三十六話 夢からの贈り物……?
簡単なあらすじ『あの時の少女、発見』
No.127 アルワヒネ
魔草類マンドラゴラ科
高さ 30cm前後
重さ 300~400g
能力値(野生下での平均値)
『力』1000~1100
『魔力』0
『機動力』1500~1600
討伐依頼受諾可能最低ランク
E (D~C推奨)
・ドロップ地方の奥地にのみ生息。
・ついさっき発見。
この魔物は※『マンドラゴラ』の亜種なのだが……最早それとは全くの別物となってしまっている。
もう分かると思うが、アレと比べて戦闘能力が高過ぎるのだ。
その上ちっこいのでこちらの攻撃は当たり辛く、更にコイツらは、一箇所に密集するようにして生えているので、一流の戦闘職だろうとこの魔物から勝利をもぎ取るのには困難を極める。
……という、とても見た目からは想像出来ない程に恐ろしい魔物なのである。
ちなみに、その戦い方は『自身の肉体をフルに使用した暴力のみ』なんだそうだ。まさかの武闘派だ。
そして、そんなコイツの見た目とは……
全て『とっても可愛らしい少女のような姿』だ。
また、これには一応理由(と言えるようなレベルではないが)らしきものがある。
それはコイツらの生えている場所だ。
ご存知の通り、ドロップ地方の最果てには『女神像』と呼ばれている物があり、コイツらはその近辺に生息しているのだが……
そのせいで、姿、戦闘能力等を〝それ〟から吸収してしまったのだと推測されているんだそうだ。相変わらずガバガバな事に……
そして、この像は存在している理由、製作者等が全く分かっておらず、そのためかは知らないが名前通り、『女神が眠りについている姿』として崇める者も多くいるようだ。
ちなみに、アルワヒネもその像のついでに神聖視されているようで、討伐依頼は殆ど出されない。
……と言うか、そもそもこの魔物は『女神の使い』との二つ名がある事からも分かる通り。
その像に近付こうとしたり、コイツら自身を引き抜こうとさえしなければ襲っては来ない、討伐などする必要のない無害な存在なのだ。
ただし、コイツを引き抜いてしまった者は必ず死ぬ。と言った噂もあるようだ……
やっぱり、〝アレ〟みたいな感じでやられるのだろうか?俺は気絶で済んだみたいだが……
注釈
※ マンドラゴラ 『第一章五話 絶叫する人根』にて紹介
「この子、多分アルワヒネよ。
ドロップ地方にいる結構強い魔物ね。
でも、この魔物が街にまで来るなんて話、聞いた事ないわ……
貴方の話はまだ信じられないけれど、とにかく。
ただ眠っていたワケじゃないって事だけは良く分かったわ」
ジェリアは集会所兼酒場の壁にもたれ掛かり、ぐったりとしている頭に植物の生えた少女を見、そう言った。
こんなにも可愛らしい証拠が目の前にあると言うのに、まだ彼女は俺が前にした話を信じてくれないらしい。
「ま、まあ、〝そっちの話〟はそれだけ分かってくれれば充分だよ。
でも〝あれ〟は違うから!誤解だから!
俺をああ呼んでるのは、あの時……」
「だ……だ~り~ん」
すると、また植物少女は俺をそう呼んで足にしがみ付いてきた。
ああもう、今ジェリアに弁明しようとしている所なのに……
「クボタさん……貴方やっぱり……」
仕方ないので少女を撫で撫でしていると、ジェリアがやや引き気味にそう言って後退りをした。
止めてくれ、何で無実である俺がそんな目で見られなければならないんだ。
「だから違うんだって!!
そもそも俺がドロップ地方の奥地まで行ったのなんか今日が初めてだし!!
だからこの子と会ったのも今日が初めてなの!!
俺とこの子とは何の関係も無いの!!
