<8> 追いつ追われつ
追いつ追われつ・・とは最初に追っている者が追われている者を追い、、その追われている者が別の者を追い、その別の追われている者が最初に追っている者を追うといった構図を描く現象である。この、追いつ追われつと呼ばれる現象は、人生によく現れる現象と言えるようです。
中小零細会社の迫川板金はやや大きめの弱電会社、止石電工の小型部品を作る製品作りに追われていた。
「はいっ! 急いではおるんですが、なにぶんにも小人数な者で…。はいっ! 約定日までにはお納め出来ると思いますんで…」
『そりゃ、納期までに入れてくんないと、私とこが困るからねっ!』
「はいっ! そりゃもう…」
『頼んだよっ!!』
電話は切れた。追川は額に噴き出た冷や汗を腕の服で拭いながら安息の溜め息を一つ吐き、大声で工場長を呼んだ。
「おいっ! 飛山さんとこの材料は、まだ入荷せんのかっ!」
飛山金属は追川板金に材料を入れている金属搬入を業界で仕切る大手会社である。
「はあ、何度も連絡はしてるんですが、都合がつかないの一点張りで…」
「都合をつけてもらわんと、うちが困るんだよっ! 今も止石電工からやんやの催促があったんだっ!!」
「はあ…」
そんなこと俺が知るかっ! と工場長は思ったが、とてもそんなことは言えず、お通夜のような声で返した。ところが、である。その飛山金属は止石電工の大株主だったから話は、ややこしい。^^
「ああ、止石さんか…。飛山です。この前、お願いしておった製品がまだ入荷しとらんようなんですが、どうなっとるんですか? うちの系列会社から問い合わせがありましてな…」
『ああ、飛山さん。ご無沙汰、致しております』
「いやいや、こちらこそ。この前、お会いしたのは何年前でしたか…。いや、その話はまた後日に。で、どうですかな?」
『はあ、止石電工に急ぐよう電話しとるんですが、子会社からの部品が入らんとかで…』
「さよですか…。急がせて下さい」
部品ぐらい早く入れろっ! と飛山は怒れたが、そこはグッ! と我慢して、穏やかな声を装った。
「はあ…」
とだけ、止石はお通夜のような声で返した。
人々は追いつ追われつの人生を歩んでいるようです。企業も、追いつ追われつしてるんですね。^^
完