四十三話 力量の差
簡単なあらすじ『全員vs1だからと調子の良い発言をしたクボタさん。その勝敗やいかに』
アルワヒネはプチ男とケロ太、ミドルスライム、チビちゃん……そして最後に俺を挑発した。もしかすると彼女は俺が魔物に近い生物だと見抜いているのかも知れない。
だが!そんな事はどうでも良い!
俺は今怒っているのだ。
それは勿論、俺達全員まとめてかかってこいと言っている(多分)アルワヒネに対してである。
いやむしろ、ここまで舐められて怒らない方がおかしいか。それだけ戦力差があると言われているようなもんなんだからな。
まあ良い。お喋りはここまでとしよう……
さあアルワヒネよ!
俺達を怒らせた事、今後悔させてやる!
とは言ったものの、少し心配だ。
でも流石に全員なら、勝てるよな……?
「わぁああああ!」
これはアルワヒネにぶん投げられ、宙を舞っている最中の俺の悲鳴だ。
ちなみに、先程話していたのはこうなる3分前くらいの俺だ。
全然ダメだった。
全く歯が立たなかった。
プチ男&ケロ太は試合開始直後に猛ダッシュしてきた少女によって投げ飛ばされ、ミドルスライムと、その背後に隠れていた俺もその数秒後には空を飛んでいた。
何だかルーの時よりも容赦がないような気がする……のは良いとして。
まさかミドルスライム共々放り投げられるとは思わなかった。アルワヒネはとんでもない怪力少女だったようだ。
「ぎゃあああ!」
落下の衝撃と、地面とミドルスライムにサンドイッチされた痛みによって俺は叫ばずにはいられなかった。これはコイツの後ろに隠れてまずは様子見しようとしていた俺への罰なのだろうか。
その後少ししてから、ジェリアとルーが尽力したお陰で俺はバランスボールの下から救出された。
「ちょっとクボタさん大丈夫?」
ジェリアが心配そうな顔で俺を見ている。
痛みはかなりのものだったが、幸い骨は折れていないようだ。
それを確認した俺は「めっちゃ痛かったけど、とりあえず大丈夫」と彼女に告げ、上体を起こす。
「それで、どうだい?練習試合の様子は」
「どうも何も、もうチビちゃんしか残ってないじゃないの……でもまあ、あの子は結構頑張っているわね。流石私のチビちゃんだわ」
俺が戦況を聞くと、ジェリアは少し誇らしげにそう返した。
良かった。チビちゃんだけはまだリタイアせず持ち堪えているらしい。
俺は先程まで自分とミドルスライムが立っていた場所へと目を向ける。やはり、二匹の戦いはまだ続いていた。
しかし、どちらかといえばアルワヒネの方が優勢であるようだ。
その場からなかなか動かずに体の一部を伸ばして攻撃してくるチビちゃんを相手取り、少女はちょこまかと動き、その球体を翻弄していた。
少女が優勢となっている原因は恐らく、チビちゃんがやや消極的な戦い方をしている事だと予測出来る。
多分あの子は今、「踏ん付けたらどうしよう」とか思っているのだろう。
以前戦った時とはエラい違いだ。
チビちゃんは一度仲間と認識した者には優しいタイプの魔物であるらしい。
が、今はあくまでも練習。気にする事はないはずだ。それに、アルワヒネもそれを望んでいるのだから。
しかし、他人の魔物にあーだこーだと指示を出すのもどうかと思ったので俺は口を閉し、傍観に徹していると……
煮え切らないような戦いばかりしているチビちゃんに業を煮やしたのか、アルワヒネはあろう事かチビちゃんの体をよじ登り、そして。
その頭上で光を放っていた首飾りを奪い取った。
チビちゃんの大切な大切な、首飾りを。
「「あぁ~!!」」
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