前へ目次 次へ 2/3 夕暮れ 夕日の後頭部を掴み山の底へ沈める 噴きあがる汗と唾と涙が空に染みては夕焼け 悼むような空色にやがて藍 烏が電線に群れてあどけない 顔を見合わせる黒い彼女たちの横顔 橙色の腕時計 蚕の入れ墨 乾ききった足元に風 地団駄の跡が残る道すじ 「こんな事なら」と舌が泣いている 腸からやってきた嗚咽が喉を借りて笑う 私もつられて笑った 形のない粘土を捏(こ)ねることを言葉と呼ぼう 言葉でできた塔へ花束を贈ろう 私がここで笑うことを 幸せと呼ぼう