一章 滅びの一歩
ベラ・ジ・ルル皇国。
かつては深き緑に覆われ、恵みの土地と呼ばれていた。
しかし、今は飢餓と反乱に覆われた市の土地と呼ばれている。
「陛下、ベラ・ジ・ルル上空に到着しました」
リヴァ・ロッテ・グロッサは梨々香とリベードリヒを見てそう言った。
「ご苦労」
華千﨑 梨々香はタブレット端末を見てそう言うと、立ち上がった。
リヴァはお辞儀すると、部屋から出た。
「これがあの栄華の土地・・・」
リベードリヒ・コニファー・グヴァンゼァムはタブレット端末を見てそう言った。
千六百九十年、三月七日。
神軍拠点艦一番艦イクイノックスがベラ・ジ・ルル皇国上空に出現した。
ベラ・ジ・ルルは神気によって囲まれ、通信網が瞬時に破壊された。
交戦していたベラ・ジ・ルル軍と反乱軍はイクイノックスを眼前として恐怖し、固まってしまった。
「こちら神軍。全員武器を捨てろ」
イクイノックスから放送が流れると、両軍は武器を捨てて降参した。
武器を拾って神軍と戦うようベラ・ジ・ルル軍に命令する皇女は皇女が愛した聖職者に背後から斬られて倒れた。
同年、三月八日。
梨々香がベラ・ジ・ルル皇国に上陸し、ベラ・ジ・ルル政府と会談を行った。
会談の場に現れたのは、皇国の姫であるシャーロット・ジ・ルルーシャと聖職者だった。
「長々と話すつもりはありません。私は惨状を嘆き、支援を行いたいと考えております」
梨々香はシャーロットを見てそう言った。
「あ・・・その・・・」
シャーロットは梨々香を見てそう言うと、助けを求めるように聖職者を見た。
聖職者は資料で口元を隠し、シャーロットに仰せ遣わせた。
「・・・支援を行っていただくことはとてもありがたいです。ですが、見返りは何もありません」
シャーロットは梨々香を見てそう言った。
「見返りは要りませんよ。食料も医療品も建築資材も酒も煙草も全て配りましょう」
梨々香はシャーロットを見て笑みながら言った。
「そ、それじゃあ」
シャーロットは梨々香を見て笑みながら言った。
「姫、お待ちください」
聖職者はシャーロットを見てそう言った。
「私は」
梨々香が大声でそう言うと、聖職者は梨々香を見た。
「一国の主に判断を委ねているのですよ」
梨々香はシャーロットを見てそう言った。
「・・・」
聖職者は梨々香を見て冷や汗をかいた。
「この国の状態を見て、どのような気持ちになりますか?民が何を求めているか、一国の主ならわかっていますでしょう?」
梨々香はシャーロットを見て笑みながら言った。
「・・・」
シャーロットは聖職者を見て冷や汗をかくと、梨々香を見た。
「是非、支援をお願いします」
シャーロットは梨々香を見てそう言った。
「おのれルルーシャ!!」
聖職者が怒鳴りながら短剣を抜いた瞬間、短剣が突風によって吹き飛んだ。
「では、支援を行いますのでお達しの方をよろしくお願いします」
立ち上がった梨々香が笑みながらそう言うと、その場に居る官僚たちが怯え始めた。
同年、三月九日。
神軍の組織員が次々とベラ・ジ・ルル皇国に上陸し始めた。
防護服を着た神軍の組織員たちによって死体が一気に回収されて火葬が行われると、除菌清掃が行われ始めた。
「数が多く火葬方法が特殊であるため、遺体を遺族に帰すことはできません。よろしくお願いいたします」
梨々香は皇国民たちを見てそう言った。
「そんなことより、配給はまだかよ!」
「そうだ!」
「早く寄こしやがれ!」
皇国民たちは梨々香を見て怒鳴った。
「配給は除菌清掃が完了し次第開始します」
「配給所の設置場所はこの地図に書いてあります。配布用の地図は机の上にあります。よろしくお願いいたします」
梨々香が皇国民たちを見てそう言うと、皇国民たちは机に近づいて机の上に用意された紙の地図を手に取って見始めた。
午後三時十八分。
一部地域で配給が始まり、長蛇の列ができた。
配給所に用意された食料は途轍もない量で、一人一キロは食べられるほどある。
「おぉ!肉だ!」
「酒もあるぞ!」
皇国民たちは大量のワインと料理を見て笑みながら言った。
「受け取ったらさっさと退け。無駄な列を作るな」
神軍の組織員たちは料理とワインを配りながら言った。
一方、梨々香はルルーシャと話をしていた。
「この地域を重点的に支援してほしいんですが・・・よろしいですか?」
シャーロットは地図を指さし、梨々香を見てそう言った。
「わかりました。重点的に支援しましょう」
梨々香は地図を見てそう言った。
「良かった~・・・」
シャーロットは胸をなでおろし、笑みながらそう言った。
「しかし、条件を付けさせていただきます」
梨々香はシャーロットを見てそう言った。
「じょ、条件ですか?」
シャーロットは冷や汗をかいてそう言った。
「戦争から手を引くこと。これが条件です」
「何だ、そんな簡単なことですか。この国にはもうそんな余力はありませんから、条件を飲みましょう」
シャーロットは梨々香を見て笑みながら言った。
「・・・」
梨々香は再び地図を見た。
シャーロットが重点的に支援してほしいと申し出た場所は、世界第二位の貧困街、ラクスティアだった。