22.時期焦燥
記録 水無月二十五日 午前11:47
『龍田ホール襲撃事件』並びに『ライトフィールド家窃盗事件』、『雁田家窃盗事件』、『和雷家襲撃事件』、『ジェフリー・ゲイシー殺害事件』実行犯通称『オッドマウス』と同月二十四日に国立旧都心病院内監視カメラにて確認された人物の魔力残渣の98%の一致を確認。
又、同残渣と神河紅葉の魔力の86%の一致を確認。個人特定の数値としては低いものの基準値を遥かに上回っているため同人物を重要参考人とする。
重要参考人を以下、乙と呼称する。
同日 午後15:13
乙、高校間での簡易的な事情聴取開始
以下、実際に聴取を行った教師と乙のやり取りを記載する。
――録音を再生します
張り詰めた空気の中、生徒指導室内に長方形に並べられた長机に紅葉の担任教師笹木勝、顧問教師猿川楽、生徒指導部長竹内颯、教頭中谷葵、校長大沼茂義が座り乙を囲む。
紅葉は呼び出しに困惑しつつ入室した後、以上の人物が囲む長机の席に着くよう促され軽度の混乱状態に陥っている。
「あの、これ今どういう状況…」
紅葉の一度目の質問は竹内の返答により押し黙らさられる。
はっきりと言おう。結果はただストレスを溜めただけでよくこんな奴が生徒指導とかやってるなとしか思えなかった。
「トボけるなよ!お前、自分がやった事の重大さがまだ理解出来てないのか!これじゃお前の親の程度も…」
(理解も何も、訳わかんねーっての…大人なら要件は短く丁寧に説明してから話進めろよ。あと口くせーな、歯磨けよ)
毒吐きは心の中で。但し顔には出ていたかも知れない。何せ家族を侮辱しようとしたから。怒り心頭で馬面の教師を睨みつける。
机を叩きつけ叫ぶ竹内をすかさず猿川も睨みつける。その顔には口にせずとも分かる怒りが滲んでいる。発する一音一音全て余さずに全開の圧を乗せて圧倒してやる。
「竹内先生、貴方こそこの件の重大さを理解して下さい。やってるのはやれスカートが短いだの、やれ髪が長いだのといったものとはレベルが違う。これ以降軽率な発言を繰り返したようであれば即時退室してもらいます」
一連の件が終わり大沼が一つゴホンと喉を鳴らす。
これだけで誰もが大沼の方へと視線を向ける。これからは校長が場を収め、事を進めるターンになると感覚だけで理解する。
「では…神河紅葉くん。君は今どうしてここに呼ばれたかその理由に心当たりはあるかな?無いようであればそれで結構。こちらから説明しよう」
物腰は柔らかく、雰囲気も落ち着いて如何にも『近所にいる優しいおじいちゃん』というオーラを纏った白髪の柔らかさそうな身体をした大沼は一切その場を壊すこともせず、それでいて紅葉に威圧感を与えないよう問う。じゃじゃ馬とは訳が違うね、訳が。
「ないです。全然。全く。あるとしたらド深夜に川沿いに走りに行ったくらいです。それ以外に怒られるようなことは全くありません。あ、授業中寝ちゃってることスか?あれそんな罪深いんスか?!」
本来であれば全くもって注意するつもりのなかったことまでペラペラと喋り出したことにより笹木が溜め息混じりに愚痴をこぼす。馬面は唾を撒き散らしながら先程とはまた違う箇所で怒鳴り声を挙げ、全員の顔を顰めさせる。しかし、大沼と猿川は異なるところに目を光らせた。
(深夜に走りに…?天峯が言ってた時間帯とは一致するけど、川沿いとなると病院とは反対側。この状態で嘘吐けるほど神河の面の皮は厚くはないし機転も効かないだろうが…どっちだ?)
