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「あれ、ここはどこだろう」
京子は目を覚ましたが、ここが礼司の部屋だとはすぐには思い出せなかった。
何時間だったのだろう。
もう外は暗くなってきている。
その時、部屋のドアが開いた。
「京子ちゃん、起きたか。ぐっすり寝ていたから、起こさなかったよ」
礼司だった。
礼司は経緯を話して、スマホで撮った写真を見せた。
京子は、それを見ても何も感じなかった。
もう武志は好きにすればいい。
未練も何もなかった。
こんなに長く夫婦をしていても、一瞬でどうでもよくなるものだと知った。
そして、礼司がここまで自分のために動いてくれたことに感謝した。
それと同時に礼司は自分に気があるのだろうと思った。
自分も礼司とだったら上手くやっていく自信がある。
「礼司君、いろいろとありがとう。大変だったでしょう」
「京子ちゃんには恩がある。全く気にしないで」
「恩だなんて。小学校の時のことじゃないの」
「俺は嬉しかったんだ。自分にも味方がいる。そう思えたから、グレなかったし、いじけなかったんだ。今の俺があるのも京子ちゃんのおかげだよ」
「ありがとう。今日は帰るね。会社に私から話しておかないと」
京子は鞄を持って、玄関に向かった。
「ゆっくり休んで、今後のことを考えるといいよ」
礼司はそう言った。
京子は引き止めてくれるのを期待したが、引き止められなかった。
京子は家に帰り、レイカンパニーの人事課に状況を伝えた。
レイカンパニーは、公になるとパワハラで世間から責められるかもしれないので、しばらく静観することになった。
病休扱いとするとのことだった。
これでしばらくは給料は入ってくるので京子は安心した。
もう武志のことはどうでもいい。
礼司を頼っていこう。