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4-5 三弥栄 文楽(みやさか ぶんがく)

4-5 三弥栄みやさか 文楽ぶんがく


三弥栄 文楽は贖罪を望む。上手く行かない彼の人生は、彼自身、自分の所為と理解していた。どうにか体裁を整えようと、いつも偽り嘘をつく。「やる」として、やらない。そもそもやろうとしていない。都合があれば取り繕い、ちょっとした仕組みをちょろまかして誤魔化すことができる、変な愛嬌を持っていた。そうやって生まれ持った関係も、築いてきた関係も見捨ててきた。そして、それを責められると思い怯えている。そうやって怯える自分への嫌気が酷かった。迷惑をかけて来た家族、友人、かつての恋人。存在が詐欺みたいな自分。酷い生き方だと思いながら距離を取った結果、見捨てられて独りを抱えた。彼と世界の病状。


そして使節に選ばれた。


これに巻き込まれれば、このどうしょうもない人生を償える。もう誰かに怯えずに済む。自分の生命を使ってどこかが上手く行くのなら赦して欲しい。これなら自分自身を赦せる。三弥栄は自分自身を赦せるように成りたくて覚悟した。この病気から救われたかった。


「ありがとう。悪くない」

天国への階段、今際の祈りは最弱の意味を反転させた。


死を受け入れて覚悟して辿り着いた先、成したと思った結末と違う状況と成り、助かったのかと思いきや再び必要となった同様の覚悟。


龍美の示したプランAを前に、得意分野ですなんて調子よく軽口愛嬌ふりまいておきながら、自分を選ばれし者として、世界の消滅を阻止する算段を進めるのは無理があるだろと三弥栄は感じていた。


三弥栄の病状。


せっかく反転した最弱がまた顔を覗かせる。

心はそうやって常に「ゆらぐ」


そうした会話の中、

「あと、うんこ踏んでませんけどね」

そう言って三弥栄を見つめて覗く龍美の瞳が、三弥栄の目の奥を伝って、計器の脈と血圧を少し上げた。


「自分がどうにかしよう」

龍美の言葉と瞳に再び「触れられ」三弥栄は覚悟した。


「遅くなりました。こんにちは。智川 虎太郎でごぜえます」

博士が部屋に入って来た。


「初めまして、智川虎太郎でごぜます。研究所で研究してます。この度はありがとうごぜます」

虎太郎は三弥栄との挨拶を済ませて龍美に確認する。

「どこまで話したの?」

龍美がこれまでの話を掻い摘んで虎太郎に引き継ぐ。

「そうかぁ、そしたらもうちょいだね」

博士は独特の間を持っていらっしゃる。

間が「優しい」


「三弥栄君には、時間を遡ってもらうんだけど、ダンスは得意?」


三弥栄はダンスを踊れない。

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