「走りに行って帰ってきた時間は覚えているか?それと、その時の神河の様子を見てた人はいるか?」
状況の説明がないじゃねーか、と物言いたげな顔を作り言葉にせずに訴えられる。彼が思っているより弟子は厚顔無恥であったかも知れないと、評価を改めておく。
念のため再度確認する。
「覚えてるか?」
返答は思っていたよりも単純でいて明快、それでいて複雑。
覚えている、それもはっきりと。どこら辺を走ったか、どこまで行ったか。何時家を出たか、何時帰ってきたのか。誰がいた、誰を見た。全部、全部覚えていた。
「家を出たのは一時くらいで家の近くの川沿いを走ってここまで…そんでついでに神社参りもして家に帰ったのは二時くらい。すれ違った人は知らないけど、家に帰った時にカップ麺食ってる父さんを見つけたくらいです。いや、マジでこれでオレ呼び出されたんスか?!ならもう二度としないんで許してくれません?」
神社、学校に来てから参りに行ったということはここからそう遠くない龍神神社の分社のことだろう。そこであれば紅葉の足でも十分に一時から二時の間に往復しても余裕が出来る距離だろう。それこそ、そのまた近くの病院に寄って帰るくらいの。
…病院に…寄って帰る…くら…い…
「神河!お前!病院には行ったか?!」
「はい?!」
「行ったぁ?!これじゃ証拠十分じゃんか!何しでかしてんだお前は?!」
「いや急にどうしたんすか!病院には行ってないし何がどうしてランニングついでにド深夜の病院に寄らなきゃいけないんスか?!てゆーか証拠ってなに!さっきからオレまったく着いて行けてねーんだけど!もう帰らせてくれよマジで!」
慌てに慌てた様子で、周りなんてものに気をかけることもしない、というよりそんなことも出来ずに紅葉の肩を揺する猿川の揺れた瞳孔が紅葉を映す。もはや聞き返しの『はい』と返事の『はい』の聞き分けすら叶わず頭を抱え出してしまう。
かえって紅葉はというと遂に不満が爆発したか雑な敬語すらも外れてぶち撒ける。それもそうだろう。何も知らないまま留置所に連れてこられて満足気に待っていられるバカでもないのだから。不満が溜まるのは必然、であればそれが吐き出されるのも必然だ。
その酷い有様に耐えかねてか、それともただ頃合いだと思ったからか中谷が淡々と現在の状況に至ったまでの道筋を辿り出す。
「すまなかったね、神河くん。私達は君がとある事件に深く関わっているのではないかという警察の連絡を受け、その事について君の口からも聞いておきたかったからこの場を設けさせてもらったんだ」
説明はまだ終わらない。紅葉は目だけを中谷の音に向ける。
「そして、その事件が起きたのは昨夜未明、ここから最も近い病院でね。警察の話では監視カメラに君そっくりの人物が映っていたらしく、それで疑われているらしいようでね、これを確認しておきたかったんだ。説明が遅くてすまなかったね」
一先ずは状況は理解した。全然理解できてはいないがとりあえず理解したのだ、理解できている、これが今の自分の頭の限界だった。
だが上手く結びつかない。
行ってないし、行く訳がないのだ。
一応は自分もお世話になった場所で、メインゲートの施錠時刻も消灯時刻だって覚えてる。そんな時間に行ったとて帰りが遅くなるだけだと知っている。
それが「監視カメラに映ってた」?言わんとしてることは分かるが意味が分からない。
「シャワー浴びる時間もあるんですから二時までには帰るって決めてるんスよ。あそこまで行ってたらオレの寝る時間がなくなるじゃないスか…オレ高校生っスよ?授業寝ちゃうじゃないスか」
さっき授業寝たとか言ってたのはどこの紅葉だったか、皆の視線が一点に集中する。
「まぁ、神河の言い分はよく分かった。取り敢えずお前は何もやってないんだな?それさえ分かったら俺たちとしての方針も決まるから。オレたちは神河を守るために動くから。お前も何か言われたらさっきの説明をするように。で、いいですか?皆さん」
笹木により端的にまとめられ皆が落ち着き、首を縦に振る。異を唱える者も唱えようとする者もいなかった。それをするにはとてもじゃないが証拠もなければ推測で事を測れる程の理解が足りていなかった。
「ええ私共としてもそれが最善であると思いますので。ただし、神河くんの言い分も分かるがまだ嫌疑が晴れてはいないことは努努忘れず、言動に注意して下さいね」
