表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

恥辱の構図──捕らわれの美術準備室

作者:理央
罪状は、実に些細なものだった。中学生が土曜日に繁華街を歩いていた──ただそれだけ。

美術教師が引用したのはは、マイヨールの『とらわれのアクション』——縄に縛られ、もだえ、抗う女性の肉体を彫り込んだ、あの大理石の彫刻だった。

少女の両腕もまた、「指導という名の縄」が存在するかのように、がっちりと後ろ手に縛られていた。

しかし、美術教師の語る「罪」は、そんな表面的なものではなかった。
少女にはわかっていた。問題とされたのは、彼女がすでに「少女」ではなくなりつつあること。

「これは、私への罰ですか?」

少女の問いは、静寂の中をまっすぐに走り抜け、壁際に並ぶ石膏像たちへと跳ね返った。

その問いに、美術教師は即答しなかった。だが、答えは彼の身体がすでに示していた。

拡大した瞳孔、汗ばんだ鼻筋、不自然に上下する喉仏。それらが、彼の感情を、欲望を、隠しきれずに物語っていた。

彼にとってこれは「教育的指導」などではなかった。
審問という形式を装った、私的な欲望の投影であり、その執行だった。
矯正とは名ばかりで、実態は「愉悦」だった。

「お前のような身体は...もっと罰せられるべきだ」

少女の内面には、緩やかで静かな変化が起きていた。
なぜ自分が罰せられるのか。その理由が、具体的な行動ではなく、存在そのもの──この身体の形、皮膚の張り、骨の角度──にあるということを、彼女は悟りつつあった。

そしてそのとき、自分が審問者の「欲望の鏡」として機能していることにも気づく。

美術は人を裁かないはずだった。だが今、この部屋では──表現という名を借りた告発と懲罰が、確かに行われていた。

「それが、私の罪ですか?」
序章
2025/05/31 08:04
その男
2025/05/31 08:04
狂気の授業
2025/05/31 08:05
教室を越えた支配
2025/05/31 08:06
新入生
2025/05/31 08:06
2025/05/31 08:06
捕らわれの美術準備室
2025/05/31 08:06
底辺高校
2025/05/31 08:07
解かれゆく沈黙
2025/05/31 08:07
あとがき
2025/05/31 08:08
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