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<16> 情け

 最近の世の中は、情けをかけたりかけられることが少しづつ減少しているように思える。要するに世知辛い…と感じることが増えてきているということだ。当然、人生を歩むにも(いばら)の道が待っているということになる。例えば諸物価の高騰は情け容赦なく真綿で首元を締めつけるかのように国民生活を苦しくしている。両手で締めつけられれば、否応なくあの世へ旅立たねばならないが、真綿だからすぐガクッ! と逝くこともない。さすがに国も(したた)かで頭がいいのです。^^

 会社のリストラで解雇されて以降、屑川は不貞腐れていた。天下の素浪人となり、すること成すこと全てが裏目に出て、自分の思うようにいかないかった。一つ二つならまだしも、全てが全てなのだから前向きに生きよう…という気分も(しぼ)んだ。屑川は自分の苗字が悪いんだ…と苗字の所為(せい)にした。もう、どうにでもなれっ! と捨て鉢になった。別に割れた鉢を屑のように川へ捨てた訳ではない。^^

 ハローワークの窓口で対応してくれる職員とも顔馴染みになった。そんな失業保険が切れたある日、その中の一人の係員がにこやかな笑顔で語りかけた。

「屑川さん、労務員の欠員が出来たんです。よかったらどうですっ!」

「えっ! ほんとですかっ!」

「ははは…仕事を紹介する私が嘘を言っても始まらないでしょ」

「そりゃまあ、そうですが…」

 屑川は世の中にはまだまだ情けがあるんだな…と思わず、大粒の涙を流した。

「またまた…何か苛めてるみたいじゃないですか…」

 係員は辺りを見回しながら小さな声で悪びれた。

 その後、屑川さんは社会に捨てられず、ハローワークの労務員として働いておられるということです。人生を生きる上で、情けをかける側、かけられる側は別として、人の情けは必要です。屑川さん、よかった、よかった!^^


                  完

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