十一話 いざ、ザキ地方へ!
街から出ている定期便(魔物が引いてるバカデカい馬車みたいなヤツだ)にさっき乗る事が出来たので目的地にはあと1時間程で到着するであろう。
で、結局、俺はプチ男を連れて何処に行くのかって?
ではそろそろお答えしよう。
『ザキ地方』だ。
そこは過去に起きた戦争の爪痕が未だに残る、強力な魔物の多い、この国の中ではかなり危険な地域らしい……
え?
何でわざわざそんな所に行くのかって?
それは、『魔法』の勉強のためだ。
街で聞いた話によれば、そこにいるアトラン族と言う部族が魔力や魔法、と言うか戦術全般に秀でているらしいのだ。
俺の魔物達は近接戦闘に関してはかなり良いと思う……が。
これから先はそれが通用しない、遠距離攻撃、魔法等を使った戦いが得意な魔物と出会う可能性は高い。
となれば、魔法もある程度戦闘で使えるようにしておいて損はないはずだと考えた俺は。
今こうしてボディーガード代わりのプチ男を連れ、ザキ地方へと向かっているのである。
まあ、例えそれについて学ぶ事が出来なかったとしても、今から行く場所にいる民族は戦闘のエキスパートである事に変わりは無い。
なので最悪でも、何か魔法についての知識を。
それすらもダメなら、体術の一つでも……とにかく、何かしらは教わってこようと思う。
とまあそんなワケだから、体力を温存しておくために俺はプチ男を枕にして少々眠らせて頂く。
ああ、最高だ……
電車通勤していた頃にこの枕があったら、絶対終点まで起きなかっただろうな。
俺達はアトラン族の住む町へと無事に到着した。
そこで俺はまず、この町の長だと言う人物の元を訪ねる事となった。何だか密着取材の許可を取るため、先住民族のリーダーに面会を申し込む記者になったような気分で少し緊張する。
だがしかし、これは余所者ならば必ず行わねばならない恒例の儀式のようなものであるらしく、つまりはどの道行くしかないのだ。
こうなればさっさと終わらせて、その後でたっぷりと町の探索をする事としよう。
そう、思っていたのだが。
結果は……ダメでした。
何でも今日、アトラン族に新たな一員……つまり赤ん坊が誕生したらしく、何やら神聖な行事を執り行うために部外者の立ち入りが禁止されてしまったのだ。
ただ、そんな俺を不憫に思ったのか。
アトラン族は長の子供であり、次期頭首となる予定の人物を俺に付け、町はずれにある丘から魔王城を眺めるというミニツアーを開催してくれた。
……どうやら彼等は、俺とプチ男を観光客だと思っているらしい。
そんな俺達は今、その丘から魔王城をまじまじと見物している。
名前の由来は隣にいる次期頭首から聞いたが、確かにその建造物からは禍々しい殺気のようなものを感じ取る事が出来た……ような気がした。
また、その周囲は生垣のようなもので覆われているのだが、よく見るとそれは少し動いているようだ。
そして中にある建物は高く聳えており、どちらかと言えば塔のような外観をしている……と。
(もっと言うとそれは少々傾いており、あれが倒れたとなるとこの地域は甚大な被害に見舞われるだろう)
そうして俺達は暫くの間、魔王城を眺め続けていた。
この目に焼き付けた光景だけを手土産に、今日は帰らなくてはならないのだから……
そして、そんな風にぼんやりとしていたせいか、この時の俺には気付けなかった。
文字通り、足元に脅威が迫っていた事を。
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