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五章 塗料を求めて南極島へ

同年、三月十六日。

ラクスティアでマッケリス都市計画が始まった。

集められた人は計一千万人。その殆どが貧困街や無法地帯から来た生活苦の若者だ。

一千万人の人が一斉に掘削・埋め立て工事を行う。


一方、梨々香たちはイクイノックス艦内で建築士たちと話をしていた。

「青色と白色を基調とした建物で統一したいとのことです」

梨々香は建築士たちを見てそう言った。

「できるにはできますが・・・手入れが相当大変ですよ?」

建築士1は梨々香を見てそう言った。

「手入れよりも、塗料の仕入れ方法が問題だ」

建築士2は建築士1を見てそう言った。

「塗料というと、シロミツキやマカルバ石でしょうか」

梨々香は建築士2を見てそう言った。

「えぇ、まぁ・・・そうです」

建築士2は梨々香を見てそう言った。

「塗料の原料産出国はノースドラゴニアでしたし、元アーヴァン共栄圏所属国以外にある数少ない栽培場や鉱山も戦争被害を受けて壊滅状態で・・・」

眉を顰めた建築士1は梨々香を見てそう言った。

「それに、今の時代はどの工場も軍事工場になっています。だから、塗料が作れていないんです」

建築士2は梨々香を見てそう言った。

「・・・少し友人を訪ねてみようと思います。塗料が手に入る前提で開発を始めてください」

少し考えた梨々香は建築士たちを見て笑みながら言った。


正午十二時六分。

イクイノックスから航空輸送大船団、ラクスティア部隊が発艦した。

目的地は南極にある巨大な島、燦水天狐島(さんすいてんことう)

炎の知恵を持ち、天陰(てんいん)の剣術を覚えた燦水天狐族が住まう土地だ。


同年、三月十八日。

ラクスティア部隊は厚い氷に覆われた南極海を航行していた。

「辺りが薄暗い・・・方向がわからなくなりそうです・・・」

操舵士は薄暗い海を見てそう言った。

「このまま真っすぐゆっくりと進めば大丈夫です」

梨々香は前を見て笑みながら言った。

「吹雪だ・・・」

リヴァは吹き荒れる雪を見てそう言った。

雪に交じった雹がパンパンと窓を叩き、辺りがますます暗くなる。

その時、微かな灯りとキラキラと乱反射するように光る船体が見えた。

「船だ!」

船員たちは近づいてくる巡視船を見て笑みながらそう言った。

「燦水天狐族の警戒艇ですね」

梨々香は巡視船を見て笑みながらそう言った。

「け、警戒艇?大丈夫なんですか?」

船員2は梨々香を見てそう言った。

「大丈夫ですよ。警戒艇の指示に従って入港しましょう」

梨々香がそう言うと、ラクスティア部隊が速度を落として警戒艇の後ろに行ってついていった。

一キロ先も見えない暗い雰囲気が不安を生み出す。

船員たちは船体に付けられたライトが電飾のように光る警戒艇を見て不安を紛らわせながら島への到着を待つ。


警戒艇に続いて航行することニ十分。

一キロ先も見えない薄暗い雰囲気は船員たちにとっては何時間にも感じるほどの苦痛だ。

しかし、その時だった。

「な、なんだ・・・?」

冷や汗をかいた船員1は警戒艇のマストに灯った赤い炎を見てそう呟いた。

その瞬間、航路の両側が明るくなった。

「灯篭・・・ですか?」

船員たちは赤い炎が灯る灯篭を見て笑みながら言った。

「着きますよ。入港用意」

梨々香は前を見てそう言った。

輸送船が灯篭に照らされた道に入ったその時、大量の灯りが見えて視界が一気に晴れた。

「おぉぉぉぉ!!!!」

船員たちは燦水天狐島を見て歓声を上げた。

南極燦水天狐島は万象の神、炎聖君に与えられた炎の知恵を大切にしている。

炎の知恵から生み出された炎は聖火として代々守られ利用されている。

ラクスティア部隊は警戒艇に続いて燦水天狐島北大港に入港し、船員たちが船から降りた。

「極寒の地にこんな文明が」

船員たちは周りを見始めた。

その時、多くの燦水天狐族が集まって来た。

「・・・」

船員たちは次々と集まる燦水天狐族(さんすいてんこぞく)を見て冷や汗をかき、後退りした。

燦水天狐族は梨々香に深々とお辞儀した。

万象(ばんしょう)様。回帰を果たしたこと、心よりお祝い申し上げます」

「はいはい・・・」

梨々香は燦水天狐族を見て苦笑いしながら言った。

「お求めの物は用意してございます」

燦水天狐族の長が梨々香を見てそう言うと、燦水天狐族たちが退いて無数の大きな馬が来た。

「箱・・・」

船員1は大きな馬が曳く木箱を見てそう言った。

「この箱は?」

リヴァは木箱を見てそう言った。

「シロミツキやマカルバ石から造られた塗料ですよ」

梨々香は木箱を見て笑みながら言った。

「ありがとう」

梨々香は燦水天狐族の長を見て笑みながら言った。

「では」

梨々香はそう言うと、リヴァを見た。

リヴァは植物の種が入った袋を燦水天狐族の長に渡した。

船員たちも燦水天狐族たちに植物の種が入った袋を渡した。

「こんな種で良いんですか?」

リヴァは梨々香を見て囁いた。

「種子と言うのは、この極寒の地において聖火の次に大切な物なのですよ」

種が入った袋を持った燦水天狐はリヴァを見て笑みながら言った。

「そういうことです」

梨々香はリヴァを見て笑みながら言った。

(すげぇ聴力だ・・・)

リヴァは少し驚きながら燦水天狐を見た。


同年、三月二十日。

ラクスティア部隊がイクイノックスに帰還した。

積荷が地上に下ろされると、建築士たちが酷く驚いた。

「こ、こんな良質な塗料は見たことがない・・・」

驚く建築士1は塗料を見てそう言った。

「これだけあればなんとかなりそうだな」

建築士2は塗料を見て笑みながら言った。

「人が増えてるように思うが・・・」

リヴァは作業員たちを見てそう言った。

「というか、増え過ぎじゃないか?全部が放浪者なら一国家から人が居なくなっていても不思議じゃない」

リヴァは建築士たちを見てそう言った。

「元アーヴァン共栄圏所属国から来た元職人たちですよ。アーヴァン共栄圏崩壊による経済破綻で収入が得られなくなったからここに来ているんです」

建築士1はリヴァを見て笑みながら言った。

「そうか・・・」

リヴァは建築士1を見てそう言った。

「塗料は足りなくなったらまた買いに行くとのことだ」

リヴァは建築士たちを見てそう言った。

「ケチるなってことですな」

建築士3はリヴァを見て笑みながら言った。

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