大沼の一声で状況は終わり、皆が部屋からそれぞれの居場所に戻らんとせっせと動き出す。紅葉は呆気に取られてしばらく放心して座ったままだった。
――再生を停止します
記録 同日 午前9:00
ドラゴニア所司代直属警察庁本部にて『オッドマウス信念対策本部』設立と同時に第一回対策本部会議開始。
B.M.C.に一切の介入を許さず、警察として様々な位に就く者にイクサビト認定を受けた者、軍部高官から新卒までを一堂に会し樹立。
各々の理念や信念を一切曲げる事のないよう会議が開かれた。
同日 午後15:48
対策本部会議に出席していた天峯界斗警部補、田白錠巡査長の除籍、今後の対策方針決議の裁定が行われる。
又、以上二名が今後対策本部に敵対行為を取った場合謹慎処分、又は警察庁からの除籍を滞りなく進めることとし、拘束することも余儀なしとする決議が採られる。
後にこの対策本部は『最悪の国家犯罪集団』の名を残すことになる―
携帯のコーリング音とバイブレーション機能による振動音に皆の視線が集まった。たった今から各々の仕事に戻ろうとしていたところにタイミング良くソレは鳴った。
画面上には『界斗』とだけ表記され、応答するか否かのチェックマークとバツ印が表示される。
「あいつ、なんだってこんな時に…」
ぶつくさ文句を垂れながらも猿川は携帯を耳に当て応じる。次の瞬間耳に入ってきたのは鼓膜が破れる勢いの大声で、それは猿川の右耳から左耳を抜け部屋中に響き渡る。
「楽!ニュース!ニュース見てるか!はぁ?!見てない?!なら今すぐつけろ!なんだっていい、ネットニュースでも何でもいいからとにかくニュース見ろ!」
「はいもしもし」すらも言わせてもらえず、勢いに呑まれ何も言えず割れそうになる耳を取り敢えず押さえて、一先ずは言われた通りに動く。
彼とはもう十年以上の付き合いがある。大抵、ふざけている時の彼が人の鼓膜と脳にダメージを与える程の声を出さないことはよく知っているからこそ、信じて動くことにした。
「校長。この部屋のテレビつけてさせてもらっても?」
「ええ、構いませんよ」
比喩ではなくどうやら事実としてこの部屋中に受話器越しの彼の声は響いていたらしくあっさりと許しを得て、手の平で指し示された方にリモコンを取りに行き、反応の悪いテレビをつけることに躍起になる。
やっとの思いでついたと思えば今度はチャンネルをニュース番組に合わせる。この時間であれば国営の番組が最も早く情報を届けているはずだとそちらへ。
それは様々な高校職員の皆皆様方が
「は?」
友人の帰りを待つ友人たちが
「え?」
相も変わらず校庭の一角で練習に励む子供たちが
「はあ?」
家で我が子の帰りを待ち仕事を続ける夫婦が
「は?」
日の下でおしどり並んで歩く老夫婦は…関係ないが、とにかく国民の全員が口を開いて驚愕するものだった。
何なら張本人が一番の声量を出していた。
「はあああああああああああああああああ???!!!」
『怪盗オッドマウス、正体は十五歳の高校生?』
こんな見出しと共に被疑者―神河紅葉の顔写真が、目元は隠されてはいるが堂々と貼り付けられ、どこの誰とも知らない白髪染が剥がれかけた小太りの中年男性と意地の悪そうな顔をした新卒のナレーターが好きなように言い合っていた。
「何勝手なこと言ってんだよ…!」
一抹の混乱はえも言えぬ怒りに変わる。
しかし、ふとじしんの携帯からひどい通知音が鳴っていることに気づいてしまったが為に急ぎ自身の携帯を取り出し確認を始める。手はひどく震えて上手いこと操作も出来ず、瞳孔は開き切って顔認証がうまく進まない。
「クソッ!」
顔パスを諦め、さっさと手動パスワード入力に切り替えロック解除。溜まっているのはSMSアプリの通知とSNSの通知を知らせるものばかり。
「お前これどういうことだ」
「モミジ?!なにがどうなってんの?!」
「これ神河くんじゃないよね?私は信じてるから」
「アンタこれどういうことか説明してもらうわよ!」
「これはさすがのあーしもびっくりなんだけど」
友人からのメッセージにはさほどの棘はない。本人同様に混乱しているためか、強い言葉を使えず説明を求めるものばかりだった。
問題はネットの方。
罵詈雑言、暴言に妄言、悪意に害意が塗れて溢れて止まらない、止まるところを知らない。
