白の魔女と黒の魔女
昔々、白の魔女と黒の魔女がおりました。
白の魔女は町の中で困っている人々を助け、
黒の魔女は森の中で困っている動物たちを助けていました。
ある日のことです。
黒の魔女が住む森に人間たちがやってきました。
人間たちの間では動物狩りが大人気。
逃げ惑う動物たちを鉄砲で撃ち殺した数で競っていました。
その日も黒の魔女のところへ沢山の動物たちが助けを求めにやってきました。
「魔女さん、お願い、助けてください!」
「うちの子が、うちの子が殺されたんです!」
「わしは妻を殺されたぞ」
「あたしは夫を殺されたわ!」
黒の魔女は言いました。
「わかりました。彼らがもう二度とこの森に来ないよう、注意しましょう」
二人の人間の男は森の中の木陰で一休みしていました。
「やぁやぁ。今日も大量だね」
「そうだね、しかし私の方が撃ち殺した数は多いよ」
「いやいや、勝負はまだまだこれからですぞ」
「はっはっは。それはどうですかな。あなたが一匹殺すうちに、私は二匹撃ち殺せますから」
「負けませんぞ」
「私だって」
そこへ、黒の魔女があらわれました。
二人の男は大慌て。
「く、黒の魔女だ!」
「お、俺たちに何の用だ!」
黒の魔女は答えました。
「ここはあなたたちの好き勝手にしていい場所ではありません。ここは森の動物たちの住みかです。あなた方にはあなた方の町があるでしょう? 早々に立ち去りなさい」
けれど男たちはその言葉が気に入りませんでした。
「何を言っている! ここら一帯は俺たちの土地だ!」
「そうだそうだ! 俺たちの土地で俺たちが何をしようが、俺たちの勝手だ!」
そう言って黒の魔女に向かって鉄砲を打ち始めたのです。
パンパンパン!
鉄砲が打たれるたび、黒の魔女は逃げ惑いました。
このままでは殺されてしまいます。
仕方がなく黒の魔女は呪文を唱えました。
すると空中に火の玉が浮かび、男たちに襲い掛かります!
「う、うわあぁ!」
「ひ、ひがあぁあぁ!」
火の玉は男たちの服やズボンを見事に焼き切ってしまいました。
「ひ、ひいぃ! 逃げろ!」
「ひええええ!」
男たちは一目散に逃げていきます。
「ありがとう、魔女さん」
「これできっと、人間たちは二度と来ないよね!」
動物たちは黒の魔女にお礼を言いました。
町に戻った男たちは、すぐさま白の魔女の家を訪れました。
「た、助けてくれぇ!」
「こ、殺される!」
白の魔女は男たちの姿を見て驚きの声を上げます。
「まぁ! どうしたのですか、真っ黒焦げじゃありませんか! とにかく傷を治しましょう!」
「とにかく恐ろしかった」
「あれは俺たちを殺す気だった」
二人の男は町中の人々に言ってまわります。
「黒の魔女は俺たちを皆殺しにしようとしているんだ!」
「今のうちに始末しておかないと、俺たちは一人残らず殺されちまうぞ!」
人間たちは白の魔女の家に皆して押し寄せてきました。
「白の魔女さん、どうか助けてください!」
「このままでは我々の町が襲われてしまいます!」
「今のうちにどうにかしてしまわなければ!」
「私たちの未来の為に!」
白の魔女は言いました。
「解りました。そのような悪事を放ってはおけません。しかし私の力だけでは黒の魔女には勝てません。皆で力を合わせて、黒の魔女を倒しましょう!」
次の日、白の魔女と人間たちは手に手に鉄砲や弓、槍やナイフ、包丁を持って森の中に攻め込みました。
「黒の魔女はどこだ!」
「逃げても無駄だぞ!」
「さっさと出て来い!」
「ぶっ殺してやる!」
人間たちは立ち塞がる木々は切り倒し、邪魔をする動物たちを一匹残らず殺していきました。
やがて白の魔女と人間たちは開けた場所に出ました。
そこにはボロボロの家が一軒建っていて、その周りを動物たちが囲んでいます。
「ここだ!」
「きっとここに黒の魔女がいるんだ!」
「出て来い、黒の魔女!」
「俺たちがぶっ殺してやる!」
やがて、きぃっという音とともに扉が開いて、中から黒の魔女が姿を現しました。
「あなたが黒の魔女ね」
白の魔女が聞くと、黒の魔女は頷きました。
「あなたが白の魔女ね」
黒の魔女が聞くと、白の魔女は頷きました。
次の瞬間、二人の体は宙に浮いていました。
激しい魔術の戦いが始まったのです。
地上では動物たちと人間たちの戦いが始まります。
けれど武器を手にした人間たちに、動物たちはかないません。
やがて地上には沢山の動物の死体が転がり、人間たちは勝利の叫びをあげました。
空中でも白の魔女の攻撃が黒の魔女を地上に叩きつけました。
「どうして、あなた方はこんな酷いことをするのですか!」
黒の魔女は涙ながらに訴えました。
すると、先日黒の魔女が追い返した二人の男が言いました。
「そんなもの、お前が俺たちを殺そうとしたからに決まっているだろう!」
「お前の悪事は決して許されるものではない! 覚悟しろ!」
人間たちは一斉に黒の魔女を襲いました。
黒の魔女は体中を突き刺され、沢山の血を流して死にました。
人間たちは白の魔女に感謝しました。
「ありがとう、白の魔女!」
「ありがとう、ありがとう!」
そうしてその夜は盛大なパーティーが開かれました。
大きな火を焚き、その火で殺した動物たちの肉を焼いて食べました。
とてもとても賑やかで楽しいパーティーでした。
そしてその最後に、人間たちは残った火で黒の魔女の死体を炭になるまで焼き尽くしてしまいました。
その後、人間たちは森を焼き払い、町を広げました。
生き残った森の動物の一部は食べる為の家畜になりました。
町が広がると、その分人間たちの数も増えました。
人間たちの数が増えると、町が発展していきました。
そうして人間たちは、いつまでもいつまでも、幸せに暮らしましたとさ……
おしまい。