三章 グローニアキャット族の年が離れた姉妹
同年、三月十二日。
リベードリヒからとある命令を受けた黄金風ウェンディがサウスドラゴニア王国に来ていた。
ウェンディの目的は労働力を確保すること。
ウェンディは労働力を確保するため、奴隷商を訪れたのだ。
「最近は奴隷禁止法が制定されるとか何とか、私らの締め出しが激しいんですわ」
ランタンを持った奴隷商は歩きながらそう言った。
「アーヴァン共栄圏と対立してまで王族が広げた事業なのにね。実に不思議だ」
ウェンディは歩きながらそう言った。
「アーヴァン共栄圏崩壊後から経済状況が良くありませんからねー・・・多くの人がマージンを嫌がって小国から引っ張ってきちゃいますから、マージンが多く取れないと王族が不満を漏らしたんでしょう」
「そう言う私も奴隷税は払っておりませんが」
ランタンを持った奴隷商は笑いながらそうそう言うと立ち止まり、牢屋の方を向いた。
「・・・」
ウェンディは牢屋の中にいる奴隷たちを見た。
「この娘なんていかがですか?この体つきで処女ですよ」
奴隷商は奴隷に繋がれた鎖を引っ張った。
鎖を引っ張られた奴隷は急いで駆け寄った。
「お客さんは余程高貴なお方と見ております。今回は特別に四割引きまで約束しますよ」
奴隷商はウェンディを見て笑みながら言った。
(随分と純粋無垢な笑みだ。奴隷商と言うのはやはり狂っているな)
ウェンディは奴隷商を見ると、冷や汗をかく奴隷を見た。
「商人殿」
ウェンディは奴隷を見てそう言った。
「はい」
「ここで売っている奴隷は何歳から何歳までだ」
「赤子から四十手前までです。もしかして、もっと年増がお好きで?」
「なら、貴殿の言葉を信じでここにいる奴隷を全て買おう」
ウェンディは奴隷商を見てそう言った。
「ぜ、全部・・・ですか??」
奴隷商はウェンディを見て困惑しながら言った。
「そ、その・・・奴隷と言うのはピンからキリで、良い体つきの奴隷となると会社役員の年収に相当することもあって・・・」
「金は用意してある。北部の国境へ行こう。政府に睨まれると貴殿も商売がしにくいだろう」
「ほ、本当に買ってくださるんですか?」
奴隷商はウェンディを見て嬉しそうに笑みながら言った。
「あぁ」
「ありがとうございます」
奴隷商はウェンディに深々とお辞儀した。
ウェンディと奴隷商はサウスドラゴニアの北部国境に行って取引を行い始めた。
サウスドラゴニアの北部国境は亜熱帯で、木々や草花が生い茂っている。
巡回兵が少なく、逮捕率も低いため裏取引によく使われている場所だ。
「こ、こんなにもッ・・・!」
山のように積み上げられた紙幣を見た奴隷商は驚きながらそう言った。
「これ!全て本物ですか?」
驚く奴隷商はそう言いながら札束を持ち、パラパラと確認した。
「金や白金、宝石などでも良かったが・・・この量の鉱物は重量がな」
ウェンディは大量の紙幣を見てそう言った。
「取引するか?」
ウェンディは奴隷商を見て笑みながら言った。
「是非是非!よろしくお願いします!」
紙幣の束を持った奴隷商はウェンディを見て笑みながら言った。
契約成立の品として奴隷商から奴隷が持っていた戸籍を受け取ったウェンディはサウスドラゴニアの北部国境から数人の奴隷を連れてベラ・ジ・ルルへ戻り始めた。
(子供に関しては戸籍自体がない・・・か。陛下や六合様がどんな顔をするか・・・)
ウェンディはグローニアキャット族の年が離れた姉妹を見た。
同年、三月十三日。
数人の奴隷を連れたウェンディがラクスティアに帰還した。
「陛下、六合様、労働力を購入して参りました」
ウェンディは梨々香とリベードリヒを見てそう言った。
「・・・その女性は良いとして、その小さな子供が労働力?」
リベードリヒはグローニアキャット族の年が離れた姉妹を見てそう言った。
「奴隷商から買ったのでしょう?一気に連れては来れないから、とりあえず連れて来たんですね」
梨々香はグローニアキャット族の年が離れた姉妹を抱っこしながら言った。
「・・・そういうことです」
梨々香を見たウェンディはリベードリヒを見てそう言った。
「何日かかるの?」
グローニアキャットの姉妹を見たリベードリヒはウェンディを見てそう言った。
「衛生面を気にしながらなので・・・一週間ほどはかかります」
ウェンディはリベードリヒを見てそう言った。
「はぁ・・・まぁいいや、それくらい待つ」
ため息をついたリベードリヒはそう言いながらグローニアキャット族の年が離れた姉妹を見た。
梨々香とリベードリヒは奴隷たちを連れてイクイノックスに戻った。
「お腹は空いてますか?食事くらい用意できますよ」
グローニアキャット族の年が離れた姉妹を抱っこした梨々香は歩きながらそう言った。
「・・・食べさせてください」
冷や汗をかいた奴隷1は歩きながらそう言った。
「先ずはお風呂に入りなさい。臭いが酷い」
リベードリヒは歩きながらそう言った。
「・・・はい」
奴隷たちはリベードリヒを見てそう言った。
奴隷たちが入浴と食事を行っている間、梨々香とリベードリヒはウェンディが持ち帰って戸籍を見ていた。
「あの姉妹に関しては何もわからないね」
リベードリヒは戸籍を見てそう言った。
「数少ないグローニアキャット族だ。親も生きているなら保護したい」
梨々香はそう言うと、立ち上がった。