ネオンの都市
〜第一都市アテナトネリー〜
この都市は夜であってもネオンの光で夜とは思えないほど明るい。それに伴ってか人の往来も昼などと大差なく、人々の笑い声や話し声が響き合っている。だが光があるならば影もあるのが必然。それはとある路地裏で起こっていた
ピピッ
「ん?電話?」
路地裏に1人立っていた女は鳴っていたスマホを取る。少し小柄な女の背中には身長よりも少し大きい2つの大鎌が背負われていた、その武器と服からしてとても一般人とは思えない装いだった
「はいは〜い。あっ、すみちゃん!大丈夫こっちは多分ボスっぽいのだけ生かしてるからアジトに連れて行くね。ん、じゃぁ運ぶ人だけ寄越してくれれば何とかなるかな。それじゃ!」
「っ!この…クソ女が!」
地面に倒れている男がそう吐き捨てながら女を睨みつけた
「いやいや…お前達はうちらの管理内で勝手になにかしようとしてただろ。」
「………」
「図星ね、よしでは行こうか。私達審判のアジトへ。」
「もし…反抗したらどうなる…」
「まぁ、君の部下みたいになりたければそれでもいいんじゃない?」
女が目を向けた先にあったのは、軽く見積もって20人はいるであろう死体の数々。それらは全員刃物で切り裂かれたような跡が残っていて、女の大鎌でやられたことはほぼ間違いないだろう
「くっ…」
「ほら、嫌なら行くよ。迎えが来るから。」
プップー
「「!」」
「おい!来たぞ」
車の中から男が顔を覗かせる
「おっ、タイミング完璧!いくら!」
「い、いくら?」
「いや俺にはちゃんと勢蔵幸大っていう名前があるんだが!」
「まぁいいじゃん!それよりこいつお願いね」
「ん?あぁ、例の件の端くれか。」
「そそ、頼んだ」
「お前は?」
「後始末してから行くから」
「あの掃除屋か?」
「そうそう」
「へっ頑張れ」
「しばくよ?ほら早く行けって」
「了解、また後でな」
「うい」
そして勢蔵はボス(多分)を車に乗せて去っていった
するとそれを待っていたかのように何者が靴の音を響かせながら近づいている気配がした
「やっぱり居たんだね。田中さん。」
「こんにちは、鷹樹那々実さん。」
「久しぶり…かな?」
「約一か月ぶりですよ。しかしこれまた…」
田中さんは死体を見て呟いた。
(その言葉にはなにか…嬉しさが籠もってるようにも聞こえるんだよな…)
「で、どう?」
「ふむ…」
「そうですね、この2体はまぁまぁかと、後の18体ぐらいはあまり良いとはいえないですが。」
「ちなみにそのまぁまぁってどのくらい?」
「下の上、他は下ぐらいですね。」
「そんなもんか…」
「で、金ですが5万…ぐらいです」
「え…てっきり1万弱かと。」
「ちょうど欲しかったやつが入ってたからな、おまけってことで」
「おけ、じゃぁいつもの所に振り込んどいて。」
「分かりました、では持ち帰りますので」
(ん〜?)
「毎回思うんだけど…どうやってその量持ち帰ってるの?」
「…それは企業秘密で」
「……分かった。私はアジトに戻らなきゃ。またお願いね!」
「えぇもちろん。」
「よし、では行きますか!」
鷹樹という女はそう言うと、暗い路地裏からネオンの光が眩しい雑踏へと消えていった