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四章 ローゼ・カーリン

同年、三月十四日。

梨々香から命令を受けたリヴァがグローニアキャット族の年が離れた姉妹の姉を連れてサウスドラゴニアに来た。

「お前さん、名前は」

リヴァはグローニアキャット族の年が離れた姉妹の姉を見てそう言った。

「・・・」

グローニアキャット族の年が離れた姉妹の姉はリヴァを見た。

「・・・そうか」

「なら、お前の名前はカスミだ。カスミと呼ばれたら返事をしろ」

リヴァはそう言いながら歩みを進めた。

グローニアキャット族の年が離れた姉妹の姉、カスミはリヴァについていった。

「お前さん、少しも話せないのか?というか、言葉が通じるかも怪しいな」

リヴァはそう言いながら歩き続けた。

「通じるよ」

カスミはリヴァを見てそう言った。

リヴァは立ち止まり、カスミを見た。

「言葉、通じるよ」

「そうか」

リヴァはカスミを見てそう言うと、再び歩き始めた。

カスミはリヴァについていった。


リヴァは酒場に行き、その日暮らしの冒険者に話を聞き始めた。

「冒険者」

机を叩くように机の上に一西華国(せいかこく)リズ紙幣を置いたリヴァはしょぼくれた顔をしながらサウスドラゴニアリズ紙幣を見る冒険者を見てそう言った。

「おぉ~!」

冒険者は一西華国リズ紙幣をすぐに取って笑んだ。

「この娘について何か知らないか?」

リヴァはカスミの頭に手を置いてそう言った。

「あ?」

冒険者はカスミを見た。

「グロージャーじゃねぇか。死んだかと思ってたぜ」

冒険者はカスミを見て笑みながら言った。

「姉ちゃん、酒だ!酒を持ってきてくれ!」

冒険者は店員に一西華国リズ紙幣を差し出してそう言った。

「はいよ」

店員は一西華国リズ紙幣を受け取りながら言った。

「グロージャー?」

リヴァは冒険者を見てそう言った。

「あぁ、こいつはグロージャーって呼ばれて恐れられていた盗人だよ。並みの兵士じゃ手が付けられなかったから、冒険者に討伐依頼が出されたこともあった」

冒険者はリヴァを見て笑みながら言った。

「この娘の両親は?」

「さぁな、そこまでは知らねぇ」

冒険者は頭を掻きながら言った。

冒険者は机の上に置かれた樽のジョッキを見て笑むと、嬉しそうに酒を飲み始めた。

「・・・」

リヴァはカスミを見た。


次に、リヴァとカスミは情報通が居るという酒場に行った。

「私に用なんて・・・まともじゃないね」

情報通の冒険者はリヴァを見て笑みながら言った。

「この娘について知っていることを話してくれ」

リヴァはそう言いながら机の上に金貨を置いた。

「そう来たか」

情報通の冒険者は金貨を見て笑みながらそう言うと、金貨を手に取って金塊を軽く上に投げてキャッチした。

「良いだろう」

情報通の冒険者は笑みながらそう言うと、金貨をポーチの中に入れてカスミを見た。

「グロージャーはサウスドラゴニア北部じゃ有名な盗人だ。被害総額は千リズ近く・・・襲われて潰れた店もある」

情報通の冒険者はリヴァを見てそう言った。

「この娘の両親は?」

リヴァは情報通の冒険者を見てそう言った。

「産母ナタリー・ベクチャー・クロイス、育母クライス・ローゼ・カーリン。次女が乳飲み子だった頃にクライスが病死、ナタリーは出稼ぎ中に恋人を作り、帰って来なくなった。まぁ、こんな感じだ」

