表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同窓会  作者: T2
1/16

人は、人生の折り返し地点に立つと、昔を思い出す

「あなた、朝食の用意が出来ましたよ」

 山下京子は、いつものように二階でスーツに着替えている夫の武志を呼んだ。


 武志は慌しくゴハンをかけ込んだ。いつもギリギリだ。

「今日も夕食はいらないんでしょ」

「ああ、今日も仕事で遅くなる。夕食はいらない」

 ここ一年くらいは、ほぼ毎日武志は夕食は家では食べない。


 毎日残業で、タクシー帰りの日もある。

 土日の休みも接待ゴルフや、平日やり残した仕事をやりに会社に行く。


 武志の会社は一部上場の食品会社だ。『日本太陽食品』。名前をいえば、誰もが知っている。


 そこで、部長をしている。おそらく、取締役までは固いだろうと会社の皆から思われている。やり手だ。


 二人の間には、一人息子がいるが、一昨年、大学を卒業し、商社で働いている。今は、イタリア支社で働いており、家に帰ってくるのは、正月くらいだ。


 息子が家を出てからめっきり夫婦の会話が減った。

 京子はそれに対しては不満はなかった。お互い、あまり干渉しないのが私たちにはいいのかもしれない。


 専業主婦として、家のことをしてきたことに後悔はない。

 ただ、息子が家からいなくなり、毎日、夫を送り出すだけの生活に、少し疑問を感じ始めていた。


 いつものように、掃除、洗濯をし、庭の花に水をやった。花は京子が種から育てたものだ。今日も綺麗に咲いているな、でもいずれ枯れてしまうのだろうかと思いながら、水をかけた。


 郵便受けに、京子宛の手紙が来ていた。

 自分宛の手紙なんてあまりない。なんだろう。

 小学校の同窓会の案内だつた。

 卒業してから、三十年経っている。

 

『皆様、お元気でいらっしゃるでしょうか。泉小学校を卒業して、三十五年が経過しました。もう、立派なおじさま、おばさまになっていることでしょう(笑)

この際、お爺さん、お婆さんになる前に集まり、旧交を温めて、健康のことなどで盛り上がりましょう(笑)

突然のお誘いですみません。

ぜひ、ご参加をお待ちしております。』

 

 一か月後の土曜日の午後六時、場所は都庁の最上階のレストランだ。

 京子は、手紙をリビングのテーブルに置いた。


 いまさら、同窓会に行っても面白いのかな。

 小学校の友達とは一人だけ、浅田里佳子とは年賀状のやり取りが続いている。

 しかし、里佳子と会ったのはもう三年前位になるだろうか。


 急に連絡があり、離婚するだの言い出して、呼び出されて話しを聞いた。愚痴を言いたかったのだろう。

 あれから、どうしたのだろう。


 今日の夕飯も京子はひとりで食べた。最近はどうせ一人分なので、スーパーの弁当を買ってくることが多い。作るのが面倒になってきた。

 食事は食べる人がいるから、作る気がおきるのだと、分かった。


 弁当を食べて、お風呂に入り、テレビを見て、寝落ちして、気がつき、ベットで寝る。

 朝、起きても、武志が昨夜、いつ帰ってきたのか分からない。

 毎日がこの繰り返しだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