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<34> 保険

 人生に保険をかけておくことは大切ではないか? と年老いて馬鹿なことを考えている私である。お笑い下さい。^^ 保険といっても生命保険のことを言っている訳ではありませんから悪しからず…。^^ この場合の保険とは、万一、最悪にコトが進んだ状況を考えて、事前に逃げ道とか回避策を考えておく・・ということだ。まあ、生命保険も万一の場合の逃げ道なんだろうが、当の本人は死んだ身なのだから意味がない。^^ あの世で、保険金で揉める家族を見ながら、勝手にやってろっ! と腹を立てるのも如何なものでしょう。^^

 プロ棋士の土壺(どつぼ)王座と泥舟(どろぶね)九段が対局する王座戦の第五局が幽霊の間で行われている。対局の模様を映す大モニターを見ながら、大盤解説をプロ棋士二名が離れた大広間で行っている。

「打たれましたね…。この手はどうなんでしょう?」

 女性棋士が訊ねる。 

「ええ、まあ…。大石を取られないよう保険をかけられた一手なんですが…」

 歯にモノが挟まったような口ぶりで男性棋士が朴訥に返す。

「と、言いますと?」

「一路上の方が、よかったんじゃないかと私は思うんですが…。コレですと劫争いが発生する可能性がありますから、必ずしも保険をかけたとまではいえなくなるということです。もちろん、相手が劫を仕掛けた場合ですが…。損劫ですが、打ちますかね?」

「…」

 女性棋士は私に訊かれても…と、沈黙した。

 しばらく長考し、ついに泥舟九段は劫を仕掛けた。

「やりましたね…」

「やりました…」

 しばらく取ったり取られたりの劫争いが続いたが、仕掛けられた土壺王座はなんとか劫争いを制し、一局を優勢に打ち進めた。終局の結果、仕掛けた泥舟九段は損劫の目数を寄せ勝負で取り戻せず、タイトル奪取までには至らなった。

 対局後の土壺王冠のひと言である。

「いや、冷や汗ものでしたよ。かろうじて(はま)らず逃げられましたが…。運がよかったとしか申しようがありません…」

 保険をかける場合には運も左右するようです。^^


                  完

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