「これまじ?」
「十五のガキがあんなこと言ってたん?」
「正体必死に考えてたやつらの予想外れまくってんじゃんw」
「お前のせいで我が家は壊れたのだ!死を以て償え!」
「壊れたのは自業自得やん」
「こいつうちの近くの高校の生徒じゃね?」
「特定した」
「名前は―以下は規制されています―学校は―以下は規制されています―住所は―以下は規制されています―」
「攻撃開始」
「いい仕事してるじゃん」
「世間舐めてるガキに現実見せてやろうぜ」
「こいつ元からなんかやりそうだったんだよな」
「万引きしてるって噂もあったらしい」
「それ証拠ある。これね」
この短時間でよくここまで。寧ろ褒めてやりたいまである。やってることはとても褒められたものでもなければ人間のクズそのものでしかないが。
これを見てからというもの紅葉の顔色が優れない。何せ明確な『悪意』といたずらな『害意』に触れてしまった、それも若干十五歳の少年がだ。「正気であれ」と言うのがよっぽど鬼畜だろう。だが一番は近くにいる馬面が調子つき出したことかもしれない。「やっぱりお前がやったんじゃないか!テキトウな嘘で誤魔化そうとしやがって!」とかなんとか。気づいた時には握り拳が左頬にめり込んでいたがこの際気にしてられない。まだ喚いていたが最早気にする人間もいなかった。
「笹木先生に中谷先生は警察に事実確認をよろしくお願いします。私はこれから竹内先生と一緒に各所への連絡、事情説明などを済ませてきます。猿川先生はここに残り神河くんの保護と天峯さんとの連絡を続けてください。それと何か新しく連絡することがあれば私か中谷先生に入れるようにしてもらえると助かります」
「では」と大沼が動けば指示を受けた皆がせっせと動き出す。動きが見られないのは猿川と紅葉だけ。
いや、猿川は猿川で天峯から情報を聞き出している。動きが止まっているのは紅葉だけだった。
「だーかーら、どういうことか一から百まで全部説明しろっての。お前の焦りようからして知ってることの方が多いんだろ?」
「説明も何も今ニュースでやられてる通りだよ。チッ…オッドマウスはとっくにこっちにも根を張ってたんだ。警察の目的は『首のすげ替え』。オッドマウスを捕まえた実績を手に入れて失った信用でも取り戻そうとしてるんだと思う」
トントンと床を鳴らしながら受話器越しの古い友人に話を求め、また聞いては床を鳴らす。多少の憤りはある。だが、努めて冷静を保っていた頭で天峯の話を整理する。
(『根回し』に『首のすげ替え』、プラスで『信用復活』か。名前を売るような活動ばっかしてたのはこの為か?自分で追いやっておいて自分で助けてやるってか。盛大なマッチポンプだな)
「オッケ、もう分かった。あとなんか伝えておくこととかあるか?」
溜め息ひとつ漏らして猿川が問う。視界の端に映った紅葉の顔が青くてもう一つ。
「そうだな…しばらくの間、警察は俺と田白以外は絶対に信用するなってことだけ。あと、今からそっちに何人か警察が行くけど被疑者の身柄は絶対に渡すな、渡したら最後一生牢獄だと思え。一応田白をそっちに向かわせて保護するように言ってるから、それだけ」
「了解」とだけ呟いて通話はおしまい。最後に「あ、そうだ天峯?」でブツ切りしていつもの通り。
その近くにはとてもじゃないがいつも通りとは言えない顔をした紅葉がいる。どうしたものか。いやどうしたもこうしたもない。やること、伝えることは一つ。
携帯をいじって一つの文を飛ばす。
「よし、逃げるぞ。紅葉」
「へ?」
呆気に取られる紅葉を捨て置いて勝手に話を進めていく。田白という警察官がここに来た時はそのまま保護してもらい、その他であれば迷わず体育館裏の路地まで走ること、道中捕まりそうになったら最悪戦闘も構わないことだけを端的にハッキリと伝える。存外にも紅葉はしっかりと聞いていたし理解もしていたようで息が漏れる。
扉のノック音。二回だけなったそれに「ここはトイレじゃない」とでも言ってやろうかと思ったがすぐにやめた、後に続いた文言を聴いて。
「すみません警察庁の者なんですが、鍵ぃ開けてもらってもいいですかね?」
少し年季の入った声で扉の向こうの人物は語り掛ける。二人に緊張が走る。
(天峯の話じゃ田白って警察官は部下のはず…この声はどっちだ?)
