに名前を付けた時、最初からハリー堀田はサトルの「ポンコツ」を見抜いていた結果になる。皮肉を挽肉にしたようなオチにハリー堀田は苦笑いする。
ハリー堀田が尋問を見ていた観定団メンバーへこの考察結果をフィードバックする。
虎太郎も龍美も、ハリー堀田のそれが正論であることに異議を持たないが、さらに、「サトルにはそういうつもりがないのが問題である」と意見した。
そう、サトルには悪気がない。閉じ込められたと言う深淵がどんな場所かは分からないが、5000億年以上の孤独ともなれば地獄と言って差し支えない。根がポンコツなのかもしれないが、そこから逃げようとするのは悪気ではない。宇宙消滅させて自分は深淵を脱出したとしても、足掻くそれを否定しようがない。
今、誰が何をしたせいでこうなっているのか分かった。
サトルがいて、虎太郎と龍美がある。三弥栄が呼ばれるまで繰り返され、宇宙を一つ消滅させてまた消滅する。
会議は大きく方向性が変わったが、たどり着かなくてはならない1つの結果を手に入れた。




