8-2 尻に敷かれて
8-2 尻に敷かれて
三弥栄は公然わいせつ罪(全裸)と器物損壊罪(カーテン引きちぎり)の容疑で逮捕され警察で取り調べを受けている。
虎太郎の言う弁護士はまだ来ない。
警備の仕事柄、割とこの辺(逮捕された時)の対応は詳しかったりするので、虎太郎に言われたとおり黙秘権を使用する。
目をつぶりながら取り調べ官をガン無視する。
ただ、なんとなく話したい。と言うか語りたい。ここまでの道程を。どうしてここにいるのかを。
そんなこと言い始めたら、警察は間違いなく「混乱」する。そもそも三弥栄にはこちらの世界に記録がない。何を言っても、それを調べようとしても、三弥栄はこちらの世界の行政上、存在しない。所属がない。
三弥栄は早く言いたいけど言えないもどかしさに「いやだなぁ、いやだなぁ、いやだなぁ、早く弁護士こないかなぁ、こないかなぁ、こないかなぁ」と目をつぶりながら考えていると、急に「重さ」を感じた。
目を開けると割と大きめの尻に乗っかられている。
「龍美のケツ」であった。
「く、苦しい」と呻く。
「ごめん、大丈夫?」と言って龍美が三弥栄をひょいと持ち上げて机の上に置く。
目を開けた三弥栄は見知らぬ部屋にいて、そこに虎太郎と龍美がいる。混乱して「虎太郎博士、なんでここにいるのですか?」と聞く。
虎太郎は尻に潰された影響で異常が発生したと察し、「故障かな?」と言って三弥栄を摘んで持ち上げてクルクルと回し、三弥栄全体をチェックする。
三弥栄は今、ぬいぐるみになっている。
三弥栄は虎太郎が気がつくより先、自分がぬいぐるみ化したことに気が付いた。このまま暫くバレない方が都合よいかも知れない。そう閃くと同時に口を開く。
「早く兄貴に弁護士付けてやってくれよ」
さっき、収監されてもいない三弥栄を脱獄させると言って息巻いてたやつが言ったとは思えないくらい具体的なお願いをした。
虎太郎が首を傾げる。
「思春期かな?声変わりした?」
声が三弥栄なのである。
「そんなことないよ、はやく、はやく兄貴に弁護士を付けてやっておくれよ」
三弥栄は裏声を使用。とても不自然である。
虎太郎はぬいぐるみに鋭い視線をぶつける。
三弥栄はいたたまれなくなって「博士ごめん、三弥栄です。なんか気がついたらこうなってた」と警察での取り調べより先に虎太郎へ自白する。




