十三話 次期頭首様の……秘密?
簡単なあらすじ『サチエ、プチ男、クボタさんはアンデッドに襲われましたが、プチ男君のお陰で何とかなりました』
アンデッドが漸くただの骨に変わったのを見届け終えた俺は、ぶっ飛んで行ったプチ男を回収し急いでサチエの元へと戻った。
サチエは地に片膝を付き、肩で息をしていた。
彼女はアンデッドからの攻撃を躱し続けていたのだ、体力の消耗も激しかったのだろう。
「大丈夫ですか!?
お怪我はありませんか!?」
「ああ、問題無い……服が少し破れただけだ」
俺が問い掛けると彼女は呼吸を整え、数秒後にそう答えてくれた。
……ふぅ、それなら良かった。
人魂みたいなものが一度彼女に被弾したのを見てずっと心配していたのだが、どうやら無傷で済んだらしい。
「助かったよ。客人を守らなければと飛び出したは良いものの、武器を持っていなかった事をすっかり忘れていたからな」
次にそう言って彼女は少し、恥ずかしそうに笑った。
この人は考えるよりも先に、身体が動いてしまうタイプの人なのかもしれない……
とは言え、それは俺達を助けようとしての行動なのだ。馬鹿にするつもりなど微塵も無いが。
とにかく、サチエが無事である事を知った俺は『こちらこそ助かった』という旨と共に礼を告げ、彼女が動けるようになったら停留所に戻る事を伝えた。
……のだが。
そうすると彼女は突然、こんな事を言い出した。
「私も付いて行って良いかな?礼がしたい」
「え、でも儀式……でしたっけ?あれは良いんですか?」
「構わないさ。例え君が来なくとも、私の任は手薄となった町の警備だったろうからな。
〝アレ〟にはまだ、いてもいなくても変わりない存在なのさ……」
「じゃ、じゃあ、その警備の方は……?」
「なに、若い衆がやっているから大丈夫だ。
君はひょっとすると……私が同行するのは嫌か?」
「あ!いえ、そう言うワケじゃないんですよ!」
……と、まあそう言う訳で。
俺達はサチエと共に、街へと戻る事となったのであった。
そうして彼女に手を引かれ、丘を後にする俺達……その背後では。
魔王城の生垣から、二人と一匹を見つめる眼差しがこちらへと向けられていたが。
この時の俺達には、それを知る由もなかった。
街へと着いた途端、サチエは今までのお堅いイメージが完全に崩れ去る程のはしゃぎぶりであれこれと興味を示しては駆け回り、俺達を振り回した。
サチエの年齢は多分、コルリスより上か同じくらいなはず……そこから推察するに、恐らくではあるがこれこそ素の彼女なのだと思われる。
ザキ地方での振る舞いは次期頭首として、アトラン族代表としてのものだったのだろう。
どうやら未来のリーダーも色々と苦労しているらしい……と言うか。
もしかするとこの子は、息抜きのために付いて来たかっただけなのかもしれない。
そう思うと何処か無性に、彼女に世話を焼きたくなるような自分がいた。
「見てくれクボタ、あんな所に可愛らしい魔鳥類の魔物がいるぞ!ザキ地方にも来て欲しいが無理だろうな、あんな荒れ果てた地ではな!ワハハ!」
「あ、アハハ……どうだろね」
そんな彼女は今、反応に困る自虐ネタを披露している。
ああそれと、一応言っておくが。
俺とサチエは定期便に乗っている最中、彼女がいつまでも客人呼びは失礼だと言い出したのがきっかけで改めての自己紹介を済ませている。
だからサチエは俺をクボタ呼びで、俺も彼女に対してタメ口なのだ。決して俺が無礼な訳ではないぞ?
「どうしたクボタ?それにプチ男も、何だか疲れているように見えるぞ?」
そこでサチエはこちらを振り返り、ここに来て初めて俺達を心配してくれた。
「まあ、ちょっと、疲れたかも……」
正直に言えば、俺は彼女を追い駆け続けていたせいで。プチ男はザキ地方から街までの移動中、ずっとサチエにこねくり回されていたせいで。
実際、とても疲れていたのだ。
もしかするとそれが顔に出ていたのかもしれない。
「そうなのか、もっと早く言えば良かったのに………………」
すると突然、彼女は黙り込んでしまった。
「どうしたの?」
「なあクボタ。もしかして君らが疲れているのって……私が、私がはしゃぎ過ぎていたせいか?」
「え!?いや、それは……」
サチエにそう言われ、俺は変な声が出てしまった。何故ならそれは図星だったからだ。
「……やはりか。
その、あの、申し訳ない。
街に来るのは久し振りでな、つい……」
それで事を察したのか、彼女の頬はみるみるうちに赤く染まってゆく。
……どうやらたった今、自分のキャラが崩壊してしまっていた事にも気が付いたようだ。
「……この子、思ってたよりずっとカワイイなぁ」
「何!?」
「あ……いや、何でもない」
ついつい心の声が漏れてしまった俺はひとまず話題を逸らすために、彼女を俺の行きつけのお店……またの名を、集会所兼酒場へと誘った。
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