十九話 私を離さないで
No.59 スライム
不定形魔水類ミズタマモドキ科
体長 平均3m
体重 250~300kg
能力値(野生下での平均値)
『力』650~780
『魔力』0 (魔力を有する個体なら平均200程度)
『機動力』200~270
討伐依頼受諾可能最低ランク
E
・この国の至る所に生息。その中でも湿地帯、洞窟、狭い場所等を好むらしい。
・ついさっき発見。
コイツはミドルスライムのように複数のプチスライムが合体して出来た魔物ではない。
つまり、元々はただのプチスライムである。
あのように弱かった魔物が捕食者から逃げ延び、プラントスライムのように変な進化もせずにすくすくと成長したそれは、感動のあまり知らない個体でもついつい抱き締めてしまいそうになるが……
しかし、コイツも他のスライムと同様、同種には敵意を剥き出しにするし、自分より弱いと分かれば人間にもすぐ攻撃してくるので注意が必要である。
そんなスライムだが、体内に吸収した物体が飽和状態となって発生するとされている『強制的な進化』さえ回避出来れば、一応どんなプチスライムでもコイツよりちょっと小さいくらいのサイズにはなる事が出来るようだ……
とは言っても、こうなれるプチスライムは一万匹に一匹くらいらしいが。
だからコイツは現存しているもの全てが飽和の来ない強靭でブラックホール並の胃袋と肉体を持ち、尚且つ危機察知能力が高かった、スライム界のエリートでもあり。
だが逆に言えば、人間にとっては油断禁物のかなり手強い魔物なのである。
当然それがちゃんとした手続きを踏み、討伐依頼の受けられるEランク以上の戦闘職だったとしてもだ。
最後に余談ではあるが、コイツが更に大きくなり、それ以上成長出来ない姿とされている魔物は『キングスライム』と呼ばれているらしい。
これがもっと大きくなるとは……一体、どれ程の年月が必要なんだろう?
とにかく、キングへの道は険しそうだ。
簡単なあらすじ『ジェリアちゃんはロシバ地方で見つけたどデカいスライムの元の飼い主でした。彼女はその子に自分の所へと戻って来てもらいたいようです』
意を決して立ち上がり、スライムへと近づいて行くジェリアと俺。
元々俺達がいた茂みにはプチ男とルー、それにミドルスライム、つまり魔物全員が待機している。
ルーはともかく、あの二匹がいるとどデカい球体を刺激しかねないからだ。
だからコイツらには、もしもの時以外出て来ないようにと指示を出している。
とは言え、もしもの事など考えたくはないのだが……まあ良い。
さて、コイツに彼女の思いはちゃんと伝わるのだろうか?
スライムがぶよぶよとその巨体を揺らし、こちらに顔(無いけど)を向けたようだ。
どうやら俺達の存在を認識したと見える。
だがしかし、今の所襲って来る気配は無い。
「チビちゃん!私よ、ジェリアよ!」
そしてすぐさま、ジェリアはスライムへとそう叫んだ。
ちなみに俺はその時、口を挟みたくなったが、とりあえず大人しくしておいた。
あれはもう、『チビちゃん』という名前は相応しくない程大きいが、多分彼女と別れた時にはそう呼べるくらいのサイズだったのだろうからな。
「あの時はごめんなさい、チビちゃん……本当にごめんなさい!」
彼女は続けざまにそう言うが、再び溢れ出た涙によってそこで言葉を遮られてしまった。
だが、スライムは彼女の発言を耳(耳も無いし、聞こえてもないと思うけど)にしても尚、さっきからずっとやっているぶよぶよとした動きを止めようとしない。
そこから察するに……恐らくだが、コイツは何か悩んでいるように見える。
こう言う時、ペットの犬とかならば大喜びで飼い主に迫って来るはず……
あれが何を考えているのかは分からないが、しかし……余程辛い別れでもしたのだろうか?
とは言え、いくら今まで育てていた生物を逃がしたのだとしても、彼女があれほど好きなスライムに冷たく接する姿は想像出来ないのだが……
と、その時。
スライムが動きを見せた。
大きなぷるぷるは体の上方のみを動かし、それをこちらへと伸ばし始めたのだ。
また、それは何処か俺達を覆い尽くそうとしているように見えなくもなく、本来第三者であるはずの俺ですらも少しばかり不安になってしまった。
すると、ジェリアも同じような気持ちだったのか、彼女は俺の手を強く、固く握り締める。
と言う事は、つまり。
俺だけで無く、彼女までもが不安を抱いていると言うのだから……
残念ながらこれは、〝もしもの時〟であるようだ。
ガサリ!!
すると、それを見ていたであろう魔物三匹が茂みから飛び出して来てしまった。
彼等も俺達が危険だと判断したのだろう。
まあ、それはありがたいのだが……
しかし、今この瞬間から。
俺達に残された手段はただ一つだけとなってしまったのだ。
このスライムと戦い、『対話ではなく力で説き伏せる』と言う、ただそれだけに……
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