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5-5 蛹

5-5 蛹


「ティロリ、ティロリ」

何かの出来上がりを知らせるような音が鳴った。

球体が90度転がり、三弥栄の頭は横を向いた。中から圧力で三弥栄を捻り出す。

頭の出た部分を出口として排出するようだ。球体は伸縮を繰り返して三弥栄を押し出しながら「メリメリ」と軋む。首から下はピンク色の膜のような薄いコーティングが施されているようだ。肩が外へ出ると「ブリブリブリ」と音を立てて勢いで全身が排出した。湯気立っている。特に三弥栄に掛かる負荷は無かった。


頭以外、全身をコーティングされた状態となった三弥栄。

「蛹の接着完了しました」

龍美が虎太郎に報告する。

「身体のラインが強調されてるから服着てもらおう」

虎太郎に着衣を促された三弥栄は、形がクッキリしているのに気が付き、慌てて病院服を着て尋ねる。「これはどう言う状態なんですか?」

龍美「ダンスの前に身体をコーティングして蛹のような状態になって頂きました。」

三弥栄「コーティング?」

龍美「2層になっています。ダンスで意識を過去の座標へ送った後、羽化するようにして、蛹から物資と身体を引きずり出します。」

三弥栄「引きずり出すとは?」

龍美「この、お腹のこの少し四角くでっぱった部分に物資が入ってます。」そう言って龍美が三弥栄の腹を指で示す。確かに四次元ポケットのような出っ張りがある。

「ここが時空間の裂け目となります。ちょっとだけ歪んで裂けかけてるはずなので、それを三弥栄さんの意識で外からこじ開けて出っ張りの中の物を取り出してもらいます。これを取り出すことで蛹二層目のご自身の身体に届きます。さらにこじ開けると、そこから身体が引きずり出される感じです。するっと行くはずです。」

三弥栄「また無理を仰る。ダンスして意識飛ばして身体を引き摺り出すってことですか?」

龍美「その通り。ダンスして意識飛ばして身体を引きずり出すってことです。ティッシュペーパーの最初の1枚を取り出す感じで。歪み裂け目は三弥栄さんの意識でしか見つけて触れられないんです。」

「あっ、あれだ」三弥栄は1度似たような状態を見ている。H2Bの半霊半物。あの状態。イメージはできる。

虎太郎「転移に成功したら、取り出した物をここに置いて欲しいのです。この時空間座標を私は通ります。それを見た私は数分、必ず足を止めるでしょう。これによって私が研究所へ行くタイミングがズレて観測はされず真空消滅は発生しなくなります。」


三弥栄「少しほっとしました。」


虎太郎「なにか不安でしたか?」


三弥栄「ええ、自分の知ってる映画や漫画の過去の改変って物騒なのが多くて。過去を変えるのに原因の人物や関係者を殺そうとしてました。物を置くだけってのは良いことだ。博士の母親かご親戚を殺してきてとか言われるのかと思いました。」


虎太郎「繰り返しになりますが、万物事象は重なり合いです。生かすことで誰かが死に、殺すことで誰かが生きます。登場人物が変わる。それは世界の消滅に等しいのです。私は私の家族に出会えなくなるような世界の分岐を望んでいない。少しズラせば良いのです。子を持つ親は子と会えなくなる世界を決して認めません。私は3年分の命の繋がりを未確定にしようとしています。この罪を負わなくてはならないのです。決して許されることではありません。誰も殺さなくても命の流れは変わる。三弥栄さんを巻き込んでいることも、龍美に会えなくなる世界を望まないのも、全て私の罪です。自己都合の改変でしかない。改めて謝罪しなければならない。申し訳ないです」

虎太郎は頭を下げる。


三弥栄は口を噤む。


そう、確かに命の流れが変わる。これはどうしようもない。元も子もない、本当に元も子もないことで、それでも足掻くのが生命だと三弥栄は安易な気持ちの自身を省みて、いたたまれなさを感じていた。

「博士、こちらこそ申し訳ない。自分のことはいいんです、望んでやっています。気にしないで下さい」こう言うのが精一杯であった。


みちゅえるは踊り続けている。

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