10-1 観定団
10-1 観定団
「サトルのポンコツ面」が邪魔をする。間違いなく、鍵となる情報を持っている彼の気まぐれ、3分間の「サトルの博士面」に合わせて核となる情報を聞き出さなくてはならない。
誰が何をどう聞くか、戦略を立てる必要がある。軸となるのは「ハリー堀田」。
弁護士である彼女に「サトルの博士面」への尋問戦略を担当してもらう。彼女は「やる気」だ。
ぬいぐるみの姿形をした生体(ν臓器)に宿る意識に対して尋問して証言を得る。これまでの状況やサトルの証言から、悠久以上の長い年月をかけて断片化されたサトルの博士面が持つ情報を、3分間の内に、圧縮した言語の結晶に生成して証言へと再構成しなければならない。ハリー堀田は、そうやって状況を重くメタる「ヘビーメタる」
「ヘビーメタる」とは、ハリー堀田の技術。法廷での尋問、反対尋問時、彼女の中ではこう定義づけして、常に事案人物を「重く」「深く」「激しく」メタる。そうやって、事象の本質へ辿り着いてきた。ハリー堀田は誰にもそう言ってないが、自身の内心の動きを、なんか「必殺技」っぽい感じにしたいと言う思いで、こう呼び、アイデンティティとしている。
そうして、研究室で三弥栄が撮って測った病室での「サトルの博士面」の様子を見ながら、虎太郎、龍美、みちゅえる、三弥栄、サトルは、対サトル尋問について、ハリー堀田と協議する。このメンバーの集まりは、「観測による真空消滅の発生と多層超現象の確認に伴う適切な運用方法及び回避術の策定」と命名され、長いので頭文字と最後の文字から「観定団」と呼ぶに至った。
第一回 観定団 会議
議題1:みちゅえるの「同じところから来た」について
議題2:サトルのポンコツ面とサトルの博士面について
議題3:その他、現在わかっている「ν臓器」の機能
議題4:サトルの博士面への尋問について
三弥栄はカメラを回し録画を開始。
ハリー堀田が会議を進行して仕切る。
「議題に沿ってまずは、みちゅえる。」
「Yes I am!!」
「彼が真空消滅と同じところから来たってどういうこと?」
「ズバリ、私が見たままを言うわよ、真空消滅があっち側を崩壊させたと同時に、あっち側を超えて来た私と同じ状態のおっさんが、そのぬいぐるみみたいなのに吸い込まれて行っとったわ」
「ん?つまり、真空消滅した側からサトル博士がν臓器に飛び込んできたってこと?」
「そう見えたので、真空消滅と同じところから来たって言ったわ」
「そういうことなのね、虎太郎博士、龍美、このみちゅえるの話から何かしら考察できることはある?」
「真空消滅に乗っかってきたのかも」龍美が発言する。
「乗っかったかは不明だが、真空消滅の発動と共に博士の意識も観測点から解放されたと見て良さそうだ」虎太郎が考えを補足する。
「だとしたら、私と同じように、今、こちらに向かってるんだか、どっか漂っているサトルの意識がも1つありそうね」みちゅえるの直感がするどい。
「半分違うな、ぬいぐるみに吸い込まれたが、真空消滅側から来た訳じゃない」
サトルの博士面が始まっていた。




