<4> 英雄(えいゆう)
人名である英雄さんの英雄ではなく、今回の話のタイトルは英雄です。^^
誰しも英雄にはなりたいだろう。都知事選もそうだが、人生で社会から脚光を浴びること自体、悪い気はしないはずだ。まあ、私の場合は、美味しい鰻の白焼き、鰻肝の串焼き、櫃まぶし、鰻茶漬け、特上の鰻重なんかを温泉に浸かったあと、生ビールなんかを鰻骨のから揚げを肴にして飲みながら、夕陽に暮れゆく海を愛でつつフルコースで戴くくらい出来れば、英雄なんかどうでもいい…と思う凡人ですが…。^^
国家公務員を退職した平目は、何かいい仕事はないか…と日々、仕事を探す日々に明け暮れていた。なぜ平田が退職することになったのか? について多くは語らないが、正義が許さなかった・・とだけ記しておきたい。なぜそんな気分になったのか? も気になるところだが、人生の波はすきま風のように人をあらゆる方面から吹き苛むのだ。すでに三十路半ばの彼にとって、もう人生は終わった…と思えてならなかった。ところが、である。ひょんなことで彼に救いの神が現れ、いい話が舞い込んだのである。そして、その翌年の春、彼は地方公務員の末席を汚すことになったのである。国から地方公務員への渡りである。地方公務員に返り咲けたことで平目は満足だった。英雄には成れなかったが、凡人として人生を送れたことの幸せに平目は十分、満足していた。
『いい人生だった…』
平目は、温泉宿の美酒に酔いしれながら、鰈の塩焼きを美味そうに頬張った。
よかった、よかった!^^
完