「ナタリーはどこに居る」

「王都の貴族地区に居る」

「随分と幸せに暮らしてるらしいぞ」

情報通の冒険者はカスミを見てそう言った。


同年、三月十五日。

リヴァはカスミを連れて王都の貴族地区に行った。

「通行証を提示してください」

保安官はリヴァとカスミを見てそう言った。

リヴァは二つの通行証を差し出した。

「・・・本物だ」

保安官たちは通行証を見てそう言った。

「目的は」

保安官2はリヴァを見てそう言った。

「ブラン・ローデル・ウッドに会うためだ」

リヴァは保安官たちを見てそう言った。

「ウッド様に?」

「あれだけ他人と会うことを嫌う大貴族に・・・」

保安官たちはリヴァを怪しみ始めた。

「私の友人を引き留めて、何をしているのですか?」

ブラン・ローデル・ウッドは保安官たちを見てそう言った。

「う、ウッド様!!」

保安官たちはブランを見て驚きながらそう言うと、慌ててお辞儀した。

「私がどれだけ納税しているか、あなたたちは税金で飯を食っているんだからわかっているでしょう?」

「も、もちろんでございます!」

保安官たちはブランを見て頭を下げながら言った。

「さっさと通しなさいよ」

「は、はい!」

保安官たちは急いで退いた。

リヴァとカスミは保安官の横を通り過ぎ、ブランについてった。

「協力感謝する。助かったよ」

歩くリヴァはブランを見てそう言った。

「どうせ陛下から命令を受けて来たんでしょう?あのお方には一族と仲間たちがお世話になっていますからね」

ブランは歩きながらそう言った。


リヴァとカスミはブランの邸宅に入ると、訳を話し始めた。

「この娘の親を探すように陛下から言われて来たんだ」

リヴァはカスミを見てそう言った。

「なるほど。その親がここにいると?」

ブランはお茶を淹れながら言った。

「あぁ」

リヴァはブランを見てそう言った。

「親の名前は?」

ブランはリヴァを見てそう言った。

「ナタリー・ベクチャー・クロイス、もう一人はクライス・ローゼ・カーリン。ここに居るのはナタリーの方だ」

「ナタリーはファルシモ卿の正妻。第一妻や第二妻を差し置いてあとから来たナタリーが正妻になったの」

「それほど魅力がある人なのか?」

「まぁ、何か裏があるでしょうね。マリーヌ王立軍大臣と根深い関係があるから、そう言うことだと思うけど」

ブランはティーカップが乗ったソーサーをリヴァとカスミの所に押した。

サウスドラゴニア王国はアーヴァン共栄圏と対等に渡り合っていた月浜国を長きに亘って調査・分析していた。

そして、アーヴァン共栄圏崩壊事件で唯一無傷だった月浜国を調査している際、月浜軍が使用する巨大なエネルギーに目をつけた。

そして、現在のサウスドラゴニアは月浜軍が運用するそのエネルギーを半永久的に生み出す施設、神気生成炉(しんきせいせいろ)の技術を手に入れようと画策している。

(まさか、ナタリーは神気生成炉の開発に関わった研究者なのか・・・?)

ティーカップを持ったリヴァは考えながらお茶を飲んだ。

「現在も双子島拠点で研究が進められている結晶を知っているでしょう?」

ティーカップを持ったブランはリヴァを見てそう言うと、お茶を飲んだ。

「イクイノックス級に搭載された三機の永久機関に使われているそうだね」

リヴァはブランを見てそう言った。

「えぇ。まるで、六合万象を表したような実に奇妙な紫色のエネルギー・・・」

ブランはリヴァを見てそう言った。

「その名はゼノ・・・」

ブランは少し目を細めてそう言った。

「人に扱える物とは思えないが・・・」

リヴァがそう言うと、カスミが倒れるように寝た。

「・・・この寝方は普通じゃないな」

リヴァはそう言うと、ブランを見た。

「そのゼノを少し混ぜておいたんです。陛下か世の主六合を頼らなければ、二十四時間で死にますよ」

ブランはリヴァを見て笑みながら言った。

「さっさと帰りなさい」

ブランはリヴァを見てそう言った。

「そうさせてもらうよ。迷惑かけたね」

リヴァはカスミを抱えてそう言うと、窓から外に出て飛び上がった。

ブランはティーポットを持って窓に行くと、お茶を流し始めた。

その時、ドアを破って王立軍の兵士たちが来た。

「随分と失礼な人たちですね」

ブランはそう言うと、振り向いて王立軍兵士たちを見た。

「ここにグロージャーが居るという通報を受けた。調べさせてもらう」

王立軍将校はブランを見てそう言った。


午後七時。

イクイノックスに戻ったリヴァは艦内医師にカスミを渡し、近くにいた梨々香に事情を説明した。

「ただの睡眠薬でしょう。ゼノを粉末、又は、液体化させることはほぼ困難ですから」

梨々香はリヴァを見てそう言った。

「そうですか・・・」

リヴァは梨々香を見てそう言った。

「・・・随分と心配していたようだね」

梨々香はリヴァを見て笑みながら言った。

「そう言うわけでは・・・」

リヴァは少し恥ずかしそうに言った。

「それより、カスミ・・・あの子の親・・・クライス・ローゼ・カーリンについて」

リヴァは梨々香を見てそう言い言った。

「クライス・ローゼ・カーリンは後の北龍朝廷創設者、リベートリヒ・ド・イオネスコと共に南龍事変を起こし、当時の女王を倒した名将マウ・ローゼ・カーリンの曾孫です。とても優秀な人でしたよ」

梨々香はリヴァを見てそう言った。

「そうですか」

「そう言えば、あの子のことをカスミと呼んでいたね。あの子に名前を付けたのかい?」

梨々香はリヴァを見て笑みながら言った。

「え?えぇ・・・まぁ」

リヴァは梨々香を見て少し動揺しながら言った。

「カスミ。良い名前じゃないか」

「・・・ありがとうございます」

言い訳を考えながらバタついたリヴァは梨々香を見てそう言った。

「妹の方はミューテが名付けていたよ。ミッケと言う」

「・・・ミューテは相変わらず子供が好きですな」

リヴァは梨々香を見てそう言った。

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