<1> 人生
人生には途轍もないドラマが待ち受けている。そのドラマは到底、フィクション[虚構]では作り得ない人々の現実の縮図なのである。ということで、これから描く百のお話は、人生の様々な場面で起こるユーモアを散りばめた実話ドラマ、要するにノン・フィクション的なお話の数々です。^^
鏑木は朝から畳に座り、座禅を組みながら人生とは何か…と深く考えながら瞑想に入ろうとしていた。座禅とは無想の域なのだが…。^^
「ごはんよっ!」
そのとき、味も素っ気もない妻の呼ぶ声が書斎の鏑木に聞こえた。鏑木としては、考えている途中だっ! …くらいの迷惑気分である。だが、返事を返さないと、またバタバタと足音を立てながらドアを開けられ、ブツブツ言われる虞があった。
「ああ、今行くっ!!」
威厳めいた少し大きめの声で偉ぶって返す鏑木だったが、迷惑気分は拭えない。意固地になった鏑木は、瞼をきつく締め、誰も邪魔するなっ! とばかり、怒りつつ瞑想に入ろうとした。だが、怒りながら人生とは? という大命題の発想が浮かぶはずもない。浮かぶのは、ムツの味噌焼きは出てるんだろうなっ! …くらいの食い気の発想だった。
「もう、いいっ!!」
誰に言うでもなく呟くと、座っていた鏑木は自分を勝手に納得させ、スクッ! と畳から立ち上がった。
このように、人生は食べることが、まず第一の始まりになるようです。^^
完
10.12~