ノブを何度も回して押したり引いたりを繰り返す。静かな部屋にそれだけが喧騒として存在する。
「すみませーん、いらっしゃいませんかー?」
(どっち?こういう時って名前って聞いていいもんだっけ?余計に怪しまれる?どっち…どうすれば?)
ノック回数が増える。向こう側にいる人影が増えていく。語気が強くなる。
「開けんかい!居んのは分かってんねんから早う開けんかい!」
「被疑者応答なし、校庭に周り窓ガラスからの突入待機」
無線機への報告。
確定。
「紅葉!走れ!」
警鐘が鳴り続けている。あの時から、ずっと。何かが不味いと、ずっと叫んでいる。
もっと信じてやればよかった。いつもこういう悪い予感は遠からずとも当たるのだから。
扉を蹴破って全速力。丁度裏側に居た人物ニ、三人を下敷きにして周囲の確認。ざっと数えて狭い廊下に四、五人。体育館裏に近い道の方でなく、手薄な方を迷わず選び走る。
「コラ!」
構えをとってすらいない。刀は抜かず鞘ごと振るうかすめ斬り。防護チョッキに阻まれさほどなダメージには繋がらず。
「待ちなさい!」
構わない。どうせ手を退かす為だけのものなのだから。
待たない。抜けてしまえば最早こっちのものだから。
「犯人!逃走!正面玄関より逃走!」
残念、正面まで行っていたら体育館裏までに時間が掛かる。
ガラスがバラバラに割れて落ちていく。全速力の少年の体当たりでいとも容易く崩壊した窓フレームから飛び出し受け身を取りつつ即時走りだす。
「犯人、窓から逃走!繰り返す、生徒指導室前から窓を破り逃走!」
ここからは最短ルートで路地まで突っ切る。障害となる人影は今のところ無し。報告の声は止まっていないし、すぐに現れるだろうが。
「いたぞ!とっ捕まえろ!」
ほら見たことか、悪い予感が当たっただろう。
現れた人影おおよそ五人、背後から紅葉を追う人物おそらく六人。
「マジでもう意味わかんねーっな!」
不可視の鎖を校舎に引っ掛けて跳躍。最短ルートで校舎裏を目指す。
二、三回鎖を投げて体育館上に着地、裏の路地へ。警察もここまでは追って来れていない。ちらりと見えてはいるので早めに向かう。
ロープアクションなし、時短で着地。受け身を取って衝撃吸収。
裏の路地に黒のバンがアイドリング。脇目も振らず紅葉は走る。
フルアクセル。紅葉の方へと突っ込む。
「ハァ…ッ?!」
開いたままの後部ドアから何かが飛び出し紅葉を攫い困惑する声すらも塞ぐ。
「慶さん!アクセル!」
「わーっとるわ!」
法定速度ガン無視のバンはこのまま去って行く。『容疑者』一人とその『共犯者』四人を乗せて。
神河紅葉:魔力操作 D
能力 虚無
ランク なし
肩書き オッドマウス関連事件容疑者




