二十七話 虫の天国二人は地獄
簡単なあらすじ『クボタさん勝利!』
牧場を後にした、いつもよりメンバーのぷるぷる度合いが高い我ら一行は、ひとまずドロップ地方にてコルリスの魔物探しを始める事にした。
ザキ地方、ロシバ地方の魔物はそこそこ強いものが多く、例え仲間に出来たとしてもコルリスの手には余るかもしれない。
なので探すのならばカムラ地方が一番だと思ったのだが……何故か、今日に限って大量のトロール達が大移動しているらしく、魔物の多くいる場所への立ち入りが禁止されていたのだ。
(まあ勝手に入れば良い話ではあるが、俺にそこまでの度胸と実力はない)
と言うワケで、彼女は虫系の魔物がそんなに得意ではなかったと知りつつも、俺達はドロップ地方へとやって来た。
つまり、ここへ来たのは消去法を用いた結果なのだ。
しかし……捜索は難航していた。
「おわぁ!」「きゃあ!」
もう何度目だろうか。またドラゴンフライが俺達の頭上を凄まじい速さで飛び去って行った。たびたびあるこれのせいで鳥肌が一向に治らない。
「……ねえクボタさん。
やっぱりカムラ地方に行きましょうよ」
ジェリアはチビちゃんとミドルスライムを自身の前後に配置し、その間に身を隠すようにしながらそう言う。
どうやら彼女も、魔虫類の魔物はあまり得意な方ではなかったようだ。
「今は危険らしいし、それは止めといた方が良いと思うよ……まあでも、場所を変えるってのはアリだよね」
彼女にそう答えながら、俺もぷるぷるの間に入れてもらおうと試みる……が。
ジェリアにそれを拒まれたばかりか、俺の頭の上にいたプチ男までもを奪われてしまった。
一応言っておくと、別に何かヘンな目的があって、俺は彼女のいるスライム達の間に入ろうとしていたのではない。
後になって思い出したのだが。
俺も結構、虫は苦手だったのだ。
よくよく考えてみれば、魔虫類の魔物とまともに対峙したのなんてオオアシナガキュウケツの時くらいだし。
しかもあれは依頼のため、仕方なく動いたようなものだったはずだ。
ただ誤解のないように言わせてもらうと、少なくとも俺は〝前にいた世界の常識の範囲内〟くらいな大きさの虫なら大丈夫なんだ。
でもここにいるのは、デカ過ぎる……あんなのを捕まえるには少し勇気が足りない。
そう、だから捜索は難航しているのだ。
と言うか正直に言うと、さっきからジェリアも俺もビビって全然移動していないので、捜索の進捗状況は『難航』どころか『座礁』と言った方が正しいような気がする。
それに、今更ながらどうやって魔物を捕まえるのかも未だによく分かっていない。
このままここに長居すれば、俺と彼女は鳥肌に全身を覆われターキーになってしまう。その前にどうにかしなければならない。
何かヒントでもあれば……そうだ!
ジェリアだ!彼女はミドルスライムを仲間にしているワケだからな。
そう思った俺は、経験者であるジェリアに「魔物ってどうやって捕まえるの?」と、聞こうとしたが。
以前同じ事を聞いて意味の分からない答えが返ってきたのを思い出し、質問を胸の内に放り捨てた。
……じゃあダメだ。
とりあえずここを離れよう。
それに、ビビってばかりいては捕まるものも捕まらないしな。こんな事やっているくらいならザキ地方かロシバ地方にでも行った方が百倍マシだ。
「よし分かった……もうダメだ!
ジェリアちゃん、とりあえず戻ろう!別の場所にしよう!」
「何だか、急に投げやりになったわね。
でも賛成、そうしましょ……ボソ(ヨシ!)」
彼女がそのような事を言いつつも、ガッツポーズしたのを俺は見逃さなかった。
とにかく、そうして俺達は踵を返し、元来た道を歩き出す……
すると突然.チビちゃんが大きく震え出した。
「な、何だ!?」
「どうしたのチビちゃん!?」
狼狽える俺達は、プチ男が上空を指すようにぷるっとした事で気付いた。
そこにいるドラゴンフライの尻尾に、チビちゃんのティアラ……じゃなくて。
首飾りが引っ掛かっている事に。
「「あぁー!!」」
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