二十四話 早朝の戦い
簡単なあらすじ『コルリスちゃんの魔物探し……の目的地ではありませんが、クボタさんは牧場へとやって来ました』
俺が事の次第を説明し続けていると、漸くサイロ君は理解してくれたようで、少し落ち着きを取り戻した。
ちなみに……俺は、自身の潔白の主張を第一としたため、またコルリスと俺は夫婦ではないと言いそびれてしまった。
(でも、これは許して欲しい。だって俺は、本来不倫なんてするような奴じゃないのだから)
「なぁんだ……俺ビックリしちゃいましたよ。
しかも、相手はあのジェリア嬢だし」
サイロ君は先程石像化していたせいで固まったのか、首をぐりぐりと動かしながらそう言う。
だがそれにしても、すぐ勘違いする奴だ……
とにかく、ジェリアの前でそのような事を言い出す前に落ち着かせる事が出来て本当に良かった。
「ん?ジェリアちゃんの事知ってるの?」
「知ってるも何も、あんな大金持ち知らないのなんてクボタさん並の世間知らずしかいませんよ?」
「……」
そして相変わらず一言多い。
だが、これもまた久し振りだ。
はいはい、そうですよね。確かに彼女、あんな家住んでるんですもんね。悪かったですね世間知らずで。
「でも、あのちっこいお嬢さんの魔物探しですか……
とりあえず、ここにはゴブリン達とユニタウルス、後はコカドリくらいしかいないんで、残念ながら力にはなれなさそうです」
サイロ君は続けてそう言う。
確かに、ここにも割と沢山の魔物がいた事を思い出したが、彼の言う通りその魔物達は多分、コルリス向きではないような気がする。
それに、頼んで貰おうとするのはジェリアからも止められているのだし、彼が例えそうしたとしてもここは遠慮させてもらおう。
「ありがとう、でも大丈夫だよ。
ここで野菜を買ってから探す予定ってだけだからね……
だから、もう戻ってもいいかな?
このままだとジェリアちゃんに怒られちゃうよ……勿論、君のせいでね?」
「……はい、スミマセン。
じゃ、今回はちょっとおまけしときますよ」
ほう、ならまあ仕方が無い。
そう言う事なら、さっき俺を世間知らずの例えにしやがったのについては水に流してやるとしよう。
俺達が牧場の入り口へと戻ると、ジェリアは既に適当な数の野菜を選び終えていた。
「随分遅かったわね。ほら、このくらいで良いでしょ?これ買ったらすぐ出発しましょう」
彼女はそう言い、プチ男と共に抱きかかえている野菜を俺に見せつけてきた。
……うん、流石しょっちゅう泊まりに来るだけはある。量も種類も文句無しだ。コルリスもきっと喜ぶだろう。
ただ、いい加減解放して欲しいのか、そこでもがいているプチ男の方にどうしても目が行ってしまう……
恐らく先遣隊ゴブリン達にプチ男を取られないよう、さっきからずっとそうしているのだろう。
「うん、丁度良いと思うよ。ありが……」
「あぁ!お、おきゃ、お客様!
そんな事をしてはお召し物が汚れてしまうっス!
さあ、後は俺……私がやりますので!」
そこで俺の言葉を遮ったサイロ君は、ジェリアから素早く野菜達を奪い取ると梱包の準備を始めた。
……なるほど凄いな、これが大金持ち。
もとい、『ジェリア嬢』の力なのか。じっくり観察させてもらうとしよう。
しかし、観察させてもらおう……としたその直後。
攫われた野菜達の中で一人、いや一匹ハブられたプチ男がぼとりと地面に落下する音が聞こえた。
すると、それを見た先遣隊ゴブリンの一匹が『大丈夫か?』みたいな表情でプチ男へと優しく触れ。
そうされたプチ男は嬉しそうに体をぷるぷるさせたが、すぐにまたジェリアによって拘束されてしまうのだった。
……とかまあ、そのようなどうでも良い物事の一部始終を眺めていたら、いつの間にかサイロ君の梱包作業が終わっていたようだ。
が、ジェリア嬢の持つ力がどれ程なのか見物する事もまた、さっきの事と同じくらいどうでも良いと気が付いた俺は。
野菜の詰められた箱を手に取り、次にサイロ君に料金を手渡し、そして簡単な挨拶をした後、牧場に背を向けて歩き出した。
すると、サイロ君がそんな俺達を呼び止めた。
入れ忘れた野菜でもあったのだろうか?
「どうかしたの?」
「クボタさん、お忙しい所申し訳ないとは思いましたけど、いつまた会えるか分かんないんで……
言います!!
一つ、頼みがあります!!」
「え、何?」
「俺と……俺と戦って下さい!!
俺、あの試合を見てから感動して、また魔物を鍛え始めたんです!!
突然スイマセン!!でも、どうかお願いします!!」
そう言ってサイロ君は深々と頭を下げる。
……俺は、俺は。
確かに、ジェリアにもコルリスにも、いやその他にも割と結構なものに弱く。
勿論、そう言うのにも弱い。
よってこれを断る事は多分、出来ないであろう。
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