俺が自力であんな所まで行けないってのは、君だってよく知ってるだろ!?」
「……確かに、それもそうね」
ジェリアはそこまで言って漸く、目の前の男を信用してくれたようだ、ほんの少し。
もう、あの話が夢かどうかなんてどうでも良いのでこれだけは本当に信じて欲しい。
(全く、アライアンスの人間を疑うなんて酷いヤツだ……)
とか思っていた時、少女の頭の葉に何か文字のようなものが書かれている事に気付いた。
「ジェリアちゃん。ちょっとコレ見てよ」
そう言って俺は彼女をこちらへと呼び寄せ、顔を並べて少女の上でぴこぴこと跳ねる葉を見つめる。
要約するとそこには、『恥をかかせた罰だ!暫く帰ってくるな!このバカ!』みたいな事が書かれていた。
これを書いた人物は〝台座にいた彼女〟で間違いはないだろう。どうやって書いたのかまでは分からないが。
しかし、流石にちょっと可哀想だ。
俺達の気絶と、彼女が激昂した原因はこの子(この子他数名、と言った方が正しいか)にあるとは言え、その罪を償う方法が暫くの追放とはな……
「貴方の話が本当だと仮定すると……
それで〝その人〟を怒らせたこの子は追放されて、仕方なく私達に付いて来た、と。
ドロップ地方から、ずっと……」
「で、ここに入った俺達を待っていたら、キングさんの『アレ』が長過ぎて疲れちゃった……って、感じかな」
前半はジェリアが、そして後半は俺が受け持ち、少女が恐らくこうしたであろうという過程は完成した。
先程も言ったが、恐らくこんな感じで彼女はここへと、そしてこの街へとやって来たのだろう。
「だー……りん?」
不意に、アルワヒネが俺の隣にいた女性を見上げてそう言った。
そこですかさず、俺は彼女へとこう言う。
「ホラね。これしか言えないんだよ、多分。
だから俺は無実なんだよ?分かってくれた?」
「……別に、最初から〝そこまで〟疑ってないわよ。
で、この子どうするの?
私達に……いいえ、正確に言うと貴方に付いて来たんでしょ?」
ジェリアはそう言う。
……あれ?
今〝そこまで〟って言ったよな?
じゃあ少しは疑っていたのか。
悲しいよジェリアちゃん。俺は凄く悲しいよ。
それはともかく、俺は悩んだ。
いや、可哀想なので家に連れて帰るのは確定事項なのだが。
〝この子をコルリスの相棒に出来はしないか〟と悩んでいたのだ。
この魔物……コルリスの相棒には今の所ピッタリだと思う。
(特に見た目が)
しかし、懐いてくれるかどうか、相棒になってくれるかどうか、それ以前に少女にはタイムリミットがある……等々の問題があり、普通の魔物よりもこの子を我が家に迎え入れる事は困難となるだろう。
上記二つはコルリス次第として、最後の一つが問題だ。
ある程度時間が経ったら俺が〝彼女〟の元へと赴き、直談判でもしてみようか……その時はちゃんとまた会えるかな?
などと考え、怒っているワケではないが口を尖らせ、困っているワケでもないが視線を泳がせていると。
俺と似た表情をしているジェリアと目が合った。
もしかすると彼女も今、同じような事を考えているのかもしれない。
「……クボタさん、多分今。
この子をコルリスの魔物に出来ないかな……
……とか、考えてるわよね?私と一緒で」
ジェリアは言う。
やはり正解だったようだ。
「うん……とりあえず。
コルリスちゃんと早く会わせたいし、さっさと帰ろうか。
どの道、会わない事にはそう出来るかどうかも分からないからね」
「そうね、そうしましょ。
さあおチビちゃん、ついて来て。
一緒に帰りましょうか」
「チビちゃんもいるんだし、その呼び方だと後々困るんじゃない?
……まあ、良いか」
こうして俺達は頭に葉の生えた少女を連れ、コルリスの待つ自宅を目指すのだった。
もしも相性が良くて、本当にパートナーとなれたなら、それを永遠のものとするため、〝彼女〟の所にもう一度、行かなければならない。
そうするためにも、もっと強くならないとな……一人ではまだ、あんな場所行く事すら出来ないんだから。
そんな事を考えながら、俺は歩いた。
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