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美醜逆転世界で前世の記憶を思い出しました!

作者: 神埜ぴゆあ

レデアナ・ユークリフは怒っていた




婚約者である第二王子のロイ・ムーデアナのもとから帰る馬車の中


公爵家の馬車として外見はもちろんのこと中も振動が少ない、町で走る馬車よりも明らかに豪華なそれに揺られていることは産まれた時からこの環境にいるレデアナにとっては当たり前のことで感謝することでもない。むしろ、自分の心境による影響からか普段よりも乗り心地が悪く思え従者を怒らなければとも思っていた




レデアナはすべてにおいて不満だった


ロイは第二王子で王位第一位ではないし最近はレデアナのアドバイスが功をそうしたのか体系はふくよかさを増してきて肉厚たっぷりに目元が埋もれてきたことによりようやく見れるようにはなってきたが性格は暗くてジメジメしたままであり浮気なんか一向にしようとしない。


今日だってレデアナのためなら何でもやるよって後ろ向きなことを言ってきたのだ。あれでは外見がまともに見えるようになっても全く意味がない。女性なんか食い物としか思わず婚約者であるリデアナのことを顧みようともしないようにならねば一流の男ではないのにあれはまったくそこだけは変わろうともしない


その部分を無言で指摘するために優しくエスコートするためにつかまれた腕を振り払ってレデアナは帰ってきたわけだ


あの性格をなんとかしないといけない…そう考えていたところで




急ブレーキをかけた馬車の動きに何の警戒もしていなかった横に体は吹き飛ばされ頭を窓辺で打った





そして思い出したのだ




自分の前世の記憶を







「レデアナ、大丈夫かい?」




柔らかく暖かな手が自分の手を握るのを感じて目を開くと目元が肉で覆われるほど恰幅の良い少年が自分の手を握っていた。


豪華絢爛な服装だが、むっちりとした体はその服装の良さを引き出し切れておらず毛布に丸まっても一緒の印象を受けるだろう。レデアナの前世の感覚としては確実に太りすぎであるが、この世界の理想体型と比べるとまだスリムな方であると同時に頭が囁く。


何せもとは瘦せ型なこの目の前の婚約者をここまで育てたのはレデアナなのだ。自分の理想の体格になるように指示して毎食の後デザートを取らせ、走るのや歩くのも禁止した。それが正しいと思っていたし、実際この国の環境ではそれこそが正しかった。


だが、今は違う。貧乏貴族でありながら有名騎士を輩出するといわれていた前世の記憶からすればこのような体系はナンセンス。健康に悪いだけだ。


そもそも浮気をすることが甲斐性でありモテる旦那はステータスと思っているこの国の価値観とも前世の記憶を思い出した今では相違ができる。一途で何が悪い。むしろ一途であることはステータスだ。


こんなことを思うのは前世、騎士を輩出するために全力をかけすぎて婚約者に女らしくないからという理由で浮気されたことが原因ではない。えぇ、全くもってそれが問題ではありません。いや、ちょっとはあるかも




「レデナ?」




目の前の肉だるま…失礼、婚約者が声をかけてくる


今は見えないが昔の顔を思い出せば睨みつけているとも見えていたガリガリな顔つきを思い出す。だが、あれは痩せすぎているせいで目元が落ち込み優し気な眼差しが隠されていただけだった。


この国では優し気よりも欲望交じりの眼差しが良しとされるため、そのことにすら憤慨していたことを思い出す。思えば理想の体型にするためとはいえ痩せすぎていた体系をここまで持ってきたのはリデアナの苦労あってこそだった。方向性は違えど性格は変わらないらしい。それこそ今世の私と何度かうなずいていたところで額に当てられたぬくもりに気が付いて動きが止まる




「熱があるのかい?無理はしないでね」


「ろ、ろろロイ。だ、大丈夫よ」




実行相手は先ほどから目の前にいた婚約者。


あまりにも無反応な婚約者に痺れを切らしたのだろう。確認するように額に手を当てられるが、異性との肉体的な接触といえば腹筋や背筋の抑える時くらいしかなかった前世の自分と、貞淑が求められているため父親くらいしか接触がなかった今世の自分(なお、今まで婚約者に触れられても怒ることが多すぎて異性として意識はなかったものとする)。


思わず真っ赤になるのは仕方のないことだった


赤く染まる頬を見て目の前の婚約者が息をのむのが分かる




「…お願いだ。君のそんな顔他のやつには見せないでくれよ」


「ろ、ロイ…」




かっこいい言葉に思わず更に頬が赤くなるのがわかりつつもいい雰囲気の中相手に目線を向ける。ふくよかな手が自分の頬を撫でて……撫でて……




「ロイ、体を鍛えましょう」




肉だるまの体つきをみて冷静になった。流石に目が見えないほどの体つきは不健康だ


両手を握りしめる私の姿にロイが頬を染めていたことを私は知らない






あれから8年間がたった


公爵家として同じようなむしろもっと酷い体系をしていた父親や騎士たちも巻き込みリデアナ考案スパルタメニューを行わせた結果もあってユークリフ家は驚くほど全員健康的なマッスルボディを手に入れていた


絶世の美女ともいわれるほど美しい母親に残念そうな顔をさせるのは申し訳なかったが今の体格は健康に悪い。もっと長生きしてもらいたいのだと娘可愛さに押し切らせてもらった。ダイエットを始めてから動機息切れがなくなったのも周りに受け入れられた理由の一つだろう。一つ下の妹とはあまり仲良くなかったが、この前ダイエットを成功していた騎士の体を嘗め回すように見ていたのを発見してから仲良くなった。


まさか、今世の私は妹が筋肉フェチだったなんて想像すらしなかっただろう。今度筋肉にいい食物を教える予定だ






レデアナ・ユークリフは幸せだった


今だって第二王子は第二王子のまま王位継承権は二番目で肉厚でようやく目元が隠れるくらいふくよかにした体は絞られ優し気な青い瞳とバランスよく鍛えられた肉体をさらけ出しており学園の服装が似合っているし、優しく一途にレデアナのことだけしか見ていないことが伝わってくるその性格は変わっていない


前世を思い出したレデアナの価値観が少し変わっただけで状況は何も変わっていないがレデアナは幸せだと胸を張って言えた





「あぁ、僕のレデナ。一生君を離さないよ。大丈夫、君の望まないものはすべて僕が排除して見せるからね」





婚約者のロイは一途が行き過ぎてヤンデレとなっていることも


この場所の舞台が美醜逆転乙女ゲームの舞台になっていることも知らないまま


幸せだと思いを抱いて学園に入学する一歩を踏み出したのである


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