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里佳子は起きた時、昨日の同窓会の二次会で礼司と京子と飲み過ぎて、よく覚えていなかった。
ただ、礼司が穏やかでたくましく見えて、親しくなりたい気持ちになっていた。
いや、親しいだけではダメだ。
レイカンパニーの社長だからではない。
あの優しさに包まれていたいと強く思った。
自分のものにしないと。
里佳子は礼司にLINEをした。
『礼司君、昨日はありがとう。とても楽しい時間だったよ。美味しい料理をごちそうになり、いろんな話しを出来て嬉しかったよ。話し足りなかったのでまた行きませんか?
今度の日曜日はどうですか。』
思い切って誘ってみた。
これで返事が来なかったら縁がなかったと思い諦めよう。
LINEはすぐに既読になったがなかなか返信が来なかった。
やっぱりダメかと里佳子は思った。
夕方、スマホを開くと礼司から返信が来ていた。
仕事が忙しく気がつかなかった。
『里佳子ちゃん、昨日は付き合ってくれて、ありがとう。俺もとても楽しかった。実は俺から誘おうと思っていたんだ。先を越されたね。日曜日、喜んで。楽しみにしています』
里佳子は、天にも上がる気持ちになった。
自分にも春がやってくる。
でも、まだこれからだ。
何としてでも自分のものにしよう。
どんな手段でも使おう。
『礼司君、返事ありがとう。嬉しいです。では日曜日の十八時に青山あたりでどうでしょうか』
『大丈夫だよ。京子ちゃんも大丈夫なのかな?』
え、京子⁈礼司は京子も来ると思って承知したのか。
里佳子はガッカリしたが、これも利用してやろうと思った。
『京子には私から連絡しておくね。当日、よろしくね』
当然、里佳子は京子に連絡しなかった。
日曜日になり、里佳子は待ち合わせの青山のカフェに行った。
約束の時間より一時間も早く着いた。
礼司は時間通りにやってきた。
「里佳子ちゃん、こんにちは」
「礼司君、今日は来てくれてありがとう」
「あれ、京子ちゃんは?」
「ああ、京子は急に用事が出来て来れなくなったんだ。ゴメンね。今日は二人でいいかな」
思っていたとおりの想定問答だ。
不自然なく里佳子は答えた。
「あ、そうなんだ。俺は構わないよ」
その答えに、里佳子はホッとした。
「私のお気に入りのお店を予約してあるから、行こうか」
里佳子は急ぐように話を進めた。
お店は、イタリアンでいつも混んでいる評判の良いお店だ。
里佳子は個室を予約しておいた。
フルコースを満喫して、里佳子が赤ワインを選んだ。
予想以上に盛り上がった。
里佳子は礼司の紳士な雰囲気に完全に心を奪われてしまった。
礼司も里佳子のことを女性として素敵だし、話も合うし、付き合ったら上手くいくと思った。
店がラストオーダーの時間となった。
「里佳子ちゃん、よかったら、うちで飲み直さないか」
礼司は酔った勢いもあるが、思い切って誘ってみた。
「うん、もちろん」
里佳子は間髪入れずに答えた。
タクシーで向かった。
「朝までいるよ」
里佳子は礼司を見た。
「ずっといてもいいよ」
礼司も里佳子を見た。
その後、里佳子は週の半分くらいは礼司の家に泊まった。
朝ゴハンを二人分作るだけで、こんなに幸せな気持ちにさせてくれる。
里佳子は礼司と付き合うことになり心から満足していた。
こんな気持ちになったことは初めてだった。
礼司も里佳子がいてくれると、毎日に張りが出てくるのが分かった。