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五十五話 伸び上がる影

簡単なあらすじ『オークを食べた、その魔物は……?』




突如身を襲った激痛に頭を抱えている俺と、そんな俺を見て狼狽えるサチエ。


いや……正確に言えば、彼が狼狽えているのはそのせい〝だけ〟ではないな。


目の前にいる、三匹のオークを喰らったアンデッドのような魔物も、その原因の一つなのだから……




〝またやってしまった。すまない。許してくれ……


私も、すぐに行くから〟


〝その声〟の雰囲気が変わった。


先程までは弱々しく、最早形無き者達に謝罪し続けるばかりだったそれが、たった今何かしらの覚悟を持ったようだ。


その者の声が今までよりも鋭く、それでいて力強く、俺の頭に響き渡ったのだから間違いはないであろう。


「クボタ!大丈夫か!?立てるか!?立てるなら今からでも逃げろ!私が時間を稼ぐ!」


サチエはそう言い、魔物に向けて短剣を突き出す。


その頬を一筋の汗が伝った。

緊張しているのだろう。敵は未知であり、味方はこの有様なのだ……そうなるのも仕方がない。


だが、その緊張はあくまでも『目の前のもの』に対してだけであり、『不可思議なもの』に対してではないように見える。


もしかするとサチエにはこの声が聞こえていないのかもしれない。


いや、先程からそれについて驚く様子はないのだし、それはほぼ確定であろう。


それよりもだ……サチエを、サチエをこんなものとたった一人で戦わせるワケにはいかない!


そう思った俺は何とか立ち上がり、それと戦うため両拳を顎程の高さにまで持ち上げた。


〝ク……いや、英雄よ。やっと戦う意志を見せてくれたね。そうだ、それで良い。


『こうなったせいで』苦しむ仲間達を天に返してやる事も出来ず……自死すらも出来ず……それでも尚、こんな哀れな魔物について来てくれる者達、それを殺してしまう程堕ちた私は、君に倒される事を待ち望んでいたんだ〟


その時に、また何者かが声を発した。


……今〝それと〟戦おうとする意思表示をした者は俺だけであり、サチエがそのような事を言うはずもない。


やはり声の主はあのアンデッドらしき魔物で間違いはないのだろう……与えられた覚えのない別称で呼ばれている理由までは分からないが。


〝しかし……何故だろう。君はどうやら『まだ弱い』ようだね。私の声を聞くだけでも苦しんでいるように見える。姿を取り戻しても尚、完全なる復活はまだ出来ていないのか……


まあ、仕方がない。なら英雄よ、これで話すのはやめるから、我慢してよく聞いてくれ。私の弱点は生前と変わらず、ここだ。さあ、じっとしているから、今のうちに倒しておくれ。私の体が、君達を殺さないうちに……


さあ、今こそ君が私とした約束を果たす時だ!私がこうなった時、君の手で終わらせてくれるという約束を!〟


そう言うと、アンデッドのようなその魔物は突然伸び上がり、本体を曝け出して見せた。


何と言う事だ……俺達が見ていたのは、そのたった一部であったようだ。


その魔物は長い首と逞しかったであろう爬虫類のような体、それと大きな翼を持つ、ドラゴンだったのだから。


そう、俺達が見、アンデッドだと予測していたアレは巨大なドラゴンの……それもアンデッドとなっているドラゴンの頭だったのだ。


そのドラゴンだったものは今、〝かつての心臓〟が俺達に見えるよう、肋骨を自身の爪で外側に広げている。


爪、肋骨は共にみしみしと音を慣らし、それすらも持ち主の苦しみがどれ程のものであったかを俺達に訴えているような気がした。


「ドラゴンゾンビ……コイツは、私達では…………頼むクボタ、逃げてくれ。そうでなければ、二人共……」


サチエはますます身を固くし、俺に逃げるように言う。やはり彼には、この魔物の声は聞こえていないようだ。


なら、魔物がしたらしき約束の事も知らないのであろう……俺も同じではあるが。


しかし、あの声は真に迫っていた。

だとすれば、アイツは俺が倒してやらなければならない……出来るだろうか。


「ごめん、それは出来ない。どうやらコイツは、俺が倒さなきゃならない……みたいなんだ」


「クボタ!?何を言って……うっ」


「サチエっ!?」


その時、突然サチエが倒れた。

彼の頭上には久しく見ていなかった、あの球体のようなものが浮かんでいる。


「クボタさん……!待ってください!それは……その約束は!僕が果たさなければならないものです!」


それはやはり、自称神様だった。

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