前へ目次 3/3 君がかつて空だったように 夕の雲がはけ燃えるような晴れ 地平線から夜とおぼしき紺色がくる 夕に心と夜に心 見上げてみれば全面が宙 宙に描かれる風の天井画 遮るものを知らない描き手ののびのびとした線形 そびえるビルでなくたんぽぽであり 室外機でなく口笛である 風がわたしの肌をたがやす 鼻から育ち口から芽吹き 健康として迫力がある わだかまりが朽ちぽろぽろと剥がれ 純粋な気配がどこか漂う 君がかつて空だったように 私もかつて空だった 今まさに 地上にいながら夕空となる