プロローグ
ライネス・ハッシュヴァルトは信仰の対象だった。
国の最大宗教の司教の元に生まれた彼女は、魔法の天才と称され齢20になるころには聖女と呼ばれるようになった。
そして、彼女は聖女という肩書に疲れてしまった。
ライネスは教会を抜け出して冒険者になると決めた。国の外に出たかったのだ。
ある夜、静かに教会の扉が開く。
月明りですら輝く純白のドレスを身にまとって抜き足で街を歩く。
ドレスの裾が汚れないように冒険者ギルドに向かった。
ギルドの扉を開けると一斉に視線が彼女に向く。
あるものは声をあげ、あるものは声を失う。
「冒険者になりたいのだけど」
そう告げると受付の目が見開く。
「聖女様!?どうしたんですか一体!?」」
受付の質問はもっともだった。
「わたしにもしたいことくらいあります」
さぁはやくと受付を急かす。
何度も躊躇う様子を見せるが遂に根負けして、ライネスは冒険者になった。
渡されたギルドカードにライネス・ハッシュヴァルトと書いてある。
彼女はとても嬉しくなり、その場で跳ねた。
「ありがとう!」
ライネスはそう言ってギルドを出て教会に戻った。
天蓋がついている豪華絢爛なベッドの上でライネスはギルドカードを眺めている。
たかが冒険者になるためにこれまで苦労したことを思い出していた。
そして、呟いた。
「ほんとうに聖女って蔑称ね」
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