プロローグ 『拝啓、私と同じあなたへ』
拝啓
穏やかな4の月の風が吹く今日、いかがお過ごしでしょうか。そちらテシュフォルド国では、今頃ですとポムの木が夏に向けて実をつけ始めた頃でしょうか。こちらアクィータ国では、国花であるフィキの花が国中に咲き誇り甘い香りを漂わせております。
さて、私とあなたがこの世界で出会って、今日で丁度1年になりました。
何もわからないままこの世界に辿り着き、誰にも本当のことを打ち明けられないまま、もどかしさ、周りのみんなへの罪悪感、独りで抱えるしかない孤独の中で一生を終えるのだと思っていた私の前に、あなたが現れたあの日。お先真っ暗だった私の目の前に差し込んだ一筋の光。あの日私がどれだけ神に感謝したことか。
もう何度も直接伝えているので、あなたはくどいと笑うかもしれませんが……それでも私は、心からの感謝と喜びをあなたに伝えずにはいられません。
あの日のあなたの姿、言葉、そして私にくれた歌。全てが昨日のことのように鮮明に心に焼き付いています。
私がここにやってきた経緯はあなたとだいぶ違いますから、あなたのように、ここで最期を迎えることになるのか、それとも今までのあなたと同じように、また別のどこかに行くのか、それはわかりません。
出来ることなら私はあなたと、そして私を温かく迎えてくれたこの国の大切な人達と一緒に、この世界で終わりたい。それが第一希望です。
でも、もしそれが叶わなくても、私はきっと前を向いてまた別の世界を歩いていけると思っています。あなたと出会い、あなたの歩んできた道のりを知り、勇気を貰うことができたから。
……て、こんな話してたらまた笑われちゃうかもですね!だって私達まだ全然若いし!人生まだまだこれからだし!
つまり何が言いたいかっていうと、私はホントにホントにホンットーーーに!あなたに出会えてよかったって思ってるってことです!!
なんなら毎日でも会いたいです!てことで今度またウチに遊びに来てください!
あなたのファンのみんなもとってもとっても会いたがっています!なお来る時はテシュフォルド名物のスコーンを必ず持って来るようにとのことです!
それでは、同志一同あなたが来てくださることを心よりお待ち申しております。まだ少し肌寒いので(あなたなら風邪なんか引かないでしょうけど!)お身体に気を付けてお過ごしください。
追伸
まだ死のうなんて思ってませんよね?絶対ダメですからね!!
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