7-1 「The book」
7-1 「The book」
みちゅえるが半霊半物のまま残されたのは後回しで良さそうだ。そうなっちまったものはしょうがない。
とりあえず己。
目の前の身体に戻らなくてはならないのだが、半霊半物状態から身体に戻るのに、H2BはAEDの出力10倍電気ショックを使用していた。状況的にこの方法は行えない。別の方法を取らねばならないのだが、電気ショックのようなエネルギーを何処からどうやって拵えればよいのか。
みちゅえるに聞くしかない。
みちゅえるのことは置いといて、みちゅえるに聞く。
「戻れなくなったところ申し訳ないんだけど、俺はこれ、どうやって身体に戻ればよいの?」
みちゅえるは自分の置かれている状況を意に介さず、「えっ?よくわかんない。踊るの止めたら、すぅ~ってなって、シュッて戻るよ。ただいまって感じ」と悲壮感なく、普通に感覚的な説明をする。この場面では、これを参考にせざるを得ない。
「すぅ~ってしてシュッ、すぅ~ってしてシュッ」
三弥栄は帰宅してただいまをするイメージを持ちながら、
身体で呼吸するよう意識する。繋げるイメージ、帰るイメージ。意識を身体に浸透させるイメージ。
色々なイメージを持ちながら身体に近づき触れると、そのまますぅ~ってなってシュッと身体に戻った。
案ずるより産むが易し。
戻ろうとして戻れば戻れた。
以前よりもお腹周りがスッキリしている。腰にぬいぐるみが抱きついて、むにゃむにゃと寝息を立てている。前から見ると腰周り、ちょうど三弥栄の股間を隠して、豪華な毛糸のパンツを履いているようにも見える。
これに乗じて次は本を拾い、目標の場所に置いて指定の部屋に隠れる。これでほぼかたがつく。
三弥栄は本を拾おうと改めて本を見る。
拾う本が「個人の性質に特化して専門的に描かれ丁寧に製本された大人(虎太郎)向けの本」であることに気が付く。
「こんなことで!!正気か虎太郎…」
三弥栄は、消滅した世界の別の可能性を創るために虎太郎の編み出したこの「妙案」(本)に「こいつはくだらない、余りにもくだらないけど、最高じゃないか!!」と心から感嘆した。この本「The book」が誰も傷つけずに可能性を創る。
三弥栄は、うんこ踏まれないように案内していたら、別世界へ招かれ遣わされ、辿り着いた先の消滅間際に、その世界の過去へと遡って「この本」をここに置きに来たのだ。
今、自分の行っている事柄が、この一見ふざけたように見える状況が、世界の命運を握っていることを三弥栄は自覚した。
そうして、「The book」を拾って指定の場所へ置き、みちゅえるに「虎太郎が近づいたら教えて」と見張りをお願いして、三弥栄は指示された部屋へそそくさと入って行った。




